2018年現在、世界の人口は75億人を超えている。国連の世界人口予測によると、2055年には100億人を突破するとまで言われているという。そのような状況の中、世界中で危惧されているもののひとつが食糧不足だ。
そして、2013年には、国連食糧農業機関(FAO)がとある報告書を公表。その内容とは、「世界の食糧危機の解決に昆虫類の活用を推奨する」というものであった。しかし、ここ日本では、昆虫はいまだ“ゲテモノ”扱いされているのが現状である。そこで本連載では、昆虫食の新たな可能性を探るべく、昆虫を用いた「未来のお弁当」づくりに挑戦する。
メニューの監修を手がけるのは、昆虫料理研究会の代表を務める内山昭一氏。高タンパクな食材としても注目されている昆虫をさまざまなアプローチで調理し、2種類のお弁当を提案していただく。記念すべき初回は、「タガメ風味のアリの子とにんじんサラダ」のレシピを紹介しよう。
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タガメ風味とは一体?
メニュー名の「タガメ風味」という文言が気になるところだが、まずは材料から紹介していこう。
材料(2人前)
・タイワンタガメ(塩蔵)…1匹
・アリの子…適量
・酢…大さじ2杯
・オリーブオイル…大さじ2杯
・砂糖…大さじ1杯
・こしょう…少々
・にんじん…1/2本
風味付けに使うタイワンタガメは、タイを中心とする東南アジアで広く食用とされているという。日本では、タイの食材を取り扱っているお店などで購入できる。
タイワンタガメを丸ごと2分ほどゆでた後、殻を取り外して中の身を取り出していく。初めにお尻の先端をハサミで切り、お尻から腹側へ切り進める。胸のあたりまで切り進んだら、左右ともに脇へ向けて斜め上にハサミを入れる。
この段階でタガメの香りを嗅いでみると、予想を大きく裏切る洋梨のようなフルーティな香りが漂ってくる。これが「タガメ風味」というわけだ。たしかにサラダのようなさっぱりした料理には持ってこいかもしれない。
次に、手で殻を開き、中身をスプーンなどでかき出す。かき出した身をほぐし、酢、オリーブオイル、砂糖、こしょうと混ぜて、タガメドレッシングをつくる。
次なる食材は「アリの子」。こちらも同じくタイなどでは一般的に食されており、缶詰として販売されている。
水煮の状態でパッケージされたアリの子を、サッとゆででそのまま食べてみることに。プチプチとした食感で、淡泊な味わいの中にほんのり酸味も感じられる。思いのほかクセがないため、さまざまな料理のトッピングに合いそうだ。
アリの子もタガメドレッシングに混ぜ、先ほどのにんじんと和えたら完成。見た目も爽やかな逸品の出来上がり。
肝心の味はというと、洋梨を想起させるタガメの芳醇な香りがオリーブオイルと混ざり合い、すっきりとした口当たりでかなり食べやすい仕上がりに。アリの子を入れることでコクもプラスされており、個人的には「付け合わせとして出てきたら嬉しいメニュー」の仲間入りを果たすほどの完成度を感じられた。
「タガメ」と「アリの子」のポテンシャルを存分に引き出した今回のメニュー。どちらも比較的手に入れやすい食材であるため、気になった方はぜひともご自身で試してみてほしい。
次回は、「セミ成虫のフライ」を紹介する。
監修: 内山昭一(うちやましょういち)
昆虫料理研究家、昆虫料理研究会代表。食用昆虫科学研究会会員。1950年生まれ。長野県長野市出身。幼少より昆虫食に親しむ。味、食感、栄養はもとより、あらゆる角度から昆虫食を研究。試食会を定期的に開催し、健康食材「昆虫」のおいしく楽しいレシピを紹介。昆虫食の普及啓蒙に努める。食品衛生責任者。著書に『楽しい昆虫料理』(ビジネス社)、『昆虫食入門』(平凡社)など。2019年1月17日には『昆虫は美味い! 』(新潮社)を発売予定。