あなたは、家出をしたことはあるだろうか? 学校に行くのが嫌で、家で母親に怒られて……『家出』が頭をよぎった人、もしくは夜遅くまで家に帰らず親が探しに来たという人もいるかもしれない。そのように、『家出』と聞いて多くの人が幼い頃に記憶を遡らせたことだろう。しかし今、働き盛りの20~30代の『オトナ家出』が増加している。今回は、調査実績44年の老舗で人探しに定評のある「原一探偵事務所」の探偵に、『どのように家出人を捜すのか』を聞いてみた。

家出の調査は『スピードが命』

警察庁が昨年6月に発表した「平成28年における行方不明者の状況」によると、83,865人の行方不明者のうち、3,771人もの人が死亡しており、その多くが自ら命を絶っていると考えられる。しかも、届出の受理から2~7日で半数近くが死亡確認されているのだ。つまり、命を絶つことを目的に家出をした多くの人が失踪してからごくわずかな期間で自殺を遂げてしまうことがわかる。

  • 警察庁「平成28年における行方不明者の状況 所在確認」より

しかし、家出した人が自殺を考えていたかどうかは、周囲の人たちにはわからない。もちろん、発見や帰宅で存命が確認されることも多いのだが、万が一の危険性も十分にあり得るので、家出の調査は『スピードが命』なのだ。

家出調査のプロセス

では、実際に探偵たちはどのように家出失踪人の調査を行うのだろうか。そのプロセスについて順を追って見ていきたい。

1.依頼人への聞き込み
まずは依頼人に、『どのような状況で家出したのか』を詳細に聞き込みする。聞くのは、以下のような項目だ。

・氏名、生年月日、住所(過去の居住地も)
・写真(顔がはっきりわかるもの、全身のものなど複数枚)
・所有車の車種やナンバー
・携帯電話番号
・趣味や嗜好
・家出の動機と思われること
・精神疾患の有無
・置き手紙の有無
・思い出の土地
・交友関係
・所持品、所持金、クレジットカードの有無

2.調査場所を決める
聞き込みで得た情報をもとに、家出失踪人が行きそうな場所を考察し、それに必要な調査方法を決める。ここからは対象者によって調査が異なるものの、大きく自殺の危険性が高い場合、そうではない場合で異なるという。

<自殺の危険性が高い場合>
・自宅の捜索
・近辺の自殺の名所スポットの捜索
・パソコンや携帯電話のインターネット履歴の調査
※ネット履歴の調査は未成年の場合は必須、成人の場合は依頼者へアドバイスする

<自殺の危険性が低い場合>
・自宅近辺の捜索
・自宅~勤務地間の主要駅付近の捜索
・上記のホテルやファストフード店、インターネットカフェ など

上記は主要な捜索場所であり、この他にも「中学校の修学旅行で行った場所」など、かつて訪れて楽しかった場所に足を運ぶ人もいる、というように家出失踪人の情報に合わせて適した調査を行うという。

3.調査
調査では、実際に探偵たちが聞き込みをし、足をつかって調査場所をしらみつぶしに捜していく。

<自殺の危険性が高い場合>
山、川、崖や自殺の名所と呼ばれる場所など、家出失踪人が行きそうな場所はすべて探偵が実際に足を運んで調査を行う。高性能のライトはもちろん、探偵が立ち入れない場所を捜すためのドローン、転落して動けなくなっている人を見つけた場合に使用するロープなど、入念な装備を持参のうえ調査を行っているという。

<自殺の危険性が低い場合>
調査対象となる駅のホテルやインターネットカフェはすべて巡回して、家出捜索人がいないか、もしくはスタッフに聞き込みを行って捜索する。その際にチラシを配っておくことも重要で、聞き込み後に「見つけました」と連絡が入ることも多いという。

4.家出失踪人の発見
調査を経て、家出失踪人を見つけたときは、今にも自殺の危険性がある場合などを除き、探偵が直接、家出失踪人に接触することはない。速やかに依頼者に連絡し、合流してもらい、『依頼者が自ら捜し出した』という形で家出失踪人を説得してもらうのだという。このほか、危険な場所(山中や崖など)を歩行している場合は、警察に通報して保護を依頼することも多いとのことだった。

次回は、実際に身の回りの人が家出・失踪してしまった場合、どうしたらいいのかを解説していきたい。

原一探偵事務所

調査実績44年の探偵事務所。埼玉県・川越の本社のほか、全国主要都市に18拠点を構える。創業以来、"証拠のとれる調査会社"をモットーにし、長いキャリアを持つ調査員が大勢所属していることに加え、常に独自の調査方法の研究・開発を行い、同時にハイテク機器の導入や応用開発にも積極的に取り組むことで、満足度の高い調査を実現している。