「投資なんてお金持ちがやるもので、自分には縁がないもの」。とくにまだ収入がそれほど多くない若い人は、そう思い込んでいるかもしれません。でも、いまはたったの100円からでも投資をはじめることができる時代です。ここ十数年で大きく変わった投資をめぐる状況と、投資の基本について教えてもらいました。
「投資信託」の登場で投資が一気に身近に!
――今回は投資について教えていただきたいのですが、そもそもの質問からさせてください。「投資」とはなんですか?
飯村先生 基本を知りたいということですね。投資とは、金融商品に限らず、将来的にリターンを期待できるものに対してお金を投じる行為のことです。ですから、とくに若い人の場合であれば基礎から学ぶ必要がある。お金を稼ぐ力を高めるためには、本を読んだり、セミナーなどに通って学んだりといった自己投資をすることも大切ですね。
――とはいえ、やはり投資というと金融商品を買うことをイメージするものです。いま、金融商品をめぐる状況はどうなっているのでしょうか。
飯村先生 かつてとは大きくちがっています。ひとむかし前までは、投資というと富裕層がするものといったイメージがあったでしょう? でも、2000年頃から「投資信託」というものが銀行でも買えるようになったことで、いまは投資がすごく身近なものになったのです。
――その投資信託というのは?
飯村先生 ごく簡単にいうと、みなさんから集めたお金をプロが株や債券、不動産など複数の商品で運用をしてくれるというシステムです。ファンドマネージャーというプロにお任せするので、投資するみなさんには専門的な知識は必要ないということ。しかも、高額の資金も必要ありません。いまは、100円や500円などワンコインからはじめられる投資信託もありますよ!
――え!? でも、株ってそんなに安いものでしたっけ?
飯村先生 もちろん高いものなら百万円以上もします。でも、投資信託の場合は、個人の株式投資とはちがってひとりで株を買うわけではありません。わたしは、投資信託をよく「のり巻き」にたとえてお伝えしていますが、大勢から何千億という資金を集めて、1本の大きなのり巻きをつくります。のり巻きにはいろいろな具が入っていますよね? たとえば日本を代表する企業225社の平均株価である日経平均株価の動きに連動する投資信託の商品には、トヨタの株もヤフーの株も入っています。
――トヨタやヤフーの株がのり巻きの具というわけですね?
飯村先生 そう。そして、投資家それぞれの投資額に応じてもらえるのり巻きの厚さがちがってきます。1000円を投資した人ののり巻きは、500円を投資した人ののり巻きより厚いというわけ。そこで、もし225社の平均株価が上がったら、のり巻き全体が太くなると考えてください。すると、1000円を投資した人ののり巻きは、500円を投資した人ののり巻きより厚い分、多く増えることになりますよね。それだけ多くの利益を手に入れられる。投資信託はこのようなシステムになっているのです。
【投資信託における投資の流れ】
国内外の株と債券にまとめて投資できる「バランス型」
――投資信託のメリットというと、まずは少ない金額からはじめられるということ?
飯村先生 そうですね。また、複数の株や債券にまとめて投資をすることになるので、大きなリスクを回避できることもメリットです。
――仮にある会社の株価が大きく下落しても、上がった他の会社の株価が守ってくれると。
飯村先生 そのとおり! そういう意味で初心者の方にわたしがおすすめしたいのが「バランス型」と呼ばれる投資信託です。
――……バランス型?
飯村先生 先の例に挙げたのは、日経平均株価に連動して運用される投資信託商品です。でも、日本の経済がこれからずっと成長していくかはわかりませんよね? だったら、外国の株で運用する商品にも併せて投資すればいい。けれど、外国の株も順調に上がっていくかといったら、そうとは限りません。
――日本と外国の株がそろって下落したら、打つ手なし……ですか。
飯村先生 それがそうではないのです。株と相性がいい、いわゆる国債など債券で運用する商品にも投資すればいい。もちろん、日本の債券と外国の債券それぞれで運用する商品にも投資しましょう。
――株と債券の相性がいいというのは、どういうことですか?
飯村先生 まずは株に比べて、債券は価格の上下動が小さいのです。つまりリスクが小さい点で相性がいいといえます。さらに、株価が下がったときにも債券は下がりづらい、あるいは上がる傾向にあるという相関性があります。なんと、リーマンショックで株価が大暴落したときにも、日本の債券はプラスでした。
――整理すると、日本と外国それぞれの株と債券で運用する4パターンの投資信託商品に投資すべきということ……。これはちょっと面倒そうですね。
飯村先生 ですよね(笑)。だから、バランス型という商品があるのです。バランス型というのは、いまお話した4パターンの投資信託をバランスよく組み合わせたもの。のり巻きの具に日本の株も債券も外国の株も債券も含まれているものということです。4つのうちどこかで損をしても、他がカバーしてくれる可能性が高まりますから、それだけリスクを下げられます。
――とはいえ、リスクはゼロではないですよね?
飯村先生 もちろん。ですから、投資をはじめるには、ひとり暮らしの人なら100万円くらいの生活費は確保しておく必要があります。それから、生活費とは別に、たとえば留学資金など5年以内に使う予定のお金も定期預金など元本割れしないかたちで確保しておくべきです。そのうえで投資をはじめてほしいと思いますね。いまは普通預金にお金を預けておくだけではお金はまったく増えません。積極的に投資について学んで、ぜひ最初の一歩を踏み出してみてください。
構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/櫻井健司