独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

第15回は、広島県で「グランドーム瀬戸内しまなみ」を含むグランピング施設を3拠点経営されている、株式会社レストレーション代表取締役の森脇暉(もりわきひかる)さんにお話を伺いました。

  • 森脇暉さん

銀行員時代にさまざまな社長に出会い、「会社を作る」という選択肢が生まれた

――銀行員から転身されたとのことですが、どのような経緯があったのでしょう。

森脇さん:地元が田舎だったので、憧れていた都会の高校大学に進学し、その後の海外進出も見すえたうえで銀行に就職しました。

そうすると、お客さんが全員社長で、自分の中にも“会社をつくる”という選択肢がポコっと生まれたんです。ただ、お金を返せずに苦しんでいる社長さんも見てきましたので、辛いことも必ずあるはずだ、だから一生燃えられる仕事にしようと考えていました。そして都会に出てみて得た一番の気づきが、地元の素晴らしさとお世話になった方々への感謝、つまり「郷土愛」だったのです。

地元へ帰る度に、母校がなくなり、温泉やスーパーがなくなり、過疎化が進んで衰退していくのを目の当たりにして、どこの地方もきっと同じ悩みで困っておられるのだろうなと。であれば自分の地元はもちろん、全国の地方の価値を最大化させて、地方から日本を盛り上げていくような会社を作ろうと志し、創業しました。

思いだけが先行して事業を進めた結果、失敗の数々

――地元への恩返しの思いから、全国の地方活性へと拡大されたのですね。それでも最初は手探りだったと伺っています。

森脇さん:はい、そもそも何をするかさえ決めていませんでしたので、“何をするかを探す”ことに苦労しました(笑)。

まず1社の業務委託を取り付け、街づくりプロジェクトの営業広報活動を実施しました。自治体と共同でクラウドファンディングを実施、2,700万円集まり、プロジェクトも盛り上がったことで、ひとつ結果は出せました。

ただ、その1社との業務委託契約がなくなったら、一気に売上がなくなりまして。知り合いの社長の商品を営業代行で売らせて頂いてなんとか食いつなぎましたが、お金がなくなる恐怖はかなりきつかったですね。朝起きた時の、日々の絶望感は今でも忘れられません。

また、思いだけが先行した状態で、数々の事業やボランティアをやって失敗も多くしました。地元や地方の祭りの手伝いや、清掃活動といったボランティアばかりして、喜んではいただけるけど、ひたすら赤字続き。母校の目の前に出店をして、半年で移転した事もありました。思いだけで事業はやっちゃだめですね(笑)。

全ての事業を捨て、グランピングに一本化

――行動力がすごい分、さまざまな経験もしてこられたのですね。大変ななか、森脇さんを支えたやりがいみたいなものがあったのでしょうか。

森脇さん:自分の人生を自分で選択し、切り開いている、という実感はあります。全て自己責任ですから、喜びも苦しみも全て自分に返ってきますしね。そうやって自分の成長と会社の成長を感じられることもやりがいのひとつです。

クラウドファンディングのコンサルで一つひとつ実績を積み上げながらなんとかやりくりしていましたが、コロナ禍で、ほぼ全ての事業が大きな影響を受けました。

そんな中、コロナ禍でも結果が出ていた唯一の事業が、グランピング事業だったのです。最初に街づくりプロジェクトをやった際、クラファンでグランピングを誘致し、立ち上げまでをサポートしたことで、全てのやり方がわかっていたことも大きかったです。

その土地の良さを存分に発揮できる実感もありましたので、これだったら地方の価値を最大化させて、地方から日本を盛り上げるという、我々の志にも大きくつながると確信しました。そして全ての事業を捨てて、グランピング事業にフルコミットしたんです。

――ほかを全部捨てて、グランピング事業に一本化というのは、そうとう勇気の要る決断だったのではないでしょうか。実際、グランピングを拡大されてみてどうでしたか?

森脇さん:広島県で最初のグランピング施設をオープンさせまして、現在は同県で3拠点まで拡大、県内最大規模のグループとなりました。

しまなみ海道を楽しめる海のグランピングと、自然豊かな三原の山のグランピング。トレンドであるバレルサウナを設置したり、中国地方初のスケルトン飲み放題ドームバーを作ったり、ペットと泊まれるドッグラン付きにしたりと、試行錯誤をしながら施設づくりをしています。何より一番大切にしていることは、「地元」への徹底的なこだわりです。施工は全て地元業者で、食材の仕入れも全て地元です。僕らが結果を出せば出すほど、地元が潤うという体制になっています。これらを通してやっと、少し我々の表現したい世界観を体現でき始めたかなと思っています。

中国地方から目指す全国展開

――利用者も地元の方も喜ばれて、森脇さんの事業もまた活性化につながる、まさに“三方良し”のビジネスモデルですね。もしよければ今後の展望などお聞かせいただけますか?

森脇さん:実は、我々の地元は下関なんです。ただ、“思いだけで事業をやってはいけない”という失敗から得た学びから、結果を出す事にこだわって、まず広島県からこの事業を始めました。広島でしっかり基盤ができたら、いざ地元山口県に事業を展開していきます。まずは中国地方でナンバーワンになること。山口・広島を中心とした中国地方の価値を最大化させていきます。その後はさらなる全国展開です。

ただ僕らはグランピング屋さんではないので、グランピング一本で拡大していくつもりはありません。“世の中に求められているけど、需要を満たせていない”価値をとらえ、それを地方というフィールドでしっかり表現していきたいと思います。

――ありがとうございます。最後に読者の皆様へメッセージをお願いします。

森脇さん:自分の感情に素直になると楽しいですよ。喜怒哀楽どの感情でもいいので、その感情の揺れから熱が生まれて、その原動力でやる気や行動が生まれてきます。どうかその感情のアンテナを理性で押し殺さないで欲しいです。

次に、その感情から生まれた熱を使って、具体的に物事を実現するイメージを持ちやすい環境を自分にプレゼントしてあげるのがオススメです。ありがたいことに僕は、こうなりたいなと思える経営者に、銀行時代にたくさん出会えました。逆に、「この人でも会社ができるんだったら自分にも出来そう」という感覚も、あまり尊敬できない経営者に出会ったことで培われました(笑)。この、根拠がなくても「できるかも」という感覚は、非常に大事かなと思います。

コロナで沢山の方々が影響を受け、苦しみながらも新しい価値がどんどん生まれてきています。今だからこそできる挑戦を一緒にやっていきましょう! 行き詰まったら解放されに、是非弊社グランピング施設へ遊びに来てくださいね。「この記事見ました」と言っていただけたら、社長特典をプレゼントします! 貴重なご縁をありがとうございました。