OB訪問で背中を押され、「アイドルヲタク」として採用担当者に覚えてもらおうと決めてから約1カ月後の2013年1月末。私は各企業のエントリーシート(ES)と向き合いうんうんうなっていました。
昨年のエントリーシートを再利用
実は、1年目の就職活動でもESにはそこまで悩みませんでした。出版社のESはとにかく枚数が多いのが特徴で、作文を課す企業もあり、慣れていない人はまずここでつまずくと言われているのですが、昔から文章を書くのが好きで、学生時代も趣味やサークル活動で文章を書き続けていた私には大して辛い作業ではなかったのです。通過率もまずまずでした。しかし、1年目に通過したESをそのまま2年目に使いまわしてもいいのか? という疑問がありました。採用側から「こいつまた受けに来てるよ(笑)」と思われたらどうしよう…と思ったのです。よくよく考えれば、大手出版社には毎年約4,000~5,000通くらいのESが送られてくる訳で、よほどのこと(例えば昨年最終面接まで残ったとか)がない限り企業側もいちいち覚えてないということは分かりそうなものですが…。しかし、志望動機や趣味なんて1年で変わる訳もないし、結局、下手に変更して落とされるよりは、昨年通過したESに多少修正を加えるくらいで出した方が良いだろうという結論に至りました。
話を盛りすぎるのは危険!
では、実際どこを変更するか。OB訪問では、とにかく「面接官に自分を印象付けろ」と言われました。志望動機でも、自己PRでも、趣味の欄でもいいから、とにかく人と違うことを書く。でも、変わったことを書きすぎても逆効果です。とりあえず昨年通過したESを見返してみると、志望動機の欄には「幼い頃から本が好きで『○○』という作品に影響されて…」というような素直な気持ちが、自己PRの欄にはサークルで行った活動内容が、そして趣味の欄には「読書」「旅行」と合わせてひっそりと「アイドル鑑賞」と書かれていました。
志望動機は全く個性的ではないけれど何一つ嘘のない素直な気持ちでしたし、変更する必要はないだろうと考えました。気になったのは自己PR欄です。1年目の面接で、何度か自己PR欄の矛盾点を指摘されて言葉に詰まったことを思い出したのです。就活生というものは、誰しも話を盛りがちです。本当は30人しかいないサークルなのに「100人規模のサークルの幹事長を務め…」と書いてしまうとか、半年しか働いてないのに「大学入学から3年間ずっと同じ所でアルバイトを…」とか。全くの嘘ではないので、自分をよく見せるためについつい書いてしまう…という経験、就活を経験した人には分かってもらえるのではないでしょうか。しかし、面接になると、そういう多少の綻びからどんどん矛盾を指摘されてしまうことがあります。私の場合は、それが自己PR欄でした。私はフリーペーパーを作るサークルに所属していたのですが、とにかく何でもあり! という感じの自由なサークルで、私も社会問題からお遊び企画まで手広く首を突っ込んでいました。ですが逆に、その一つ一つについて掘り下げることができなかったのです。
アイドルについてなら盛らずに書ける
エントリーシートには「社会問題からエンターテイメントに関することまで専門的な知識を手に入れ…」と、あたかも生き字引のような 感じで書いていたのですが、面接ではどれについても詳しく説明することができず、歯がゆい思いをしました。私的には「好奇心旺盛で多趣味」なところをアピールしたかったのですが、面接官の目には「主体性がない人」のように映っていたのかも知れません。そこで、2年目は自己PRも趣味の欄も全てアイドルにまつわることを書こうと思いました。とにかく矛盾のないように、一貫して「アイドルヲタクな自分」を出していこうと思ったのです。吉と出るか凶と出るかかなり微妙な賭けでしたが、アイドルを好きな気持ちは生半可なものじゃない! という自負があり、変に盛らずに書ける自信もありました。
アイドルについて語れる自信もありました。そこで、自己PR欄には「アイドル好きが高じてファン文化に関する文芸同人誌を作ったこと」を書きました。実はサークル活動とは別に、友人とこういうことをしていたのです。なぜそんな本を作ろうと思ったか、いくら売れたか、何部売れたか、できる限り具体的に書きました。とにかく自分の行いに一本筋が通っていて、矛盾がないことを示すことが大事だと思っていたので、そこは自己PR欄に限らず、志望動機も作文も「なぜ」それを行って「その結果」どうなったのかが分かるように気をつけました。そして趣味の欄には、「アイドル鑑賞」を一番先頭に書きました。これで「とにかくアイドルが好きで、学生時代もアイドルに時間を費やしてきた人」を表すことができたように思いました。もちろん出版社に出すESなので「最近読んだ本」「好きな映画」等エンターテイメントに関する欄には、アイドル以外にもできる限り幅広く興味がありますよ、ということをアピールできるように、色んなジャンルのものを書くことも忘れませんでした。
資格欄にも遊び心を
それからもう一つ困ったのが「資格」の欄です。お恥ずかしい話ですが、私は履歴書に書ける資格を持っていませんでした。運転免許も、TOEICも。しかし空欄は良くないと思い、1年目は高校生のときに取った「漢字検定4級」という書いても意味のないような資格を書いていました。もちろん面接では触れられずに終わりました。そこで、2年目は「カッパ捕獲許可証所持」と書くことにしました。数年前、それこそアイドル並にカッパに入れ込んでいた時期があって、その頃岩手旅行で手に入れたものです。これも吉と出るか凶と出るか、ふざけるなと怒られるだろうかと思ったのですが、試しに数社だけ書いてみることにしました。これで落とされたら、その後が〆切のESには書かないようにすればいいだけです。いつもESは夜中に書いて朝見直して提出する、というリズムで書いていたので、夜中のテンションに任せて書いてしまいました。
結果として、ESの通過率は1年目と変わらないくらいでした。しかし、1年目よりも素直な自分を表現できた自信がありました。面接官にESのどこを突かれても、矛盾なく話ができる気がしました。
<著者プロフィール>
ぽんず
都内の私立大学文学部に通い始めて5年目。一浪・一留・ジャニヲタという女として崖っぷちスペックの女子大生。中学生の時にデビューしたてのNEWSに一目惚れして以来、アイドルヲタ歴は約10年。現在は、ジャニーズJr.全般、また女子アイドルや若手俳優の現場にも年平均50~60回足を運ぶ。熱しやすく冷めやすく思い込みの激しい牡羊座のO型。
(イラスト:womi)