外車デビューにふさわしいクルマ特集の第3弾は、仏ルノーの最小モデル「トゥインゴ」だ。車名(トゥインゴ=Twingo)の由来は、「Twist(ツイスト)」「Swing(スイング)」「Tango(タンゴ)」という3つのダンススタイルを組み合わせた造語だというから面白い。

  • ルノー「トゥインゴ」

    ルノーの最小モデル「トゥインゴ」(本稿の写真は撮影:原アキラ)

イラスト入りのポップな外見

欧州Aセグメントに属するトゥインゴの初代は、1992年に「ルノー4(キャトル)」に入れ替わる形でデビュー。半円形のヘッドライトを備えたユニークな顔つきやホンダ「トゥデイ」に似た3ドアのかわいいモノフォルム、さらに、それによるユーティリティー性の高さが人気となって、2007年まで販売が続けられた。ちょっと実用的なFF2BOXスタイルになった2代目を経て、現行の3代目は2014年に登場。名車「5(サンク)」のデザインテイストを取り入れることで、再びおしゃれなルックスを身にまとった。2019年8月にはエクステリアや装備品などを変更したマイナーチェンジ版が登場し、今に至っている。

トゥインゴのボディサイズは全長3,645mm、全幅1,650mm、全高1,545mm。フィアット「500(チンクエチェント)」に比べてほんの少しだけ大きいボディは一見すると2ドアのように見えるけれども、こちらはリアのドアノブをサッシュに隠した、まごうことなき4ドアハッチバックモデルだ。しかも、エンジンをボディ後部に搭載して後輪を駆動する、「RR」(リアエンジン・リアドライブ)というユニークなレイアウトを採用している。

  • ルノー「トゥインゴ」
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  • 「トゥインゴ」は街に出かけたくなるクルマだ

グレードは、73PS/6,250rpm、95Nm/4,000rpmを発生する1.0リッター直列3気筒エンジンに5速MTを組み合わせた「S」(181.5万円)、92PS/5,500rpm、135Nm/2,500rpmを発生する0.9L直列3気筒ターボエンジンに「EDC」と呼ばれる電子制御のデュアルクラッチ式6速ATを組み合わせた「EDC」(204.5万円)、それに、キャンバストップのルーフを取り付けた「EDCキャンバストップ」(213.5万円)の3つがある。

今回、銀座から横浜市内までのルートで試乗したのは、フランス伝統のお菓子をイメージした淡い水色の「ブルードラジェ」がボディカラーのEDCキャンバストップ。最近のルノーのアイコンである、CシェイプのフロントLEDデイタイムランニングライトとリアのLEDランプを備えた小さくて愛らしい姿や、黒いサイドプロテクターに描かれたトゥインゴのロゴやイラストなど、遠くから見ても近くから見てもとても魅力的だ。

  • ルノー「トゥインゴ」
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  • サイドプロテクションには「トゥインゴ」のロゴとイラストが

小さくてもシートはしっかり

ドアを開けて目の前に現れるホワイトとダークグレイの2トーンフロントシートは、ハイバックのトップ部分が天井に届きそうなほど立派なサイズ。ルノーでは、シートは車体のサイズに関係なくきちんとしたものを採用するということが徹底されているようで、この辺りはイスにこだわるフランス車らしいところ。リアシートも、2名乗車で不満が出ないサイズを採用している。

  • ルノー「トゥインゴ」
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  • 大きなハイバック式フロントシートと、十分なサイズのリアシートを備えたインテリア

ガラスハッチのように見えるリアドアを開けると、ラゲッジルームの床面が少し高い位置にあるのがわかる。床下に49度の角度で傾けたエンジンを搭載しているのがその理由で、断熱フォームでできたカーペットをめくると金属製のエンジンカバーが見える。長く走っているとエンジンの熱がほんのりと伝わってくるので、冷たいものをずっと置いておくのはやめたほうがいいかもしれない。容量は174Lで、ちょっとした買い物や小旅行に適したサイズだ。

  • ルノー「トゥインゴ」
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  • 床下にエンジンを搭載しているため、床面が少し高い位置にあるラゲッジルーム。カーペットをめくると、エンジンカバーが顔をのぞかせる

通常のRRモデルだとフロントに収納スペースを備えているのだが、残念ながらトゥインゴにはない。試しにクルマのキーを使ってフロントグリルにあるロックを外すと、ボンネットがわずかに前方にずれるだけで、見えてくるのはバッテリーやエンジンの補機類だけという仕組みになっていた。

  • ルノー「トゥインゴ」

    グリルにあるロックをキーで外すと、ボンネットを前方にずらすことができる

RRの加速で高速への合流も不安なし

キーを回してエンジンをスタートさせ、碁盤の目のような狭い銀座の裏路地に侵入してみた。すると、トゥインゴはそこを全くストレスなく、スイスイと駆け抜けてくれるので嬉しくなってくる。小型ボディによる見切りのよさだけでなく、フロントに邪魔なエンジンがないおかげで、ハンドルが左右によく切れるからだ。仕様書に書かれた最小回転半径はたったの4.3m。4.5m前後の日本の軽自動車よりよく曲がる。銀座の街角に、コンパクトなスタイルがよく似合う。

  • ルノー「トゥインゴ」
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  • ドライバー眼前のシンプルな丸型単眼メーターとステアリング

新橋演舞場横の銀座料金所から首都高に。短い合流区間でも流れに乗るのは全く問題なし。たった92PSの0.9Lエンジンでも、RRのおかげで後ろから押し出してくれるような加速を見せてくれるので、まるで同じRRのポルシェ「911」のような感覚が味わえる(というのはいい過ぎかもしれない……)。

エンジンが後ろにあるメリットは、ドライバーから遠い位置にそれがあることによる「静粛性」という面にも現れる(逆に、後席では少し気になるかも)。ボディの四隅ギリギリにタイヤを配してあるので、高速での走りもどっしりとしていて良好だ。

天気が良かったので、横浜市内では天井を開けて走ってみたけれども、これも屋根空きモデルならではの楽しい体験だ。デュアルクラッチ式のトランスミッションは、出だしの時にギクシャクするものが多いのだが、トゥインゴの変速マナーはショックがよく抑えられていて、ファンドライブの気分を削ぐようなことがない。

  • ルノー「トゥインゴ」

    キャンバストップを開けたところ

  • ルノー「トゥインゴ」

    変速マナーのいいデュアルクラッチ式の6速ATシフトレバー

ダッシュボードの7インチタッチスクリーンはナビ機能がなく、スマホをつないでApple CarPlayやAndroid Autoを使うというもの。車載式の専用ナビは操作面がそれぞれ異なるが、スマホ連携ならどのクルマでも使い勝手が同じなので、これ一択で使っている方も多いとも聞くから、ここは問題なし。

200万円前後で買える、見た目も機能も走りも楽しいトゥインゴ。オススメできる1台だ。