お金の話の中でも、特に切り出しにくいのが「相続」問題。しかし、相続問題を放置したままでいると、いざという時、家庭内のトラブルにつながることもあります。また、「うちは資産家でもないし、相続は関係ない」と考える人も多いですが、相続は意外と多くの家庭に関わる問題です。
そこでこの連載では、『ぶっちゃけ相続』(ダイヤモンド社)の著者で税理士の橘慶太氏に、家族と一緒に相続の知識を身に付ける方法や相続のトラブル事例、最新の相続ルール変更について詳しくお話を伺います。第6回は、「孫への生前贈与」をしても、相続税が課されるケースについて。
通帳・印鑑・キャッシュカードの3点セット、本人の自覚が必要
━━2024年の相続ルール変更について、注意点や想定されるトラブル事例が多くあるとのことですが、中でも注目したい点を解説いただきたいです。
前回の記事では、生前贈与の「3年ルール」が7年に延長されたというお話をしました。
このルールについて、実は誰に対しても適用されるルールではないのです。将来相続人になる人たちへの贈与が、このルールの対象になります。
ですので、例えばお父さんから見て、配偶者であるお母さんや子どもたち、この人たちは将来相続人になりますので、3年または7年ルールがかかってきます。しかし、孫に対する贈与というのは、原則として3年または7年ルールが適用されないんです。
極端な話、亡くなる直前に複数の孫たちに110万円ずつ贈与しておけば、その部分は相続税も贈与税もかからないので、けっこうお得になります。そのため、孫への贈与というのは、昔から節税対策の一環として積極的にされていた方が多い印象を持っています。
その際に注意したいのは、孫が10代、もしくは赤ちゃんなど若い場合です。「若い人に大金を渡すと金銭感覚が狂ってしまう」「教育上よくない」という理由で、孫の口座にお金は振り込むけれど、通帳や印鑑、キャッシュカードはおじいちゃんが持っている、というケースがよくあります。
しかしこれはとても問題で、この状態でおじいちゃんが亡くなると、孫の口座に入っているお金ではあるけれど、「実質的にはおじいちゃんのお金でしょ」と税務署から言われることがあるんですね。
そうすると、孫の口座に入っているお金も相続税の対象になってしまいますし、「追徴課税も上乗せで払いなさい」と言われてしまうトラブルが非常に多いです。
━━この場合、通帳さえ孫のところにあれば問題ないのでしょうか。
通帳と印鑑、キャッシュカードの3点セットを本人が持っていて、なおかつ贈与でお金をもらっていることをきちんと本人が自覚している場合は問題ありません。「知らないうちに、私の口座に預金が1,000万円くらいありました」というのはダメなんです。
ただ、未成年者の場合は親権者が通帳、印鑑、キャッシュカードを管理していればOKです。孫への贈与は節税効果が大きいですが、そういった注意点がありますので慎重にやった方がいいですね。
『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】 相続専門YouTuber税理士がお金のソン・トクをとことん教えます!』(橘慶太 著/ダイヤモンド社 刊)
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