6月4日(現地時間)、AppleはWWDC 2018の基調講演にて、今年9月に正式リリースされる予定の新しいiOSの機能を紹介しました。ここでは3回に分けて、iPhoneの使い方に大きな影響を与えそうな特徴を取り上げていきたいと思います。今回は速さやバッテリー寿命に関係する「パフォーマンス」の改善です。
旧いiPhoneを"リノベーション"で新しく
iOS 12は、iPhone 5s以降に発売されたiPhoneで使用することができます。これは旧い機種をお使いの方にとってうれしいお知らせです。
パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器において、最新のOSが使えるかどうかは、実はけっこう大事な問題なのです。例えば、古いマンションでもリノベーションすれば今の生活に合わせた造りにすることができますが、それができないとコンセントは部屋に1つ、お風呂にシャワーもなく、収納は押入れだけ、といった状態で生活しなくてはなりません。
最新のOSが使えないということは、それ以上のリノベーションが不可能になるということです。機能的に陳腐化していくだけでなく、次々に発生するセキュリティ問題への最新対策を入手できないことで、安全面でも不安を抱えることになります。
Appleは今回、iPhone 5sでもiOS 12を使えるようにしました。これによって「旧い機種であっても新しいOSに更新して使い続ける」という選択肢が選びやすくなったといえるでしょう。
「OS更新=遅くなる」という先入観を覆す
iOSは、新しいバージョンが出るたびに性能を改善し、新機能も加えられています。同時に、毎年新しく発表されるiPhone本体も、そこに内蔵される各部品の性能は向上しています。一方で、旧い機種にとっては新しいOSとの組み合わせがベストと言えないケースが出てきます。旧い機種の性能では最新のOSが「重荷」になってしまうことがあるからです。
しかし、iOS 12はその問題を解決しました。2014年に発売されたiPhone 6 Plusを例にした場合、iOS 11を使った場合よりも、iOS 12を使ったほうが動作が速くなるというのです。例えば、アプリの起動は40%、キーボード表示は50%、カメラの切り替えは70%高速化すると示されています。
つまり、旧い機種を使っている場合はiOS 12に更新した方が「iPhoneがキビキビ反応する」ことが期待できるというわけです。
バッテリーに配慮したCPUの「働き方改革」
もう一つ、iOS 12では旧い機種に優しい改善が加えられました。それは、バッテリー寿命への配慮です。
私たちが画面をスクロールしたり、アプリを開いたりするとき、iPhoneの中では負荷のかかる作業が発生しています。その作業をこなすために、「CPU」という部品が動作スピードを上げる仕組みになっています。これまでは徐々にその速度を上げトップスピードに到達していましたが、iOS 12では一気にトップスピードが出せるように調整が加えられました。詳しい理由は説明はされませんでしたが、これがバッテリー寿命を保つことにつながるのだといいます。
昨年更新されたiOS 11では、バッテリーが弱った旧い端末では負荷を避けるためパフォーマンスを制限する(つまり動きが遅くなる)仕組みが搭載されていたことが明らかになり、大きな問題になりました。Appleは、これは負荷のかかりすぎによって突然電源が落ちることを防ぐ目的だったと説明しましたが、「わざと遅くして、買い替えを促す策略ではないか」という不信感も一部でささやかれました。
その点で、今回のiOS 12はAppleが目標に掲げている「iPhoneをできるだけ長く使えるように設計する」ことを技術力によって明確に示した格好と言えるでしょう。