「できることなら、なるべく納める税金は減らしたい」というのが人情でしょう。そうはいっても、給料から税金が天引きされているサラリーマンなら、「節税なんてできない」と思っている人もいるかもしれません。でも、サラリーマンでも手軽にできる節税があったとしたら? ファイナンシャルプランナーの飯村久美先生がおすすめする節税法を教えてくれました。

  • 知らなきゃ絶対損! サラリーマンでも手軽にできる「節税」がある /ファイナンシャルプランナー・飯村久美

若くても親を養っていれば「所得控除」を受けられる

――「節税」というと、一般のサラリーマンにはあまり縁がないものと考える人も少なくないかもしれません。
飯村先生 そうですね。サラリーマンの場合、税金は給料から天引きされますから、とくに社会に出たばかりの若い人なら、「会社にお任せ」という人も多いでしょう。でも、サラリーマンにもできる節税法はたくさんありますよ。

――それはぜひ知りたいですね。先生がおすすめするものをいくつか教えてください。
飯村先生 いくつもありますが、ここでは主に「扶養控除」「医療費控除」「ふるさと納税」について解説しましょう。では、まず扶養控除から。これは、自分の稼ぎで養っている家族がいる場合、要件を満たせば受けられる所得控除のことです。

――つまり、家族がいない未婚者にはあまり意味がない?
飯村先生 そうですね。でも、若い人でも親御さんを養っているケースもあるでしょう。もし親御さんの年間所得が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)なら、親を扶養家族にしましょう。その分、課税対象となる所得額を減らせます。

「医療費控除」と近年注目を集める「セルフメディケーション」

――次の医療費控除というのは?
飯村先生 これは、たくさん医療費を使ってしまった人を助けるための制度です。具体的には、医療費の自己負担額が1年間に10万円(※)を超えた場合は、10万円を超えた部分に関しては所得控除を受けられるのです。

※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額

――つまり、大きな病気をわずらっていたり、急に入院したりしたような人を助ける制度ということですね。
飯村先生 そう。さらに、いまは新たなトピックとして「セルフメディケーション税制」というものもあります。

――恥ずかしながら初耳です……。それは、どういうものですか?
飯村先生 医療費控除の特例です。医療費控除には、先ほどいったように「医療費の自己負担額が1年間に10万円を超えた場合」という条件があります。でも、その条件を満たさない人もたくさんいます。

――たしかに、そうそう10万円には達しないかもしれません。
飯村先生 そこで、セルフメディケーション税制の出番です。これは、年間1万2000円を超える医薬品を購入した場合、その購入額が所得控除の対象になる制度。セルフメディケーション税制の対象となるのはすべての医薬品というわけではありませんが、胃薬や湿布などそれこそ日常的に使う有名な医薬品も数多く対象となっています。わたしの場合、趣味で卓球をやるので湿布は常備していますから、ありがたい制度です(笑)。

――つまり、大きな病気をわずらっているような人以外の人に対しても税制優遇のハードルを下げているということですね?
飯村先生 そうです。ただし、「セルフメディケーション」という名の通り、その恩恵を受けられるのは、自分できちんと健康管理を心かげている人に限られます。具体的には、きちんと予防接種や健康診断を受けていることが条件。それこそサラリーマンの人なら会社の指示で予防接種も健康診断も受けているでしょうから、これはおすすめの制度です。

自治体を応援して多くのメリットを受けられる「ふるさと納税」

――最後のふるさと納税について教えてください。
飯村先生 これは、自分が生まれ育ってお世話になった自治体とか、あるいは応援したい自治体に対して寄付ができる制度です。 寄付をした金額のうち2,000円を超える部分については、所得税の還付や住民税の控除が受けられます。

――たとえば、過疎化しているような地元の自治体を応援することができる。
飯村先生 しかも、それだけではありません。ふるさと納税をした自治体から返礼品があり、たとえば地域の特産品を送ってもらえるということがあるのです。ただ、この制度は厳密には節税ではありません。支払う税金自体が減るわけではありませんからね。でも、返礼品の分がお得なのです。

――そういう意味においての節税というわけですね。
飯村先生 しかも、収めた税金の使いみちについて「福祉に使ってほしい」「自然保護に使ってほしい」というふうな指定もできたり、返礼品の送り先を自分以外に変えられたりするといったメリットもあります。わたしも親にふるさと納税の返礼品でおせちを届けたことがありますが、とてもよろこばれましたよ。

――返礼品を贈答品として使えるわけですね。とてもよくわかりました。
飯村先生 ここでは3つだけ紹介しましたが、サラリーマンにもできる節税には他にもいろいろあります。災害で損害をこうむった人なら「雑損控除」というものを受けられますし、株や投資信託を売って損が出た人なら「繰越控除」があります。それぞれ置かれている状況で使える制度は変わってきますのでここでは細かく説明はしませんが、そういった制度を積極的に知っていくこと、そして税に対する関心を持つ意識は絶対に必要なことだと思います。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/櫻井健司