第52回 Split Viewとドラッグ&ドロップの意味
iOS 11になってiPadの操作系が変わりました。中でも最も大きな変更が、画面を分割して2つのアプリを同時に表示しながら使える「Split View」と、表示しているアプリ間でファイルを移動できる「ドラッグ&ドロップ」でしょう。iOSのいいところはiPhoneでもiPadでも操作が変わらないところだったのですが、あえてiPadでそれを変えてきたアップルの真意はどこにあるのでしょう。今回はそんなところを考えてみましょう。
2つのアプリを同時に使うのは必要?
iOSはそもそも、1つのアプリを順番に使いながら利用するように設計されています。Webを見ながらメールも見る? いや、ホームボタンをダブルクリックすれば切り替わるし。ああ、でもWebを見ながらメールを「書く」ことはありそう。例えば学校の教科書をiBooksで見ながらノートを取るとか、PDFの書類を見ながら修正箇所をメモするといった、資料を参照しながら書くという行為にも必要です。この場合、画面の半分をキーボードが埋まっているなんてことになると、参照する書類が見えなくなってしまうので、外付けキーボードは必須でしょう。
ドラッグ&ドロップは2つのアプリ間でファイルをやりとりするための機能ですが、こちらも単に見ているだけではあまり利用機会はありません。ワープロに写真を差し込む場合も、「メディア」ボタンを押せば「写真」アプリの内容を参照して貼り付けられるので、別に2つ並べて表示する必要はないでしょう。とはいえ「Pages」にメールの一部を差し込みたいときや、「メモ」アプリで書いた下書きをそのまま「Keynote」に反映させたいときなどは便利に使えるはずです。
つまりSplit Viewは、iPadがこれまでの「見る」(コンテンツViewer)をメインにした機器から一歩進んで、何かを「作る」ために必要な機能だということでしょう。特に今、AppleはiPadを学校で使う機器として推しているところです。iPadを教科書にするだけなら見る機能だけで良いですが、学校で使うからにはノートを取る機能は間違いなく必要です。これまで、何かを作るのはiPad Proを使うことが前提でしたが、新しいiPadでもApple Pencilが使えるようになったことで、iPadというカテゴリー自体が何かを作るものへと変わりつつあると言えます。iPad miniがそのまま置き去りにされている理由もここにありそうです。iPad miniは画面サイズ的に何かを作るには適さないため、コンテンツ Viewerというカテゴリを出られないことが、その理由でしょう。
コンテンツを消費するための機器がコンテンツを作る機器になっていく過渡期が今なのかもしれません。一部のアプリはまだ対応していないものもありますが、今後さらにいろいろな使い方が出てくることを期待したいです。