仕事終わりの外での一杯は、いつの時代になってもビジネスパーソンの心と体を癒やしてくれる。その一杯を活力に「明日もまた頑張ろう」と思っている人も少なくないはずだ。そんなサラリーマンたちに旨い酒と肴を提供してくれる名店を本連載では紹介していく。

Fish on Dish Rolly(板橋)

  • 昼は喫茶店、夜は海鮮居酒屋として営業している「Fish on Dish Rolly」

    昼は喫茶店、夜は海鮮居酒屋として営業している「Fish on Dish Rolly」

東京には近所の住人たちが足繁く通う地元密着型の名店も多い。JR埼京線「板橋駅」(東口)から徒歩6分ほどの立地で、今年7月に6周年を迎える「Fish on Dish Rolly」も、そんな人気店のひとつだ。

同店は「昼は喫茶店、夜は海鮮居酒屋」という一風変わった営業スタイルのお店で、独自のルートで直送される獲れたての鮮魚と選りすぐりの日本酒で毎夜、客をもてなしている。

  • 外見は喫茶店そのもの。店前に並べられた日本酒の瓶が目印

    外見は喫茶店そのもの。店前に並べられた日本酒の瓶が目印

店長の前井貴成氏は「もともと父がこの場所で『喫茶 ロリー』という喫茶店を40年以上やっていて、夜も営業していました。でも、昔ほど夜に来店するお客さんが減ってしまい、親も歳が歳なので営業時間を短縮するようになって。それまで僕は居酒屋を運営する会社でずっと働いてきたんですが、独立するかたちで夜の時間帯を使わせてもらうことになりました」と、オープンの経緯を語った。

かつて銭湯や布団店だった建物を改装した大衆酒場など、最近は趣向を凝らしたコンセプトの居酒屋も人気だが、こちらの昼の喫茶店営業はバリバリの現役。内装は「レトロな純喫茶風」というか、本当にレトロな純喫茶で飲めるのだ。

  • 店内はレトロな雰囲気が漂う

    店内はレトロな雰囲気が漂う

「オープンしても最初は海鮮居酒屋だと気づかれませんでしたね。1年間やれば浸透してちゃんとお客さんも来てくれる自信はあったので、地道にチラシをコツコツ配っていました。最初の頃はコーヒーを注文される方もいらっしゃったので、夜でも喫茶メニューの注文を受けていたんですが、現在はやっていないです(笑)」

そうして現在は夜の居酒屋営業もしっかり定着。域外からの電車アクセスが特段良いとは言えない板橋駅だが、口コミで遠くからわざわざ来店するお客さんも増えたようだ。

鮮度にこだわる海鮮料理はボリュームも抜群

近年はオシャレなカフェバースタイルのお店も都内では珍しくないが、やはり、海鮮や日本酒に力を入れている理由についても気になるところ。

「周りに魚業態のお店があまりなかったというのが一番ですね(笑) 焼き鳥屋さんとか駅前にもいいお店がいっぱいあるので。あと、前職での経験も大きいです。居酒屋を7店舗ほど経営する会社で、三浦の業者さんから入札権を借りて、朝の競りに出させてもらい、自分で仕入れたものを自社便で店舗に回していました。十数年前の話ですが、いまもお魚は当時お付き合いしていた業者さんから仕入れています」

  • 「獲れたて鮮魚の刺身 5点盛り」

    獲れたて鮮魚抜群の刺身が味わえる

鮪の街として知られる三崎など神奈川県三浦半島の漁港より、豊洲を通さずに直送される鮮度抜群の魚介を高コスパで堪能できるのがこのお店のウリ。刺身の盛り合わせはボリュームたっぷりだし、一本の鮪からわずかしか獲れない希少な部位を使った「鮪のあご肉 ねぎまみれ」は、鮪とは思えない肉々しい食感をたっぷりのねぎとごま油で味わう一皿だ。

「日本酒は決まった銘柄を置かず、基本的には旬のものですね。魚も旬があるように、日本酒も旬があるので、そこを一番大切に。お魚メニューも日本酒メニューも毎日手書きしていて、けっこうラインナップが変わるので、飽きずにリピートしていただけるのかなと思います」

  • 「雨後の月 Exchange」

    「雨後の月 Exchange」

例えば、「雨後の月 Exchange」は可憐な花を思わせる穏やかな香りで、清らかな飲み口だが軽い苦味がコクとなっており、余韻も長く楽しめる一杯となっている。

「ハコも大きく、椅子を動かすことで、壁側一列使って24人分の席を用意することもできます。平日はやはり近くに勤めている方が中心で、この界隈は意外と大きい宴会ができるお店がないので、宴会でもよく利用してもらっていますね。『おまかせコース』も定番人気です」

こんな雰囲気で宴会とはちょっとした非日常感まで味わえそうだが、料理やお酒がこのクオリティで平均予算4,000円台と、近所にあったら毎週通いたくなるようなお店だ。近くを立ち寄ったときは気軽に足を運んでみてはいかがだろうか。