完全なキャッシュレス生活を送っている人ならともかく、ほとんどすべての人が持っているのが「財布」。お金やクレジットカードなどを収納して持ち歩くための、ただの「道具」だと思ってしまいますが、ファイナンシャルプランナーの飯村久美先生によれば、「お金をきちんと貯めるためにも財布の扱い方を振り返ることが大切」といいます。いったいどういうことなのか、詳しく教えてもらいました。
財布を大事に扱う人は、きちんとお金のことを考えている
――お金が貯まる人の特徴にもいろいろあると思いますが、「意外なもの」となるとどんなものがありますか?
飯村先生 そうですね、ひとつ挙げるなら「財布」かな。
――財布ですか。たとえば、長財布を使っているとか?
飯村先生 一般的には、お金持ちの財布は長財布というイメージがありますよね。でも、国際線のファーストクラスを担当するあるCAさんによれば、「お金持ちこそ二つ折り財布を使っている」という話もあります。
――どちらの説もある……。
飯村先生 ここで見えるのは、長財布とか二つ折り財布とかいった種類の話ではないということだと思います。その「扱い方」に特徴があるのです。お金が貯まる人の財布には不要なレシートやポイントカードなどが入っていなくて、綺麗ですっきりしているという特徴があります。
――財布が綺麗ですっきりしていることにはどんな意味が?
飯村先生 財布というのは、世の中を循環しているお金が自分のところにやってきて休む「家」のようなもの。その家の居心地がよければどんどんお金は入ってきますし、「ボロボロだし窮屈で居心地が悪いな」とか「くしゃくしゃにされているし大事にされていないよ」とお金に思われるような家だと、どんどん出ていくというわけ。
――それはなんというか……迷信的なもの?
飯村先生 いえ、そうではありません。財布の扱い方には、持ち主のお金に対する向き合い方が表れます。長財布であれ二つ折り財布であれ財布を大事に扱う人は、それだけお金に対しても真面目に向き合ってきちんとお金のことを考えているということ。ですから、お金が貯まる人の財布は結果的に綺麗ですっきりしたものになるのです。
綺麗な新券が無駄遣いを防いでくれる
――だとしたら、お金がたまらない人の財布は……。
飯村先生 その逆ですね。1回だけ買い物をしただけのお店のポイントカードがいくつも入っていたり、お札もくしゃくしゃだったり、小銭もじゃらじゃらとたくさん入っていたり……それらの結果として分厚く膨れ上がっています。もちろん、財布の扱いそのものも雑なので、ほつれていてボロボロということも。
――小銭入れがパンパンになっている人っていますね。
飯村先生 そうでしょう。わたしなんかは、受け取るお釣りをなるべく少なくしたいから、610円のものを買うときに500円玉が足りなかったら1110円払うタイプです(笑)。それから、お札はなるべく新券の綺麗なものを残すようにして、1万円札、5000円札、1000円札と種類ごとにきちんと向きをそろえています。
――あ、それはわたしも実践しています。それもやはり、お金に対する向き合い方が表れるということでしょうか?
飯村先生 もちろんそれもありますが、とくにお札を綺麗に扱うことの意味はそれだけではありませんよ。
――というのは?
飯村先生 お札って、新券など綺麗なものは「使ってしまうのがもったいない!」と感じて手元に残しておきたくりませんか? そうすると、なにか買い物をしようというときにもその気持ちが歯止めをかけて、「これは本当に必要なものかな?」と考えるきっかけを与えてくれます。そうして無駄遣いを防いでくれるので、お金を貯められるのです。お金を大事にしてお金の重みを感じながら使う人にはお金が貯まるというわけですね。
無駄遣いをしてしまう「興奮色」の財布に注意!
――飯村先生、わたしもまずは財布を新調することにします!
飯村先生 でしたら、ひとつアドバイスをしましょう。先ほど、お金が貯まる人の財布の特徴は、長財布とか二つ折り財布といった種類にあるわけではないといいましたよね。でも、「色」には注意してください。
――色……ですか。具体的には?
飯村先生 赤とかピンクの明るい色の財布ではなく、黒や紺、茶色、ベージュといった落ち着いた色のものがおすすめです。
――そこにはどういう意味が?
飯村先生 これも迷信とか風水のようなものではありませんよ(笑)。赤やピンクなど明るい色は「興奮色」です。スーパーには、店頭に明るい色の商品を並べて、かつアップテンポの音楽を流すことでお客を興奮させて購買欲を刺激するという戦略があります。明るい色の財布は、それと同じことを自分にしてしまうのです。
――なるほど。つまり、明るい色の財布を使っていると……。
飯村先生 興奮してしまって、本来なら必要ないものもどんどん買っちゃう。
――ちょっと意外な視点でした。
飯村先生 お金の使い方って、人の気持ちとものすごく強くリンクしているもの。たとえば、普段なら買わないようなどうでもいいものも旅先でなら買ってしまうことってあるでしょう? それも旅行で興奮しているから。わざわざ自分を興奮させる色の財布を使って、普段の買い物から旅先でのようなお金の使い方をしないように注意してくださいね。
構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/櫻井健司