"Sam"と言えば、男性なら"Samuel"、女性なら往年のテレビシリーズ「奥様は魔女」の主人公の名前としても知られてる"Samantha"の略(愛称)と考えるのが普通。だからもし"Hey Sam."とか"Sam, come over here."なんていうのを耳にしたら、普通なら「あー、サムって人に話しかけてるんだな」って思いますよね……でもこれって、そうとは限らないんです。
たとえば、"Uncle Sam"。まともに取れば「サムおじさん」ってことになるんですけど、アメリカ人にとってはこれは単に「親戚のおじさん」ではなく「アメリカ政府」のことになるんです。おまけにこれには「やせ気味で背が高く、白いひげを蓄え、山高帽をかぶった」イメージキャラクターまであって、一時アメリカの軍が兵士を募集する際に展開した"Uncle Sam wants YOU Campaign"はとっても有名です。(参照URL:http://bit.ly/bgKTUr http://bit.ly/ajyak6)
また"Sam"は他にも、
Sam is working undercover.(サムがおとり捜査をしている)
Your boyfriend is such a sam.(あなたのボーイフレンドはとってもサム)
I'm not married. I am SAM.(僕は結婚はしていない。僕はサムさ)
のような感じでも使われて:一つ目の"Sam"は「"federal narcotics agent(連邦麻薬捜査官)"」のこと。二つ目の"s"が小文字になってる"sam"は"a good looking guy(かっこ良くてイケてる男性)"、そして三つ目の全部大文字になってる"SAM"は"Single American Male"の略で「独身のアメリカ人男性」のことなんです。そして冒頭の例、"Hey Sam."とか"Sam, come over here."の"Sam"は、名前を知らない人への「そこの人、君、あなた」といったニュアンスになるんです。
他にもこんな使われ方の餌食になってる名前と言えば、男性名では"John, Joe, Jack"、女性名では"Jane, Betty"が有名ですが、ここでは"John"だけに絞って、そのユニークな表現を幾つか紹介しましょう。
■John Doe
一見すると、"John"がファーストネームで"Doe"が名字のごく普通の名前のようにも思えるでしょうが、これは日本で言う「名無しのごんべい」や「男性身元不明人」のことを言ったもの。元々は法律用語。原告の名前が不明だったり、名前を明したくないときに仮名として使われたもので、第一原告のことを"John Doe"、第二原告のことを"Richard Roe"と言ったのが始まりなんだそうです。でも最近では警察が扱う身元不明者や身元不明の死体もこう呼ぶので、ひょっとしたら洋画の"morgue(死体保管所)"のシーンなどで、皆さんもこんな呼び方耳にしたことがあるかもしれませんね。そしてこの女性版は"Jane Doe"って言います。
■john
頭文字の"j"が小文字になると「(男性用)トイレ」か「売春婦の客」といった意味になります。たとえば"I need to go to the john."と言えばトイレのこと。"He is my john."なら「売春婦の客」のことです。
なので女性の皆さん、もし"John"という名のご主人やボーイフレンドをお持ちなら、彼を人に紹介するときは間違っても"He is my john."なんて言わないように。そんなときは"He is my husband, John./He is my boyfriend, John."と言うように心がけましょう。
■(your) John Hancock
"John Hancock"はアメリカ独立宣言に署名した人物の一人。彼の署名は中でももっとも力強く目立ったとかでそれ以降「サイン、署名」の代名詞として使われるようになったんです。つまり"your John Hancock"と言えば"your signature"と同じで、"Put your John Hancock here.(ここに署名してください)"といった感じで使われます。この女性版としては"your Jane Hancock"といった言い方をする人もいます。
今回は「人の名前は名前にして名前にあらず」といったお話。こんな使われ方も是非知っておいてください。いずれまた機会があれば"Joe, Jack"とその女性版についてもお話が出来ればと思っています。
ではまた次回。