独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

第30回は、大阪でアートスタジオ「ROSE-818(ローズエイト)RAVO(ラーボ)を運営する永田友紀子さんにお話を伺いました。

  • 永田友紀子さん

法律や建築の勉強からアートワークへ転身したきっかけ

――はじめからアートのお仕事に就いておられたわけではなかったのですね。

永田さん:はい。美大を卒業したあと父の事務所に入り、法律の勉強をしたり図面を引いたりと、国家試験を受けるために約5年間、仕事と学校で勉強漬けの日々を過ごしていたのですが、もともと日本画を描いていた私には0.1ミリもズレのない直線や、活字が苦手だったこともあって法律の勉強は容易ではなく……、そんな時に特殊なステンドグラス技法に出会いました。それが建築用として世界各国で使われているアメリカのフランチャイズと知り、すぐに研修を受けて加盟。初めて自分の得意分野で力を発揮できるようになりました。お仕事として、22年目になりましたね。

今では趣味だったモデリングペーストや漆喰、エポキシレジンを使ったテクスチャーアート、そして糸で描く絵画・タフティングやラグマット制作にも力を入れ、それらを楽しんで頂けるスタジオを運営しています。一方で、自分自身もアーティストとして国内外で展示販売をしていて、とても充実した日々を送ることが出来ています。

――アートが好きとは言え、なかなかスタジオ運営という発想、そして実現するには至らないのではと思いますが……。

永田さん:多くの方が色々なアートを楽める、そんな場を作ることが長年の夢でした。昨年、偶然にも自宅の隣の空き家を購入することができたので、そこをスタジオとして、今年初めにオープンすることができました。一番のきっかけは娘と娘の彼氏がタフティングに興味を持ち、「一緒にやりたい」と言ってくれたことですね。それぞれの得意分野を活かしたチームとして、3人の力を合わせての開業でした。2階がタフティングスタジオ、3階が私の制作スペースと、様々なアート・ハンドメイドを楽しむスペースになっています。

――家一軒がまるごとスタジオなのですね。開業まではいろいろ大変なことがあったのではないでしょうか。

永田さん:一番苦戦したのが宣伝でした。そもそもタフティングやテクスチャーアートの認知度が低かったため、まずはその楽しさや魅力を広く知ってもらうにはどうしたらいいのかを考えました。そこで、制作しているところを動画で発信したり、ターゲットを絞ってSNSで魅力をアピールしたり……続けているうちに口コミも広がって、少しずつお客様が増えていきました。

――認知度上げるところからのスタートだったのですね。ここまで続けてこられた思いや、やり甲斐など教えてください。

永田さん:それまでは自分が作品を制作し、それをお客様に喜んでもらえることが喜びとやりがいでしたが、スタジオをオープンしたことで、私の持つ様々な技術を多くの方に経験して頂き、ご自身に制作を楽しんでもらえることも大きな喜び、やりがいとなりました。アートを通じてHappyに、という思いから、ペットを飼われている方に向けて『うちのこ似合わせラグ』も制作しています。

――「うちのこ」、可愛すぎますね、これは飼い主さんも大喜びでしょう。永田さんの今後の展望をお聞かせください。

永田さん:ありがとうございます。今後は、力を入れているこのペットラグを、国内外問わず多くの方にお届けしたいという思いが大きいですね。また大阪に観光に来られる観光客の方々に、旅の思い出をアートという形で残してもらいたいということも考えています。

――最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

永田さん:タフティングやテクスチャーアートは、アート・ハンドメイドの中でもまだまだ認知度が低い分野ですが、その魅力をできるだけ多くの方々に届けて、経験してもらえるように頑張っていきます。もし興味を持って下さった方は、ぜひ足を運んでいただけると嬉しいです。 また、趣味の枠を飛び越えて起業に踏み出したい……と考えている方へ、私自身の実体験から「まずは一歩踏み出してみる」ことに、勇気を出して挑戦してみて欲しいですね。一歩踏み出すと、チャンスが舞い込み、本当に自分が夢見ていた世界が動き出します。私たちの挑戦もまだ始まったばかりです。