職場に蔓延する不毛な怒りとどう付き合うか? 第2回目では、怒り方が下手な「不器用に怒る人」にも、「不器用に怒る人」と関わる人にもやってもらいたい「イラッ」としたときのコントロール方法をご紹介します。
6秒やり過ごそう
仕事中に「イラッ」としても、絶対にやって欲しくないことがあります。それは、カーッと頭に血が上った状態のまま相手を責めるような言葉を言い放ったり、デスクの引き出しをバタンと勢いよく閉めたりという反射的な言動です。怒りを衝動的にぶつけてしまうあなたは、周囲にいる人の目に「感情のコントロールができない人」「大人げない人」と映るでしょう。相手が「不器用に怒る人」であれば、あなたの「反応」に「反応」します。まさに売り言葉に買い言葉状態です。口論が激しくなったり、本当に伝えたいことが伝わらず険悪な雰囲気になったり、不毛な怒りへと発展してしまいます。
前回お話をしたように、怒りの感情自体は悪いものではありません。その怒りにどう反応するのか、どのような態度や言動をとるかで、「不器用に怒る人」と「上手に怒る人」の違いになります。上手に怒る人になるためには、イラッとしても反射的な言動をしないように6秒やり過ごしてみてください。どんなに強い怒りでも6秒待てば、クールダウンします。気持ちが落ち着けば、理性的な行動や判断をとることができ、上手に怒ることができるようになります。
イラっとしたときのコントロール術(1)
6秒やり過ごすために試してもらいたいのが、自分の怒りに1~10まで点数をつける方法です。怒りは目に見えない漠然とした感情であるために、扱うのが難しいと感じます。そのため、自分の怒りの度合いを1(低い怒り)~10(強い怒り)まで数値化することで、自分の気持ちの変化を客観視することができます。
怒りと言っても、怒りの強さや状態は実に様々。不愉快に感じる、呆れるような些細な怒りから、激昂する、頭に血がのぼるほどの強い怒りまで幅の広い感情です。毎回同じように怒っているように思っていたとしても、その都度怒りの強さや状態は違うもの。怒りに点数をつけることで、自分が何に対してどのくらいの強さの怒りを感じているのか、自分の怒りの傾向やパターンに気がつくことができます。
例えば、もの凄く怒っていると思うことも、点数をつけてみると実は「3」で小さな怒りだったと気づくことがあります。怒りを客観的に捉えることで、いちいち腹を立てなくていいと思えるようになります。また、点数をつけ続けていくと、自分の怒りは提出期限やメールの返信、会議の時間など「時間」に関することが多いという特徴に気づくこともあります。あるいは、満員電車でイライラすることが多い場合、騒々しい会話に「7」の怒りを感じるのに対し、スペースをとる背負いリュックには「4」、ヘッドフォンからの音漏れには「1」と、同じ満員電車という状況でも、何について嫌だと思っているかが明確になります。
怒りを冷静に捉えることで、自身の理解が深まり怒りのコントロールが上手になります。最初はどうしても高い点数をつけがちになりますが、次第に低くなってきます。自分が何に対して強い怒りを感じるのかがわかれば、「相手に伝える」「関わらない」など、どうしたら点数を下げられるか、自分自身の対処の仕方が見えてくるでしょう。
6秒やり過ごすための方法は、この他にもあります。呼吸を整えることで気持ちと体をリラックスさせる「深呼吸」や、目の前の怒りから意識をそらすために、100から3の数字を引いていく「カウントバック」、爆発しそうな自分をクールダウンさせるために、その場から一時的に退却する「タイムアウト」等、自分にあった方法で反射しないように心がけましょう。
イラっとしたときのコントロール術(2)
6秒やり過ごす衝動のコントロールができたら、次のことを考えてみましょう。この怒りは、「本当に怒る必要のあることなのか?」それとも、「怒る必要のないことなのか?」ということについてです。アンガーマネジメントでは、この区別ができるようになることを目指していきます。「怒る必要のあること」「怒る必要のないこと」の見極めの判断がついていないため、怒りに振り回されてしまいます。
怒る・怒らないの境界線の判断基準は「後悔するかどうか」です。怒らないことで後から仕事上のトラブルや問題に発展する可能性があるもの、組織のルールを守らなかったとき、自身の尊厳や大切な価値観などを傷つけられて許せないときなどに怒らないと後悔します。反対に、怒って後悔するようなことであれば怒らなくていいことです。自分の機嫌や人によって怒る基準が変わるのではなく、いつでも誰でもどこでも同じルールで本当に怒る必要のあることだけに上手に怒れるようになれば、怒りの感情で後悔することがなくなってくるでしょう。
次回は、すぐキレる人への対処法を紹介します。