お金をしっかり貯めたいとき、大切となってくる「心がけ」とはどんなものでしょう? 無駄遣いをしないために欲しいものも我慢するような自己抑制の気持ちでしょうか。もちろんそれも大切なことのひとつかもしれません。でも、ファイナンシャルプランナーの飯村久美先生によれば、まったく別の心がけが大切なのだそう。それは、「夢」を持つこと。夢を持てばお金がどんどん貯まる――。その理由を教えてもらいました。

具体的な「夢」が貯金へのモチベーションを生む

――お金を貯めたいというとき、具体的な手法とは別に「心がけ」として大切なことはありますか?
飯村先生 なにより、具体的な「夢」を持つことですね。

――それは、「お金を貯めたらやってみたいこと」など?
飯村先生 そうですね。あとは、「いつまでに○万円貯めたい」という具体的な数値目標もそう。それがあるかどうかで、お金の貯まり具合はまったくちがってきます。

――それはどういう理屈なのでしょうか?
飯村先生 たとえば、ただ漠然と「お金を貯めたい」と思っている人がいるとします。そういう人の場合、たとえ途中まできちんと貯金できていたとしても、「あれ? 気づいたらちょっとお金が貯まっているな。少しくらいぜいたくしてもいいかも……」なんて考えて、余計なものにお金を使ってしまうということにもなりかねません。

――なるほど。わたしもそういうタイプですから、ものすごくイメージできます……(苦笑)。
飯村先生 いけませんね(笑)。そういうふうに漠然とお金を貯めようとしていると、貯金に対するモチベーションも維持できないのではないですか?

――たしかにそうかもしれません……。
飯村先生 そうではなく、「1年間で30万円貯める」とか「2年後までに100万円を貯めて恋人と海外旅行に行く」というふうな具体的な夢を持っていれば、モチベーションを維持できます。貯金が増えてくれば自分の努力も成果となって見えますし、「あともう少しだ!」というふうによろこびやワクワク感も味わえる。それが、さらなる貯金へのモチベーションを生むという好循環をつくってくれるのです。

前向きに貯金したくなるような「夢」を持つ

――「将来が不安だから」とか、なんとなく「お金は貯めておかないと」といった心がけではなかなかお金は貯まらないということですね。
飯村先生 そのとおりです。この心がけは、普段の節約に対するモチベーションアップにもつながります。お金を貯めることと節約は、切っても切れないものですから。

――具体的に教えてもらっていいですか?
飯村先生 これは、ある家庭の家計をわたしが改善するというテレビの企画での話です。その家庭の奥さんの相談は、「月の食費を2万円浮かせたい」というものでした。それなのに、「でも、我慢するのは嫌なんです」ってさらっといったのです(苦笑)。

――それはなかなかわがままというか……。
飯村先生 でしょう(笑)? その後、奥さんにはまず10年後までの家族に起こるであろうライフイベントを時系列で書き出してもらいました。たとえばそれは、「○年後に子どもが中学生になる」といったことですね。そして、奥さんに「このなかで楽しみにしていることだとか家族でやりたいことはないですか?」と聞いてみました。すると、「4年後に夫が勤続20年を迎えて長期休暇を取れるから、そのタイミングで家族旅行に行きたい」と。さらに「いいですね。どこに行きましょうか」「やっぱりハワイ!」「いくら必要でしょう?」「100万円」というふうにヒアリングを重ねていきました。

――つまり、先生が奥さんの夢を具体的な夢、数値目標にしたわけですね。
飯村先生 そういうことです。そして、4年後までに100万円を貯めなければならないことがわかった。そこから逆算してもらって、ハワイ旅行のためにはまさに月に2万円を貯めなければならないことを奥さん自身に導き出してもらいました。

――なるほど。節約に対する意識が、なんとなく「食費を使い過ぎているような気がしているから」ではなく、「4年後にハワイ旅行に行きたいから」になりましたね。
飯村先生 すると、最初は「我慢するのは嫌」といっていた奥さんも節約に前向きになって、あっという間に月に2万円の食費を浮かせられるようになったのです。これが夢の力です。ぜひ、「貯金しておかなければ……」ではなく、前向きに貯金をしたくなるような夢を持ってみてください。どんどんお金が貯まるようになりますし、そうなることが楽しくもなってきますよ。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/櫻井健司