独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

第21回は、岐阜県でハンドメイド雑貨のお店「ひなた雑貨店」をオープンされた、石榑明美さんにお話を伺いました。

  • 石榑明美さん

作家をしながらお店をオープン、活動と経営の両立

――石榑さんはもともとハンドメイドがお好きだったのでしょうか。

石榑さん:そうですね、ハンドメイド歴は20年以上になります。ロゼットや布小物を作ったり、レッスンもしています。きっかけは高校3年生のときに、進路を決める過程で“ファッションデザイナー”という職業を知ったこと。なので、最初はそこを目指して洋服を作っていました。ハンドメイドは、出産や育児などで中断しつつも活動を続けています。長男を出産してからは、布小物を中心に、今の屋号で制作活動をしています。

――そうなのですね。多くの方は作家活動を中心にお仕事されていると思うのですが、石榑さんが「お店を持ちたい」と思われたきっかけはなんでしょうか。

石榑さん:実は20代の頃に一度、自身のハンドメイドの洋服を販売するお店を経営していたことがあるんです。そこで感じたのは、“作ること”と“お店の経営の両立”の難しさ、そして“続けていくこと”の難しさでした。洋服は店番の合間の“すきま時間”で作ることは難しいし、販売もサイズなどがあって難しい。それでも「いつかまた自分のお店を開きたい」という思いがあったので、作るものを洋服から布小物に変更して、ハンドメイドの雑貨店を開くことを目指したんです。

「ひなた雑貨店」という屋号は長男の名前の「ひなた」と、いつか雑貨店を開きたいという思いで決めました。“3年後に、下の子が小学生になるまでに実店舗を開きたい”と思って物件を探していたところ、いい物件に巡り会えたので予定よりかなり早くなりましたが、実店舗を開店することになりました。

仕入れや経理の難しさを実感

――なんと、すでに一度お店をご経験されていたのですね。今回、業態を変えて改めて開業されて、大変だと感じられていることはありますか?

石榑さん:個人事業主として活動しているのですが、経理関係は苦手なので大変です。ハンドメイドの材料は細かいものも多いので、棚卸しも……。実店舗では委託作家さんの作品もお取り扱いしているので、受託販売の仕訳などもなかなか大変です。

失敗談は、色々あります。例えば、取り扱っている輸入雑貨などの不良品率には驚かされます。もちろん、不良品でないものは可愛くて満足していますが、海外直送なので返品不可だったりと、仕入れの難しさを痛感します。あとは、店舗に雨漏りが見つかりまして、オープンまでに修理が間に合うかどうか……。

――なるほど、会計はかなり複雑を極めそうですね。仕入れの既製品もそうした不良品コストを考えた上での値決めとなるのでしょうか。今回のオープンにこぎ着けるまでの思いと、やりがいをお聞かせください。

石榑さん:私はハンドメイド歴20年以上なので、今回の実店舗をオープンするまでに長い時間がかかったことになります。何か大きなきっかけがあって実現するのかなと思っていましたが、ずっとハンドメイドで活動をしていたら、自然にたどり着いたという感じでした。中断した時期もありましたが、好きという想いと続けることの大切さも実感しまして。特に作品やレッスンを通じてお客様や生徒様の笑顔を見られたときはハンドメイドを仕事にしてよかったなと思います。

始めるのは簡単、難しいのは続けること

――今後の展望はいかがでしょうか。

石榑さん:下の子が小学生になる3年後には、店舗をメインにしたもう少し大きめの物件へ移転したいと思っています。レッスンも「ひなた雑貨店と言えばコレ!」と言ってもらえるような、メインとなるようなオリジナルレッスンを作りたいですね。

――さらなるお店の拡大、楽しみですね。最後に読者の皆さまにメッセージをお願い致します。

石榑さん:小さなお店ですが、夢だった雑貨店を開くことができました。私が今まで活動してきて感じたことは「始めるのは簡単だけど続けるのは難しい」ということです。ずっと続けることができているなら、自然に夢や目標にも近づけているんじゃないかと思います。私も「続けていく」ことを目標に、これからも一歩ずつ進んでいきたいと思います。