欧米社会はなにかと「差別」に敏感。中でも男女の差を表すような表現には過剰なほどの反応で、一昔前までなら普通に使われていた"policeman, salesman, chairman, waiter, waitress, stewardess"などといった言葉も、今では大きく様変わりです。

これらの変貌歴を表にしてみると以下の通り:

以前の言い方 過程 現在の言い方
policeman policeman/policewoman police officer
salesman salesman/saleswoman salesperson
sales rep (sales representative)
chairman chairman/chairwoman chairperson
waiter
waitress
- - - - - server
steward
stewardess
- - - - - CA (Cabin Attendant)
FA (Flight Attendant)

"police officer"の"officer"は元々は「役人、役員」といった意味なんですが、警官に対しては「ユニフォーム警官」のこと。私服の「刑事」のことは"Detective"。勿論どちらも男女関係なく使います。

そしてレストランの「ウエイター/ウエイトレス」のことは今では男女とも「給仕してくれる人」という意味になる"server"に変貌。外国のレストランで食事をするときはみなさんも是非この点にご注意あれ。慣れ親しんだ"wiater/waitress"を間違って使ってしまうと、裏で料理にツバを吐いてから持って来るなんてこともあるんだとか…。

それに今では昔ながらの言い方のことを"traditionally correct terms(伝統的に正しい表現)"、一方今風な言い方のことを"politically correct terms(政治的に正しい表現)"としっかり呼び名で区別もしているので、もし良かったら皆さんもネットで、これら二つを検索してみてください。山ほどヒットするはずです。

たとえば、"shorty(チビな人)"は今では"vertically challenged(垂直方向にチャレンジされている人=背の低い人)"、"fatty(デブな人)"は"horizontally challenged(水平方向にチャレンジされている人=太ってる人)、そして""blind(盲人)"は"visually challenged/visually impaired(視覚的にチャレンジされている人/視覚的に障害がある人=視覚障害者"というように・・・・・「なんでこれまでやっかいにしなければいけないんだ!」と思われる人もいるでしょうが、それが「流れ」というもの。

ところでこれほど男女の差別に敏感なのにも関わらず、何故か人の名に付ける「敬称」だけは欧米でも未だに昔と同じ。日本語で敬称と言えば「~さん、~さま、~殿、~君、~ちゃん」などがあり、「~君」だけは「男子専用」のときもありますが、全て性別に関わらず使用可能…ですよね。でもこれらに当たる英語"Mr.~/Mrs.~/Miss ~"は、どれも性別限定での使用です。それにこれらは単に敬称だけに止まらず、

Mr.○○=○○という名の男性、○○さんの旦那の○○という名の男性
Mrs. ○○=○○という名の既婚女性、○○さんの妻の○○という名の女性
Miss ○○=○○という名の未婚の女性、○○という名のとても若い女性

といった意味まで含まれている始末。

つまり、なにげに"Mr. Smith"と人を呼びかけるだけでも、その本意は「男のスミスさん」と言ってるのと同じ。女性に至っては"Mrs. Smith"なら「既婚者のスミスさん/スミスさんの奥さん」、"Miss Smith"なら「まだ未婚のスミスさん」と言っているのと同じなんです。これってセクシャルハラスメント以外の何者でもないのでは。

最近では女性は既婚未婚を問わず"Ms."という敬称が使われることが多くなってきてはいますが、それでも男女問わずの「~さん」は未だ現れていません。

と言うことで、今度から人の名字に「さん」的な敬称を英語で付けて言うときはこういったことを念頭に置いて使うようにしましょう。結構面白いかも知れませんよ。

あっそれから、英語では自分自身の名字やフルネームにもこのような敬称を付けて言うときがありますが、そんなときも「わたしは男性の~」とか「わたしは女性で既婚[未婚]の~」といった事を表したいが故なんです。こちらも覚えておいてください。

ではまた次回。

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