V6の言葉に励まされる
「みんな、明日からまた仕事とか学校とか大変だと思うけど、皆が笑顔になれるように俺たちも頑張るから、一緒に頑張ろうねー!」
3月某日、私はA社の一次面接の前日に代々木第一体育館でV6のコンサートを見ていました。私たちくらいの世代にとってV6といえば「学校へ行こう!」。「学校へ行こう!」はV6が全国で頑張る学生を応援するという趣旨の番組だったのですが、そのせいか他のアイドルに比べて「応援してくれるアイドル」というイメージが強いです。だから、ふだんはアイドルが「皆毎日辛いことたくさんあると思うけど、僕たちがいるから頑張ってね」みたいなことを言うと「こっちが毎日辛いとか勝手に決めつけないでほしい…!」と思うタイプの私でも、V6のそういうメッセージは胸にすとんと響くことが多いのだと思います。上記した言葉はこの日コンサートの終盤にメンバーの井ノ原快彦くんが言ったものなのですが、これを聞いたときも素直に「イノッチがそう言うなら頑張る!!」と思いました。就活で心が弱っていたこともあって、いつもの何倍も胸に沁みました。
スタートダッシュでつまずく
さて、そんなアイドルの言葉に勇気づけられて、翌日私はA社の一次面接を受けました。面接官は2人いらっしゃって、どちらも男性だったのですが、向かって右の面接官がガタイも良く顔もちょっと怖そうで、面接室に入った瞬間思わず唾を飲みました。
面接が始まり、志望動機や自己PRなど基本的なことを話している間も、その面接官の方は無表情のまま書類に目を落とすだけで、私はちょっと焦りました。
1年目の就活での私の印象なのですが、一次面接は二次、三次に比べて難しいことは聞かれません。こんなこと話していいの? という、ほぼ雑談のようなことばかり聞かれることもあります。多分、一次面接の面接官は会社の中でも20代~30代の若い人、現場で第一線で働いている人が行うため、「一緒に働くことになったら会話がちゃんと成立するか、そもそも一緒に働いて楽しいか」という面を重視されているのではないかと思います。逆に言うと、難しいこと、業界の専門的なことを知らなくても、一次面接は「盛り上がったもん勝ち」なのです。
その考えに則(のっと)ると、私のスタートダッシュは失敗したように思われました。面接官の方が明らかに楽しそうではなかったからです。この重い雰囲気のまま15分続いたらどうしよう…。膝の上に置いた手をぎゅっと握り締めつつ、何とか自己PRをかまずに言い終えた私に、その強面の面接官はこう言いました。
「じゃあ、次の質問なんだけど…この資格の欄の゛カッパ捕獲許可証所持"ってさ、ウケ狙いで書いたの?」
カッパとアイドルの話で和やかムードに
うわー、スベった!!!!! この空気感の中でまさかそこを突っ込まれるとは思わず、つい「ハハッ」と乾いた笑いをこぼしてしまいました。確かにウケ狙いで書いたのですが、いきなりそこに、しかも全く面白くなさそうに言及されるなんて…。でも、聞かれたからには答えなければいけません。その資格を取った経緯や、他にESに書ける資格を持っていないけど空欄で出すのは嫌だったから、など、"カッパ捕獲許可証"にまつわるエピソードをひたすら話しました。しゃべっている途中にひらめいて、最後は「もしも週刊誌に配属されたら、カッパのスクープも取れます!」とよく分からないアピールもしました。
そしたら、今まで無表情だった面接官の方が、初めて笑ってくださったのです。「まさかカッパについて5分もしゃべれるなんて思わなかった」と言いながら。面白いというよりはあきれたような笑いでしたけど…。しかし、それがきっかけで場の空気が和んだことを感じました。
更に続けて「ESにアイドルについていっぱい書いてあるけど…ふだんどのくらいの頻度でコンサートに行くんですか?」という質問が。カッパについてべらべら話したことで冗舌スイッチが入っていた私は、正直に「3月は週イチで行く予定です。昨日はV6のコンサートに行きました」と答えました。イノッチの言葉に励まされた話もしました。「ああ、だからそんなにテンションが高いんだね~」なんて相づちを打たれて恥ずかしかったのですが、その後は出版業界の現状や会社に入ってからの目標などといった真面目な話も、終始和やかなムードで終えることができました。
「じゃあ最後の質問ですけど、今日の面接楽しかったですか?」
「はい、緊張しましたけど、会社のことから自分の趣味の話まで思う存分話せたので楽しかったです」
「僕も楽しかったよ、今日はありがとうございました」
最後にはこんな言葉まで頂くことができて、とてもうれしかったです。
また、別日に行われたB社の一次面接では、面接官の方がももいろクローバーZのファンだったようで、ももクロの話で盛り上がったこともありました。「最近僕みたいなおじさんでももクロのファンっていう人が多い気がするけど、どうしておじさんの心つかんでるんだと思う?」と聞かれたのです。ももクロも一時期ライブに行ったりCDを買ったりしていたので、その頃の思い出話をしました。やっぱりアイドルの話をすると場が和やかになるし、こっちのペースに話を持っていけるのでやりやすかったです。
「次はいつ何のコンサートに行くの?」
A社の一次面接が終わり、部屋を出るときに「あ、あともう一つ」と呼び止められ、「次はいつ何のコンサートに行くの?」と聞かれたのですが、そこも正直にこう答えました。
「来週、東京ドームでHey! Say! JUMPやSexy Zoneが出るコンサートに行きます」
「連続でコンサートなんだ(笑)」
またあきれたような笑い方でしたが、無事に一次面接も通過することができました。
<著者プロフィール>
ぽんず
都内の私立大学文学部に通い始めて5年目。一浪・一留・ジャニヲタという女として崖っぷちスペックの女子大生。中学生の時にデビューしたてのNEWSに一目惚れして以来、アイドルヲタ歴は約10年。現在は、ジャニーズ全般、また女子アイドルや若手俳優の現場にも年平均50~60回足を運ぶ。熱しやすく冷めやすく思い込みの激しい牡羊座のO型。
(イラスト:womi)