2013年2月2日に始まったこの連載「iPhone基本の『き』」が、今週で500回目を迎えました。ちょうどiPhone 4Sから5Sにかけて、急速に利用者を増やしていた時期。当初はマイナビニュースから独立したiPhone&iPadの専門サイト『iPad iPhone Wire(略称:iWire)』で開始され、のちにマイナビニュースへ統合される形で移籍。ここまで続いてきました。

今回は連載500回記念として、約10年にわたるインターフェイスの変遷を振り返ってみます。

質感あるアイコンの「iOS 6」(2012〜2013年)

iPhone最初期の面影を残すiOS 6。アイコンやアプリ画面のインターフェイスには、モノの質感を表現するテクスチャや立体感を見せる濃いめのシャドウが多用されていました。久しぶりに見ると懐かしさもありつつ、むしろ一周回っていい感じに見えるかも。

  • 質感豊かなデザインのホーム画面。ツヤのあるアイコンに濃いめのシャドウが特徴的。通知バナーもツヤツヤでした

  • 「メモ」は米国で一般的な黄色い紙のメモパッドがモチーフ。「設定」「Siri」など、多くのアプリにファブリックやペーパー的なテクスチャが使われていました

デザインの潮流に大きな影響を与えた「iOS 7」(2013〜2014年)

突如フラットデザインに大転換したiOS 7。当時、デザインの傾向としてまだ一般的に馴染みのないスタイルで、当初は質感のない平板さに違和感を訴える声も。しかし、それも束の間。その後多くのアプリやWebサイトがフラットデザインを取り入れ始め、質感やシャドウのあるデザインが古く見えるようになりました。

  • 全面的にデザインが一新され、現在のスタイルに近いフラットデザインに。通知その他さまざまなデザインパーツもフラットになりました。また、iPhone 5で画面が縦長になりアイコンの配置が1段増えています

  • 「Siri」もシンプルになりましたが、アイコンは以前と同じマイクのモチーフ。「設定」は現在とほぼ変わらないスタイルに。早い段階で完成されたパーツのひとつです

いろいろな試行錯誤が見られる「iOS 8」(2014〜2015年)

フラットデザインが定着し、現在の印象に近づいています。しかしよく見ると、「リマインダー」は項目が4つ、「マップ」には標識があるなど、現在よりも要素が多め。サードパーティ製アプリのアイコンはまだフラットデザイン化されていないものも見受けられました。

  • iOS 7から見た目はほぼ変わらず。現在はない「Game Center」や「Passbook」などのアプリがあります。「通知センター」には「今日」という項目があり、現在の「ウィジェット」の原型になっていると思われいます

  • iOS 7でデビューした「コントロールセンター」は、まだまだ進化中。「メモ」は現在と同じ白地ですが、紙の質感が表現されています。

iCloudでのファイル連携初期段階「iOS 9」(2015〜2016年)

ホーム画面に「Wallet」が登場しましたが、「Apple Pay」が使えるのは米国など一部地域に限られ、日本では使用できませんでした。システム的にはiCloud Drive(ファイル)が単独のアプリとして登場し、それまで難しかったPCのファイルやフォルダとの接続が可能になり始めました。

  • Apple Watch誕生に伴い「Watch」「アクティビティ」アプリが追加。「3D Touch」が搭載され、アイコンを押し込んでサブメニューが開くようになりました

  • 「メモ」の編集機能が強化され、太字や箇条書きが可能に。スケッチツール搭載で手書きに対応し、さらにiCloudでMacやiPadと同期されるようになりました。「Siri」は日本の情報にも対応するようになりました。マイクのアイコンはまだ残っています

リアルとの関わりが始まる「iOS 10」(2016〜2017年)

「Apple Pay」がようやく日本国内でも使用可能になりました。Suicaのチャージと残高確認がiPhone上でできるのは画期的でした。スクリーンショットのシャッター音が消せるようになったのもこの頃(iOS 10.1)で、意外なところで細かいアップデートが行われています。

  • iPhone 7&iOS 10で、日本国内でも「Apple Pay」が使用可能に。「Wallet」の画面は現在とだいぶ異なります

  • 「メッセージ」に「ステッカー」や「Digital Touch」機能が追加されましたが、現在もあまり知られていないかも。一時期評判を落とした「マップ」が少しずつ、しかし確実に改良の道を歩んでいました

