後先考えずにお金を使ってしまういわゆる「浪費癖」……。まさに、お金を貯めるうえでの天敵です。もし自分に浪費癖があると自覚しているなら、まずは「レシートをきちんともらう」ことからはじめましょう。ファイナンシャルプランナーの飯村久美先生はそう語ります。
湯水のようにお金を使ってしまう浪費癖のある人がお金を貯めるためのアドバイスとともに、愛のあるメッセージももらってきました。
レシートを定期的にチェックして自分の消費動向を把握
――いわゆる「浪費癖」がある人がお金を貯められるようになるには、どうすればいいですか?
飯村先生 もうその浪費癖自体を直さなければならないのですが……それができないから困っているんですものね(苦笑)。では、浪費癖のある人の問題はどこにあると思いますか?
――それこそ、浪費癖自体……ですよね?
飯村先生 たしかにそうですね(笑)。でも、浪費癖のある人のいちばんの問題は、自分がなににいくら使ったのかを知らないことにあります。自分の消費傾向を把握して反省ができていないから、その場の気持ち次第でいろいろなものにどんどんお金を使ってしまうのです。
――なるほど。そうすると、まずは自分の消費傾向を把握しないといけない。
飯村先生 そう。そのためにとっても便利なものがあります。いったいなんでしょうか? なにか買い物をしたら、お店の人が必ず渡してくれる……。
――レシートですか?
飯村先生 正解です。レシートを見れば、いつどこでなににいくら使ったのかが一目瞭然でわかりますよね。浪費癖がある人の場合にはまずこのことができていないかもしれませんが、お金を使ったら必ずレシートを受け取る癖をつけましょう。そして、できれば週に1度、最低でも月に1度はレシートの内容をチェックしてほしいのです。
――でも、いまはネットショッピングなどでクレジットカードでの支払いも増えていますが……。
飯村先生 たしかにそうですね。浪費癖を直すには、本当なら「現金主義」になってほしいところです。でも、いまは新型コロナウイルスの影響もあってキャッシュレス決済が推奨されていますし、それこそネットショッピングなどではクレジットカードで支払うことがほとんどでしょう。でも、その場合にも必ず月に一度はクレジットカードの利用明細やネットショッピングサイトの購入履歴をレシートと一緒にチェックするようにしてほしいですね。
自分自身が、自分の家計の「経営者」だと意識する
――具体的にはどのようにチェックするのですか?
飯村先生 「食費」「おこづかい」「その他」の3つのグループにわけてチェックすることが基本です。食費は、スーパーやコンビニで食べ物を買ったお金や外食代ですね。それから、おこづかいは、趣味やレジャーなどに使ったお金。その他は、日用品や医療費、交通費などです。そして、とくに食費とおこづかいを注意してチェックしてみてください。
――その理由は?
飯村先生 日用品や交通費などとちがって、食費とおこづかいは月によって変動しやすいからです。とくに若いシングルの人の場合、それこそその場の気分次第で際限なくお金を使ってしまうこともあります。そういうことがなかったかをチェックして、食費とおこづかいそれぞれを予算内に収めるための反省材料にするというわけです。
――「こんなものにこんなにお金を使っていたのか!」と反省するわけですね。
飯村先生 そう。わたしのお客さまのなかにカフェに行くのが大好きで「カフェじゃないと仕事ができない」という人がいたのですが、その人にレシートチェックをしてもらったところ、月に何万円もカフェ代に使っていることがわかりました。もちろん本人は大反省(苦笑)。その後は自分でエスプレッソマシンを購入して、カフェには行かないようになりました。
――主にスナックで浪費しているわたしの場合、自分でスナックを経営すれば……。
飯村先生 でも、自分の店にはそうそう飲みに行かないんじゃないですか(笑)? ただ、もちろんスナックでもレシートをもらうことが大切です。きちんと計算してみると、びっくりするような金額を使っているかもしれませんよ。
――その事実から目をそらさないようにします……。話を戻して、世の浪費癖がある人たちに向けて先生から愛のあるメッセージを頂けますか?
飯村先生 自分自身が、自分の家計を預かる「経営者」だという意識を持ってほしいですね。会社なら、赤字になれば大問題。会社の経営者たちは会社に入ってくるお金と出ていくお金をしっかり把握していて当然です。売掛金や買掛金をしっかりと把握して、毎月、いや毎日のようにお金を管理している経営者は世の中にたくさんいます。なぜなら、経営とはそういうものだからです。
大企業なら経理部がありますが、中小企業だと経営者自らが経理を見るところもたくさん存在します。彼ら彼女らは手掛けるビジネスにも情熱を注ぎますが、できる経営者はお金の管理も徹底しています。でも、「個人」となったらどうでしょう? 個人でも赤字になれば本当なら大問題のはずですが、そういう意識が欠けている人が多いように感じるのです。
自分自身が経営者だという意識を持って、しっかり家計を管理してみてください。きっと大きく状況が変わるはずですよ。
構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/櫻井健司