国産ミドルサイズSUV5台を選んで「エクステリア」「インテリア」「走り」の3項目で比べてきた本企画。最後に、各項目の1位を10点、5位を6点と換算して総合力の順位を付けてみた。乗り比べたのはトヨタ自動車「RAV4」(シリーズパラレルハイブリッド)、三菱自動車工業「アウトランダーPHEV」(プライグインハイブリッド車=PHEV)、日産自動車「エクストレイル」(シリーズハイブリッド=e-POWER)、マツダ「CX-60」(ディーゼルマイルドハイブリッド)、ホンダ「ZR-V」(2モーターハイブリッド=e:HEV)の5車種だ。
1位は27点を獲得したホンダ「ZR-V」
エクステリア編、インテリア編、走行編でいずれも2位、合計27点を獲得してトップとなったのはホンダの最新SUV「ZR-V」だ。アグレッシブながらもくどくない顔つき、コンパクトにまとまったボディ、豪華ではないけれども上質でセンスのいいインテリア、ぴたりと決まるドライビングポジション、十分以上のラゲッジなど、どこをとってもバランスが取れている。
「神経直結」とうたわれる走りも好印象。アクセルを踏み込んだ時には軽快な「ホンダサウンド」が変速を繰り返すように車内に響き渡り(音量はそれほどでもない)、コーナーではリアが間髪を入れずに追従する感覚が味わえる。運転が上手になったような感覚だ。先に登場した「シビック」も良かったけれど、スポーツ度ではZR-Vの方が上じゃないかとさえ思えてくるほどだ(ただし、シビック タイプRは別格)。
全長4,570mm、全幅1,840mm、全高1,620mm、ホイールベース2,654mmは今回の5台で最もコンパクト。駐車時や狭い場所での取り回し面でも有利だ。価格は294.91万円~411.95万円で、おサイフ的にも優しい設定になっている。
2位はマツダ「CX-60」
2位はエクステリアとインテリアで1位、走りで5位、合計26点を獲得したマツダ「CX-60」だ。
マツダ「ラージ商品群」のトップを担うだけに、「魂動デザイン」をまとったFRベースのエクステリアは他にない優美さを持っていて、休みの日にはピカピカに磨き上げたくなる出来栄え。インテリアもしかりで、「プレミアムモダン」グレードのピュアホワイト内装は上質で丁寧な仕上げとなっていた。メープルとルーセントクロスを使用したトリムとナッパレザーシートの組み合わせは、そんじょそこらの欧州高級車を凌駕するほど美しい。
全長4,840mm、全幅1,890mm、全高1,685mm、ホイールベース2,870mmのボディは今回の5台で最大だが、世界的にみると最も売れ筋のサイズだ。マツダでは欧州車からの買い替えや「CX-5」からのステップアップを見込んでいる。
一方で、走りは少し残念だった。試乗したXDハイブリッドの足回りやエンジンのしつけにはマツダ車らしからぬ荒さが残っていて、期待が裏切られた。走行距離が伸びていけば解決するものなのか、それとも年次改良でセッティングを改善するのか、いずれにしても伸び代は大なのだ。価格は299万円~627万円。パワートレインによって幅広い選択ができる。
「アウトランダーPHEV」と「エクストレイル」が同率3位
エクステリアが4位で7点、インテリアが3位で8点、走りが3位で8点、合計23点を獲得したのが三菱自動車「アウトランダーPHEV」だ。
SUVタイプのPHEVモデルとしては元祖といえる「アウトランダー」の新型は、先代の弱点であったインテリアの質感を大きくレベルアップさせている。ルノーおよび日産とのアライアンスによる新型「CMF-C/D」プラットフォームを採用したボディは全長4,710mm、全幅1,860mm、全高1,745m、ホイールベース2,705mmとかなり大柄だが、3列シート仕様がある点はメリット大。三菱独特の「ダイナミック・シールド」顔がOKならばオススメできる。
ツインモーターの「S-AWD」システムを搭載するPHEVシステムは三菱の十八番で、パワフルかつ燃費もいい。モーター走行だけの航続距離は87kmと長く、バッテリーと燃料タンクがフルの状態であれば1,000km先までノンストップでドライブできる。
PHEVらしく外部給電も得意科目。1,500Wの100V電源ソケット2口が設置してあり、災害時などには「V2H」(ビークルtoホーム)ベースとして最大12日分もの電力を供給することができる。自宅駐車場に置いておくだけで心強い存在だ。価格は462万円~548万円となっている。
日産自動車「エクストレイル」も合計23点で3位に。エクステリアは5位、インテリアは4位、走りは1位という結果だった。
革新的な発電用1.5L3気筒VTC(可変圧縮ターボ)エンジンを搭載した「e-POWER」(シリーズ方式のハイブリッドシステム)の走りはまるでEV(電気自動車)そのもの。ワンペダルを選択して街中をスイスイと走りまわるときは、エンジン音は聞こえず静かで思い通りの加減速ができてとても楽しい。前後にモーターを積む「e-4ORCE」(4輪駆動)モデルなら、悪路や雪道などさまざまな条件にもしっかりと対応できる。「プロパイロット」も安定感抜群だ。
優れた走りから得られる満足感をスポイルしてしまうのが、2段重ねのヘッドライトを持つエクステリアデザイン。これはもう、ひたすらに惜しいの一言。アウトランダーと同じ「CMF-C/D」プラットフォームを採用したボディは全長4,660mm、全幅1.840mm、全高1,720mm、ホイールベース2,705mm。前後オーバーハングが短くて、サイズ感としては使いやすい。価格は319.9万円~504.7万円だ。
トヨタ「RAV4」は大健闘の5位
今回の5台のうち、発売時期からいくと1台だけ飛びぬけて年長者だったトヨタ自動車の「RAV4」だが、合計得点は22点と大健闘だ。エクステリアが3位、インテリアが4位、走りが4位だった。
まず、ヘビーデューティーなエクステリアの基本デザインが優れている。走りの面では悪路走破性、オンロードでの快適性、燃費などの各項目でトップレベルをキープしていた。ボディは全長4,610mm、全幅1,865mm、全高1,690mm、ホイールベース2,690mm。デビューから間もなく3年という割には相変わらず新鮮で、外装や安全面などの仕様変更をこなしながら最新モデルに伍して売れ続けているのはすごい。価格は293.8万円~563.3万円だ。