独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。
第32回は、東京都北区に整体・鍼灸 Re.Esperanza(リ・エスペランサ)を開業された棚橋賢二さんにお話を伺いました。
きっかけは母の起業-大手から個人事業へ
――棚橋さんが整体のお仕事に興味を持たれたきっかけはなんだったのでしょうか。
棚橋さん:僕は高校時代にサッカーをやっていたのですが、よく怪我に悩まされていました。その経験から、ケアする側に回りたいと考えるようになり、高校卒業後は大阪にあるスポーツトレーナー養成の専門学校に入ったんです。
――そのまま起業の道を選ばれたのでしょうか。
棚橋さん:いえ、最初は某整体関連の会社に就職して、都内の整体サロンで4年間、店長を務めました。ただ、僕が高校生のときに母が看護師を辞めて「結婚教育カウンセラー」という事業を始めたことで、自分もいずれ何かの代表に就きたいなと、その頃から考えていました。それで、自分でも整体サロンを持ちたいと思い始めたのですね。そんな中、母の会社がコロナの打撃を受けたことを機に、整体サロンを辞めて奈良の実家に帰り、母の仕事の手伝いをすることになりました。
――一度は整体から離れられたのですね。
棚橋さん:はい。ですが私自身、どのようなかたちで母の会社を手伝えるのだろう、何をすれば手助けになるのだろうと悩み考えた結果、やっぱり私には整体しかなく、これまでのようにお客様の健康の一助となって喜んでいただくことで、間接的に母の会社を盛り上げていくことを決めました。そして事業部を立ち上げて、今に至ります。
すべてを自分でやる、課題と達成感とは
――開業されてみて大変だったことはありますか?
棚橋さん:開業して早1年が経とうとしていますが、当時からずっと抱えている課題は、やはり新規のお客様の集客です。大手サロンで働いていた時は、会社そのものが色々な販促を打ち出してたので、自分は組織の一員としてそれを実施すればよいだけでした。でも今は、会社がやっていたようなことを、自分で考え、行動しないといけません。施術だけでは店舗運営はうまくいかないのだということを痛感した1年でした。
――そんな中、この1年頑張ってこられた思いや、やりがいをお聞かせください。
棚橋さん:本当にこの1年は、今までの人生の中でも特に早く経過したように感じています。先程のお話のように、前職ではやっていなかった販促も自分で考え、自分でアクションを起こす。今日だけではなく、1ヶ月、半年、1年後、またさらにその先を、よりうまくいくようにするためには何が必要なのか。完成している組織の中では感じられないものを日々感じることができ、ストレスを感じながらもそれ以上にやりがいと達成感で、昔よりさらに充実した毎日に変わりました。
「人生100年時代をいつまでも若々しく楽しく暮らす」をテーマにした新展開も
――まさに猛スピードで過ぎる1年だったのですね。今後の展望などあればぜひ。
棚橋さん:まず基盤となる今の一店舗目の土台をしっかりと安定化させ、2店舗目、3店舗目と店舗を少しずつ拡大していくことですね。
それと私自身筋トレを行っていますが、体を動かすことの素晴らしさ、人生において運動はマストだと私自身痛感していますので、パーソナルトレーニングなどのジャンルにも拡大していきたいと考えています。さらに「人生100年時代をいつまでも若々しく綺麗に楽しく暮らす」ことをテーマにしたサービスの提供も拡大して行っていきたいと考えています。
――ありがとうございます、最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。
棚橋さん:環境の中で人間は慣れていき、今やっていることが全てと勘違いしやすくなります。私自身もそうでした。ですが、自分が組織の中でやっていることはごく僅かで、1から一人で始めていくとなると、やらないといけないことがたくさん見えてきます。組織の中では見えなかったことです。
だからこそ自分で実感はしていなくとも、自分たちのために実は沢山支えてくれている人たちがいる事を忘れず、感謝の気持ちを伝えることが大切だと思うのです。そうすれば、自分の環境が変わった後も助けてくれる人がいっぱいいてくれる、そんな環境になるでしょう。そのためにも感謝の気持ちは、ただ持つだけではなく、ぜひ「ありがとう」の5文字を周りの人、身近な人にも、伝えてほしいと思います。