第3回ではすぐキレる人への対処法をお伝えします。理由もわからず突然キレる人や些細なことで怒鳴る人などが職場にいると、周囲の人は少なからず影響を受けるものです。そのような「怒り方が下手な人」と上手に付き合うために、まずその人をよく観察することから始めましょう。
観察しよう「キレる人の『怒り以外の気持ち』に目を向ける」
「不器用に怒る人」に共通しているのは、感情を表現するのが苦手ということです。怒りを感情的にぶつけたり、物に当り散らしたり、言葉に出さなくても表情や態度で周囲に対してイライラをアピールするような人は、本当に相手に伝えたいことを表現できていない場合が多いのです。適切な表現方法を知らないというのもありますが、そもそも自分の気持ちに気がついていないこともあります。
怒りは第二次感情と言われており、その裏側には「心配」「不安」「悲しい」などの第一次感情が隠れています。突然怒りが噴出しているように見えますが、実は何らかのマイナス感情が形を変えて現れているものなのです。
例えば、部下のミスに対して必要以上に上司が怒鳴ったのは、「不安」や「困惑」「残念」「不満」などの気持ちが隠れていることがあります。同僚がいる前で上司に叱責されて部下が逆ギレしたのは、「恥ずかしい」「悔しい」「悲しい」そんな気持ちが伴っているのかもしれません。怒りはパワフルな感情のため、怒っている本人も周囲の人にも怒り以外の気持ちには気がつきにくいのです。
ですが、この第一次感情こそが、怒っている本人にとって「わかってもらいたい本当の気持ち」そのものなのです。そして、この本当の気持ちを理解することが、その人を理解することにつながります。人は「自分のことをわかってくれている」と感じさせる相手には、安心して心を開きやすくなるものです。
つまり、キレる人の第一次感情を理解し、寄り添うことができれば、信頼関係の構築につながります。キレる人に向かって「そんな言い方はないでしょう!」とこちらも応酬するのは、火に油を注ぐような行為です。「ご心配をおかけしてしまい申し訳ありませんでした」「あの対応は悲しく感じますよね」など、こちらが怒っている人の第一次感情に共感し、受容する態度を示せば、怒っている人の怒りも小さくなっていくでしょう。
観察しよう「キレる人の『べき』」
職場でよくキレる人がいたら、その人がどのような「べき」を持っているか観察してみてください。怒りの原因は自分の中にある「べき」が目の前で裏切られたときです。部下は上司の指示に従うべきと思っているから、指示通りに行動しない部下に対して腹が立ちます。職場で私語は慎むべきだと思っているから、プライベートの話で盛り上げる同僚にイラっとします。怒り方が下手なあの人は、どのような「べき」を持っているでしょうか? 顧客に対してのマナーに怒りやすいのか、書類の正確性に対してこだわりを持っているのか、よく観察してみると、その人の怒りポイントが見えてきます。
また、「提出期限を守るべき」といった「べき」を持っていたとしても、その「べき」の重要度は高いのか低いのか、具体的にどの程度の「べき」を持っているのかも観察してみましょう。「提出期限の前日までに出すべき」の人もいれば「1分でも提出期限を過ぎるべきではない」など、「期限を守るべき」でもその程度は様々。大事なのは、相手を変えようとしないことです。キレる人の「べき」を批判し、自分の「べき」を押し付けることではありません。相手の価値観を変えようとすればするほど、相手は意固地になるでしょう。相手にはどのような「べき」を持っているのか、なぜそのような「べき」を持つようになったのかその背景を理解するように務めてみましょう。
相手を観察することで「提出期限の前日までに出すべき」という怒りポイントが分かれば、最初から自分のタスク期限を2日前に設定していれば防ぐことができます。キレる人の「べき」を知ることによって、相手の怒りに巻き込まれず冷静に対応できるようになります。
「関わらない」選択肢もあっていい
不器用に怒る人の本当の気持ちやどのような怒りポイントを持っているかを理解し、良好な関係を築いていくための努力をしていくことも大切です。ですが、どうしても難しいときには「関わらない」という選択肢もあります。「いつか分かり合える日が来るのではないか?」「我慢すれば、そのうち理解してもらえるのでは?」「相手も成長するだろう」と淡い期待を抱きながら過ごしていくうちに、気がつけば自分がボロボロに傷ついてしまっていたというケースもあります。
キレる人と関わることで、心身ともにストレスになっているのであれば、自分一人で抱え込まないようにしましょう。信頼できる人に相談したり、なるべく関わらないように物理的に距離をとったり、異動願いを出す。など、自分の安心安全を脅かされているのであれば、勇気を持って「逃げる」選択をしてください。
次回は上手な怒り方とダメな怒り方について紹介したいと思います。