オンラインで視覚に訴える要素は意外に多い
前回は、人の印象は視覚に因るもの。「見た目」の影響が大きいとお伝えしました。では、「見た目」として視覚に訴える要素には、一体何が含まれるのでしょうか。
まず、目を見ながら話すことから、相手の「顔」に目が行きます。「顔」というと、すぐに目鼻立ちなど容姿を指していると思いがちですが、それだけではありません。表情も大切です。
眠そうな目では覇気が感じられず、信頼を損ないます。一方、口角を上げていると、相手への好感を伝えることができるのです。
そのほか頷く、首を傾げるなど顔の動きも含まれます。頷くことは、相手の話に対する傾聴や同意を示し、コミュニケーションを円滑にするうえで非常に効果的です。
そして、「髪型」も忘れてはいけません。伸びきったヘアスタイルは不潔でだらしない印象が先行します。しかも、一定層いる「見た目は気にしない」という人ですら、髪型、髭には敏感に反応するのです。
服装が発するメッセージ
次に視界に入るものというと「服装」が挙げられます。「服装」は、今日明日にでも容易に変えられるものです。しかも強いメッセージ性があり、あなたの印象を戦略化するのに欠かせないものなのです。
そもそも被服には、(1)体温調節の補助、(2)身体の保護、(3)社会活動への適合という、本来人間が生活するのに必要な3つの保護衛生機能があります。
この(3)は、寝る時には睡眠をとりやすいパジャマ、スポーツをする時には運動しやすいジャージやTシャツを着用するなど、生活活動を補助する役割のことです。
ですから、リモートワークでは、部屋で過ごしやすい服装でも間違いではないわけです。しかし、同じ部屋にいてもオンラインで外の人の視界に入るということは、社会的立場が生じるため、そこには社会規範が伴います。
1985年にカリフォルニア大学デービス校のカイザー教授が発表した「服装の社会・心理的3つの機能」とは、
- 自分のイメージを強化したり変容させたりすることができる「自己の確認・強化・変容」機能
- 相手に自身の心理や特性を知らせて、非言語でコミュニケーションをはかる「伝達機能」
- 相手に求められている印象に一致するように、服装を選ぶことでスムーズなコミュニケーションを促進するか、あるいはマイナスな印象を与えてしまいかねない「社会的相互作用の促進・抑制」
です。
つまり、服装が与える印象は、そのメッセージを読み取る相手次第です。相手の職業や立場、趣味趣向などを考えてみると、相手が求めている、あなたの立場に相応しいイメージが湧いて来ませんか?
相手の思いを尊重して戦略を立てることで、伝えたいことをより効果的に伝えることができるのですから、オンラインでも利用しない手はありません。
オンラインのシーン別 服の選び方
服装には「格」があります。まず大切なのは、相手に「格」を合わせることです。
相手が出社している場合には、スーツやジャケット着用の場合が多いはずです。それに対して、あなたが在宅でリモートワークの場合は、どのように対処すべきでしょうか。
相手が取引先の場合
相手の格に合わせるためには、スーツを着用してネクタイを締めることで対等になります。但し、相手ともう少し近しい関係であり、違和感を感じるようなら、ネクタイやジャケットの素材を変えてみてはいかがでしょう。
例えばジャケット、ネクタイどちらもウール素材にして、温かみを演出してみてはいかがでしょう。色目はビジネスのデフォルトはネイビーやグレー。ネクタイは迷ったらブルーをおすすめします。
相手が上司の場合
あなたがリモートワークであることを理解している上司なら、あえてスーツやジャケットを着用しなくてもよいでしょう。ただし、襟が付いていてもシャツは下着と同格です。襟付きのシャツにニットタイ、ジャケットの代わりにVネックのセーターを重ねてみてはいかがでしょう。セーターでシャツの部分を極力見せないことがポイントです。
相手が在宅でも、目上の方、客、初めてお会いする方の場合
あなたが日常スーツを着用する職業なら、相手が在宅であっても、迷わずネクタイを締めてスーツが相応しいです。
オンラインの服装で避けたいシャツやネクタイの「柄」
規則正しいくり返しの模様の服が、波打って見えたり、木目のようにうねって見えたり、目がチカチカして見え辛くなったりしたことはありませんか?
これはモアレ(フランス語moiré)です。干渉縞ともいいますが、細かいチェックや千鳥格子、ストライプ、ドットなどは要注意です。困ったことに無地を選んだつもりが、織り柄でモアレが発生することがあります。
この目がチカチカする現象をオンライン会議中、見続けることになったとしたらどうでしょう。会議への集中は損なわれますし、そのような苦痛をもたらすモアレを発生させている人に対して、不快感や嫌悪感を抱くかもしれません。
ですから、相手に不快な印象を与えないように、シャツやネクタイの柄や織り柄に細心の注意が必要になります。背景となるカーテンの柄にも注意しましょう。
このコロナ禍にBBCが「テレビでの通話は対面で話すより集中力が要る」「相手の意図を読み取るのも難しいため、余分なエネルギーを使う」とするフランスのビジネススクールの分析結果を紹介しました。
オンラインでは相手の負担を軽減するためにも、余計な装飾のないシンプルな服装で対面するという思いやりも必要ですね。