独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。
第18回は、神戸市で天然石と「マクラメ」という結びの技法を組み合わせたジュエリー製作販売と、その手法を教える教室とアトリエを運営されている「アランカール」の石上美雪さんにお話を伺いました。
ブログから購買希望やお問い合わせが入り始めた
――マクラメ編みは、どちらかというと少しニッチ寄りな世界かと思うのですが、これをお仕事にしようと思われたきっかけって何なんでしょう。
石上さん:短大を卒業してから航空会社に勤務したのですが、わずか2ヶ月で退職しました。その後20年以上、会社員として働いたものの、病気がきっかけで起業を模索しました。そんな折、趣味で“マクラメ”という手芸を始めまして、作ったアクセサリーをブログに掲載していたところ、「売って欲しい」という連絡をいただくようになったのですね。
当時は安価でお譲りしていましたが、個人的な売買を繰り返していたところ、2014年夏頃に地方新聞社の広告担当者からお問い合わせがあり、「ハンドメイドイベントでワークショップ開催しませんか?」とお誘いいただいたんです。それで3日間の出展(ワークショップとアクセサリー販売)をしました。
“半強制的”に物件を探すことに
――なんだか導かれるかのような展開のお話ですが(笑)、退職されることに抵抗はありませんでしたか?
石上さん:そうですね、当時は会社員として勤務しながらですが、イベントでのワークショップ講師をしたことがきっかけで、レンタルスペースで自主開催のワークショップを始めました。最初は週末だけの副業と割り切っていましたね。
――そのまますんなりと教室の開講となったのでしょうか。
石上さん:いえいえ。そもそも講師をしてから自主開催のワークショップまで3ヶ月と、超スピード展開だったんです。
そのため、開催場所を吟味することができず、せまくて古い会場で開業したことものですから、空調や照明環境の問題など、様々な不具合が発覚しました。でも2ヶ月ほど先までご予約をいただいていたため、ワークショップを開催しながら、慌てて教室物件を探す必要がでてきたんですね。十分な準備期間を設けずに起業に突き進んだことで起きた問題でした。
活動を楽しんでいたからこその展開
――そんな大変ことがあったのですね。その後、東京と神戸の2拠点展開をされましたが、石上さんを支えてくれたことは何だったのでしょうか。
石上さん:起業した当初は、自分が好きなことを仕事にできることが嬉しくて、無理をしてでも活動していました。そして、楽しんで活動をしていると、やがて私のように趣味を仕事にしたいという方からのご相談をいただくことが多くなりました。
「マクラメを仕事にしてみたい」という方には1年間の継続講座を開催して、私がこれまでの8年間の活動で体得したノウハウをお伝えしています。講座卒業生の活躍を見聞きすることが嬉しく、やりがいを感じます。
コロナ禍でも柔軟な動きで対応
――コロナ後は神戸へ拠点を戻されたとか。
石上さん:もともと神戸でスタートしたので、今年9月に神戸に拠点を戻すと同時に、アトリエを拡張しました。またこれまでは年2~3回、ときには生徒さんも連れて、海外へ天然石の買付に出かけていたのですが、コロナ禍以降は休止しています。今は講座をメインに開催しつつ、年10回くらい展示販売会を行っています。
――柔軟な対応で展開されているご様子が伺えます。今後の展望と、読者の方へメッセージをいただけますか?
石上さん:将来が見通せない難しいご時世ですが、その中でも新たなブランド作りと商品を作ろうとして頑張っています。厳しい情勢の中でも、様々な挑戦をしてみたいです。趣味を副業や本業にすることは可能で、様々な働き方があると思いますが、やりたいことは迷わず体験してみることをおすすめします。