ホームボタン非搭載でより縦長画面に対応した「iOS 11」(2017〜2018年)

iPhone史上初めてホームボタンがなくなり、Face IDが搭載された「iPhone X」が発売された年。画面比率がより縦長になり、下から引き出す「コントロールセンター」は右上へ、上から引き出す「通知センター」は左上へ移動し、下部には「ホームバー」が配置されました。

  • 最初のFace IDモデル、iPhone Xが発売。画面の比率がより縦長になりました。Dockのアプリ名表示が消え、現在とほぼ同じ状態に。コントロールセンターも現在の形に近くなりました

  • 「Siri」の表示がマイクから光の球になりました。ホーム画面1枚目の左側に「ウィジェット」画面が追加されましたが、できることは限定的でした

機械学習強化の方向に進み始めた「iOS 12」(2018〜2019年)

この年、iPhoneの新機種はXS、XS Max、XRで、Face ID搭載がスタンダードになりました。ハードウェアの外見的な変化はあまりありませんでしたが、ソフト的にはニューラルエンジン搭載のチップ性能を活かした機能が多く、これ以降のOS/アプリの進化に大きく影響するようになります。

  • ホーム画面。現在との違いは「ビデオ」や「Newsstand」くらいでしょうか。通知のオプション強化、スクリーンタイムなど、ユーザーの「スマホ使いすぎ防止」に配慮した細かい機能が搭載されました

  • A12 Bionicチップでニューラルエンジンが大幅に強化され、ミー文字、ARなど、カメラと機械学習を組み合わせた機能がよりリッチに。「写真」では写っているものをキーワードで検索できるようになりました

画面の大型化&カメラ強化でハードが目立った「iOS 13」(2019〜2020年)

iPhone 11シリーズが発売され、スタンダードモデルの画面が大型化。iPhone 11 Pro/Pro Maxにはトリプルカメラが搭載され、撮影性能が強化されました。OS的にはアプリの使い勝手に配慮した機能がいろいろと追加され、昔に比べてオプションやサブメニュー等の画面が増えてきています(昔は「設定」アプリに集約されているケースも多かったのです)。

  • ホーム画面に「Apple TV+」が登場し、現在とほぼ同じ内容に。トリプルカメラ搭載のiPhone 11 Pro/Pro Max発売で、撮影性能の向上が注目されました

  • 「マップ」には周囲の様子を鮮明な画像で閲覧できる「ルックアラウンド」を搭載。「メール」「リマインダー」など、純正アプリの使い勝手が地味に向上し、設定画面が大きくなっています

ホーム画面の使い勝手が大きく変わった「iOS 14」(2020〜2021年)

アイコンが並んだビジュアルだけではiOS 13と見分けがつかないiOS 14。しかし、ホーム画面に配置できる「ウィジェット」や、アプリを格納する「Appライブラリ」が追加され、ホーム画面のカスタマイズ性が大幅に向上。ホーム画面そのもののアップデートはしばらくなかったことなので、ここは大きな転換点だったと言えます。

  • ホーム画面のアイコンや基本的な構造は変わりませんが、ホーム画面にアプリの機能の一部を配置できる「ウィジェット」機能が追加されました

  • 使わないホーム画面を隠す機能が追加されました。隠されたアプリを含め、全てのアプリは「Appライブラリ」に格納される形に。ホーム画面の使い勝手が大きく変わりました

より「賢くなる」方向へ進む「iOS 15」

そして現在、連載500回目ではiOS 15.4.1を使用しています。目新しい新機能というよりは、「集中モード」「通知の要約」「Spotlightの進化」など、iPhoneをより賢く仕事や生活に活かすための機能強化の方向へ進んでいるようです。

  • iOS 15のホーム画面。iOS 10あたりと比べると、アイコンがよりシンプルになっています。「集中モード」「通知の要約」など、iPhoneを使って新しいことをするというより、ユーザーの生活の質に貢献する意味で「賢い」機能が充実

  • iOS 15.4では、Face IDでマスク着用のままロック解除が可能に。FaceTimeがオンライン会議的な使い方に対応するなど、新機能にはコロナ禍の影響も見られます

将来的には、現在のインターフェイスが古く見える日も来るのでしょうか。今後とも末長く「iPhone基本の『き』」をよろしくお願いいたします。