コンサートを観に行った大阪で朗報を受け取る
二次面接通過の知らせは、大阪で串カツを食べているときに受け取りました。なぜ大阪にいたのかというと、大阪松竹座で行われていた関西ジャニーズJr.の舞台を観るためです。
前回大阪に来たのは2週間前。関西ジャニーズJr.のコンサートを観るためでした。そのとき大阪で受けた筆記試験も通っていたし、今度は倍率が一気に上がると言われている二次面接も通過。二次面接は大阪で受けたわけではなく、通過通知がたまたま大阪にいるときに届いたというだけなのですが、この段階で私にとって大阪は相当思い出深い土地になっていました。ある種のパワースポットのような感じです。松竹座の舞台でも、関西ジャニーズJr.の面々は、私のジンクスソング「バンバンッ!」を歌ってくれました。それを聴いて、おいしい串カツを食べて、うれしいこと楽しい事だらけの一泊二日でした。今思い返してみても、この遠征は就活の間の良い息抜きだったなぁと思います。
いよいよ三次面接!
さて、東京に戻ってきて、三次面接の準備です。二次面接は通過しているかどうか五分五分といった手応えだったので、実は三次面接について準備をあまりしていませんでした。なので、大阪で通過の連絡を受けてから慌てて『マスコミ就職読本』や「みん就」を見たり、昨年出版社を受けていた友人に連絡をとったりして、どんなことを聞かれるのか、どんな答えを準備しておけばいいのか、前日にバタバタと対策をまとめていきました。しかもいろいろと調べているうちに、「三次は二次よりも通過率が高いし、そんなに難しいことも聞かれない」という情報ばかり集まってしまい、「な~んだ、じゃあそんなに難しく考えなくても大丈夫じゃん!」と気楽な気持ちで面接当日を迎えることになりました。
前もって調べていた通り、三次面接は人事の方との面接で、大学は卒業できそうかとか、今現在他社の状況はどうかとか、事務的なやり取りがほとんどでした。面接自体も和やかな感じで進み、全く緊張せずに話すことができました。
和気あいあいと話すこと約15分。そろそろ終わりかな、と思っていた矢先に、ある面接官の方からこんなふうに聞かれました。
「就活留年してるってことだけど…どうして留年してまで就活を続けようと思ったの?」
他の質問と変わらず優しい口調でしたが、私はドキリとしてしまいました。一次、二次と面接を受けてきて、初めて留年のことを聞かれたからです。
面接中に改めて考えた出版社への想い
マスコミは他の業界と比べて「新卒カード」が重要視されないというのはよく聞く話ですし、実際に私が就活中に知り合った出版社勤務の方々も、既卒だったり留年してたり院中退だったり…と様々でした。だから私も、自分が留年していることについて負い目を感じることはほとんどありませんでした。しかし、やっぱりどこかで不安な気持ちをずっと抱えていたことも事実です。週に一度大学に行くと、久しぶりに会ったサークルの後輩から「あれっ、卒業してなかったんですか…!?」と気まずそうに尋ねられたり、同級生に今晩飲もう! と連絡をしてみても、「平日はちょっと仕事が…」と断られたり。就活とバイトとコンサートで予定をぎゅうぎゅうにしていたのも、何もすることがないとついいろいろ考えてしまって、孤独や焦燥感に押しつぶされてしまうかも…という、無意識の防御反応だったのかも知れません。
だからこの質問と、その次の「もし今年も出版社から内定がひとつももらえなかったらどうするの?」という質問は、二度目の就活開始から今まで走り続けてきた私に、一旦立ち止まって改めて自分を見つめ直すきっかけをくれたありがたい質問でした。
私は正直に答えました。一度目の就活では、どこからも内定をいただけなかったこと。でも、やっぱりどうしても出版社に入りたいこと。もし今年も駄目でも、最後の最後まで諦めず受けられる会社は全て受けて、何とか出版業界に潜り込みたいということ。最後まで粘ってそれでも駄目だったら、別の会社に就職したりアルバイトをしたりしながらでも、最終的には出版と関わる仕事に就きたいこと。まさか留年について聞かれると思っていなかったため、完結な回答も用意しておらず、かなり分かりにくい、たどたどしい回答だったと思います。でも、話しているうちに、自分の中にあった出版社に対する熱い想いがどんどん大きくなっていくのを感じていました。私は、面接官の方々に対して話すのと同時に、自分自身に対しても言い聞かせていたんだと思います。
「何度倒れても立ち上がって、絶対に出版社に入ってみせる! そのために私は留年したんだ!」
面接官の方々は、私の長々とした話もウンウンと丁寧に聞いてくださり、面接は最後まで和やかなムードのまま終わりを迎えました。あまりに和やかすぎて「これは受かったと見せかけて落とされるパターンでは…?」と不安になりもしましたが、結果は無事に通過。数日後に四次面接のお知らせが届きました。いよいよ四次面接…この会社は五次面接まであるので、最終面接の一歩手前ということになります。しかも、冷静に過去のデータを見てみると、ここ数年最終面接は受けた人全員が合格しているのです。つまり、四次は実質最終面接。既に倍率も200倍くらいのところまで来ていました。ひとつひとつの面接を積み重ねていくうちに、ついにこんなところまで…。面接の時間を予約するためにパソコンを開いた、その手は震えていました。
<著者プロフィール>
ぽんず
都内の私立大学文学部に通い始めて5年目。一浪・一留・ジャニヲタという女として崖っぷちスペックの女子大生。中学生の時にデビューしたてのNEWSに一目惚れして以来、アイドルヲタ歴は約10年。現在は、ジャニーズ全般、また女子アイドルや若手俳優の現場にも年平均50~60回足を運ぶ。熱しやすく冷めやすく思い込みの激しい牡羊座のO型。
(イラスト:womi)