「あなたはそのままでいい。自分らしく生きていればいつか運命の男性が現れるよ」。こんな甘い恋愛アドバイスに真っ向から反論する男がいます。その名は、"ギターを教えなくても稼げるギター講師"こと清水邦浩くん。「恋のお師匠・ジュテーム清水」の変名も持つ彼は断言します。
「恋愛は楽器演奏と同じ。正しい方法論にのっとって努力(練習)を重ねることで必ずうまくなります。自己流のやり方で彼氏ができないのであれば、僕の方法を試してみてください。運命なんて今すぐ変えられますよ」
ギター教室の生徒たちの恋愛相談を受け続けて10年。清水くんはついに「恋愛力を高める方程式」にたどりつきました。音楽とビジネスの理論を組み合わせて編み出したその方法論を惜しみなく公開します。
復習しましょう! 「恋愛力=好きな人リスト×リピート×コミュニケーション力」
結婚式のお手伝いをするよりも、そろそろ自分が結婚したい――。愛知県でブライダル関連の会社に勤務しているユリさん(仮名、32歳)の心の叫びです。
2年前からときどきデートをしているケンジさん(仮名、35歳)は「真面目だけど面倒くさい」男性で、結婚はおろか恋愛関係であることすら認めてくれません。まさに「こじらせ系」のケンジさんですが、彼のことが本気で好きだったユリさん。しかし、「時間がもったいない」との思いが募り、見切りをつけて新たな出会いを探すために清水くんのところに相談にやってきました(詳細は前回をご覧ください)。
ここで、清水くんの恋愛方程式を復習しましょう。「恋愛力(彼氏を作る力)=好きな人リスト×リピート(接触頻度)×コミュニケーション力」でしたね。この方程式は、ビジネスにおける売上高が客数と購買頻度と客単価の掛け算であることに着想を得ています。好きな人を複数リストアップする、と言っても、浮気や不倫を勧めているわけではありません。あくまでも内心で「恋愛する可能性がある身近な異性」を複数確保しておくもので、実際に付き合うのは1人だけでいいのです。
「ユリさんのお話を聞いていて、ぶっちゃけトークがとても面白いのでコミュニケーション力は問題ないと思いました。リピートに関しては、好きな人リストが出来上がってから必要に応じてアドバイスしていきます」と清水くん。
「僕の恋愛方程式で一番重要なのはリストです。とにかく好きな人を5人挙げることから始めましょう。どうしても候補がいなければ僕や大宮さんの名前を書いてもらいますが、僕らのような既婚者はできるだけ避けてください。ユリさん、職場に気になる人はいませんか? 」
「どうしたの、その服? 」と言いたくなるほど地味な男性がいい
清水くんに問われ、考え込むユリさん。ブライダル関係の職場には意外と独身男性が多いとのことですが、同僚や上司を急に恋愛対象としては見られないようです。この2年間、ユリさんはケンジさん一筋で過ごしてきたのですね。
「わかりました。でも、職場は貴重な出会いの場です。明日から職場の男性にも注目してみてください。2人ぐらいはリストに挙げられるといいですね」。多様性は安定性につながる、これが清水くんの信念です。「運命の恋人」などは恋愛ドラマだけでいいのです。好きになれるのは1人しかいないと思い込むと視野を狭めてしまい、恋愛が重たいものになっていく、と清水くんは説きます。
次に清水くんは、ユリさんに「好みのタイプ」を聞き出します。コツは、「優しくてフィーリングが合う人」などとぼんやりしたものではなく、身体的な特徴も含めてできるだけ明確な男性像を設定すること。具体化すればするほど、実社会で独身男性を見たときに「この人は理想像に近い。リストの3番目に入れよう」などと判断ができるからです。
ユリさんのタイプは、次のとおり。年齢は35歳(ケンジさんと同じというのが切ないですね……)、外見は黒髪(白髪はOK)で短髪、性格は真面目で地味な働き者。朝起きて何も考えずにダサい服を着て出勤しようとして、ユリさんが「どうしたの、その服? 」と突っ込みを入れたくなるほど地味な人がいい、とのことです。かなり明確なイメージができていますね!
「次のステップは、そういう独身サラリーマンが多い街に繰り出すこと。愛知県では刈谷です。ユリさん! 駅前の居酒屋に出会いの乾杯をしに行きましょう。きっと最低2人はリストが埋まるはずです。いつがいいですか? できるだけ1週間以内で夜の予定が空いている日を教えてください。僕も同行して、陰で見守ります」
ケンジさんは当て馬、でも最終的にケンジさんと結婚してもいい
やや過激な提案をする清水くん。しかし、「33歳になるまでに出産したい」という目標を掲げるユリさんも必死です。即座にスケジュールを確認し、清水くんと日程を決めました。社交的で気遣いもできるユリさんは、見知らぬ男性に話しかけて乾杯することも苦ではないようです。
最後に、「ケンジさんは当て馬なので、リストから外す必要はありません。むしろ、できるだけさりげなく連絡を取るようにしてください」とアドバイス。清水くんが考える今後のシナリオはこうです。
「ユリさんが他の男性に傾きそうになっていることは言わなくても伝わるはずです。職場や刈谷で彼氏ができそうになったとき、ようやく危機感を覚えたケンジさんがアプローチしてくる。そのとき、ユリさんは選べる立場にあります。結婚を前提にケンジさんとヨリを戻すのもいいでしょう。新たにステキな男性と知り合えたなら、その人とお付き合いしてもいいのです」
うーん、明るい展望ですね! 職場で2人、刈谷で2人、そしてケンジさん。「好きな人リスト」が5人に達したとき、どんな変化が起きるのでしょうか。ユリさんを引き続き見守っていきます!
<著者プロフィール>
大宮冬洋(おおみや・とうよう)
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)など。読者イベント「スナック大宮」を東京と愛知で不定期開催。食生活ブログをほぼ毎日更新中。
<協力者プロフィール>
清水邦浩(しみず・くにひろ)
ギター講師。愛知県岡崎市・蒲郡市で清水邦浩ギター・ウクレレ教室を経営。