♫拾五で姐やは嫁に行き、お里の便りも絶え果てた♫
三木露風作詞、山田耕筰作曲の「赤とんぼ」の3番である。由紀さおり、安田祥子の歌声を思い浮かべて口ずさんでいただきたい。大正10年(1921)の発表。驚くことに約100年前の日本人は、15歳で嫁に行っていたのだ。いやいや、今と違って満年齢ではなく数え年だから14歳、いや13歳の可能性すらある。もっとも明治31年(1898)に施行された民法731条では、「男は、十八歳に、女は、十六歳にならなければ、婚姻をすることができない」とあるので、この場合の姐やの嫁入りはなんか淫靡な感じがしますけどね。
まあ、そんなことはどうでもいい。
初潮である、月経である。
少しデータは古いが平成6年(2004)、日本産婦人科学会の調べでは、日本人女性の平均初潮年齢は12.3歳。そしてほとんどの女性が15歳までに、生理を迎えているという。すなわち動物学的見地から、たいていの女性が15歳までに性交ができ、かつ妊娠ができるということだ。大正時代より初潮年齢が早くなったことは言うまでもない。
一方、女性に限らず日本人の晩婚化が叫ばれて久しいが、平成22年(2010)の国立社会保障・人口問題研究所の『第14回出生動向基本調査』では、女性の平均初婚年齢は28.5歳。晩婚化より深刻なのは未婚化で、内閣府が平成24年(2012)年に公表した『子ども・子育て白書』によれば、一生結婚しない女性の生涯未婚率は10.61%と過去最高を記録。この傾向は、まだまだ続くものと見られている。それにくわえて、我が国は世界一の長寿国である……んだよ、と。
お固い数字ばかり続いたが、何が言いたいかといえば、今に生きる我々日本人は、有史以来、人類が未だ体験したことのない時代を生きている、ということだ。では、どんな時代に生きているのか?
初潮が早くなったのである。結婚が遅くなったのである。いや、結婚をしない人間が増えたのである。当然のことながら、初潮から出産までの期間は、人類がこれまで体験したことのない、長さである。くわえて長生きするようになった。
これが何を意味しているかといえば、いかに現代の日本人は「妊娠を前提としないSEX」と、いかに上手に付き合っていくかという課題を与えられたのだ。誰から? それはもう神からである。神が宣うのだ(のたまう、と読みます)。八百万の神が命じるのだ。
「日本人よ、子作りのためではない。人生を豊かにするためのSEXに励め!」と。
18~19歳で62.5%、20~24歳で36.3%、25~29歳で25.1%、30~34歳で26.7%、35歳~39歳で21.6%。これなんの数字かといえば、女性の処女率、つまり一度も性体験をしたことのない女性の割合である(国立社会保障・人口問題研究所平成24年(2014)『第13回出生動向基本調査』)。
眉に唾する読者もいるかもしれないが、実態は『きょうは会社休みます。』の綾瀬はるかなのだ。モテナイのは、諸君だけではない!諸君がモテナイ分だけ、モテナイ女も増えているのである。
しかもだよ。SEXのやり過ぎは体に良くないけど、しかしまったくSEXをしないというのも、どうやら体には良くないと聞いたような……。
助平だから言うのではない。性欲が旺盛だから言うのでもない。ただ、この国の財産でもある女性を守るため、艱難辛苦汝を玉にすの精神で言うのだ。
「ねえねえ健康のために、今夜、ボクとSEXしない?」
モテナイからってバカにするな、と怒ることなかれ。まして嘲笑することなかれ。日本人女性なら白人であれば誰でもOK、会話にポケモン、ピカチューを出せばすんなりOKなどとほざくナンパ講師より、絶対に確率の高い口説き文句だと思うが、いかがでしょうか?
本文: 大羽賢二
イラスト: 田渕正敏