最終面接の結果が電話で来る

最終面接を受けた後、結果は今日の夕方に電話で伝えると人事の方から説明があり、私たちは解散となりました。私はリクルートスーツのままアルバイトに向かいました。そして夕方、バイト先で仕事をしていた私の元に、一本の電話がありました。

来た!!!!

私は社員さんに断って、電話に出ました。

「はい、ぽんずです」
『もしもし、A社の○○です。本日は面接にお越しいただきありがとうございました。選考の結果、ぽんずさんに内々定をお出しすることになりました』

思わず食い気味に「ありがとうございます!!」と叫び、電話口の人事の方に苦笑されてしまいました。就活を始めて1年と数カ月、ついに第一志望の会社から内定をいただくことができたのです。

こうして私の2度目の就活は、大成功で幕を閉じました。

就活の失敗と成功を通じて見えてきたこと

最近、後輩から「就活の相談に乗ってほしい」「どうしたら内定をもらえますか?」という連絡をよく受けます。この連載を書いている間も「どうして私は内定をもらえたのだろうか」と考えて続けていましたが、結局明確な答えは出ませんでした。なぜかというと、私は私自身の就活についてしか知らないからです。自分の経験談を話すことはできるけど、他人と比べてここが良かったとかここが駄目だったとかは分かりません。

ただ、私は1年目の就活で同じ会社を受けて失敗した経験を持っています。つまり、私は「就活に失敗した私」と「成功した私」どちらも体験していることになる。その二つの私を比較して見えてきたこと、というのも、少なからずあるように思います。

アイドルネタは面接を「楽しむ」ための手段

1年目の私と2年目の私を比べて、一番大きく違ったことは「面接を楽しめたかどうか」ということでした。もともと初対面の人と話をするのが苦手な私は、とにかく面接用にいくつも台本を用意して、それを一語一句間違えないように言うことに必死でした。でも、それだと面接が「会話」にならないんですよね。台本が完璧であればあるほど、相手に相づちを打つスキすらも与えない「スピーチ」になってしまいます。すると、面接官の方は面白くない。私も緊張しっぱなしで面白くない。

そこで2年目は、台本を何も用意せずに面接に挑みました。面接だからと気負わずに、普通に年上の人と会話をするような気持ちでいようと。すると、「会話」のキャッチボールが生まれます。面接官の方もきっと、どこにでもいるような就活生のつまらないスピーチを延々聞かされるよりは、どこにでもいる女子大生と会話をする方が楽しかったのではないかと思います。現に、2年目の就活では面接のたびに1回は面接官の方の笑顔を見ることができました。「今日は楽しかった」と言ってくれる方もいました。もちろん、相手が楽しければ私も楽しい。とにかく「緊張」や「つらい」という気持ちよりも、「楽しい」気持ちが大きければ、その面接は成功なんだと思います。

そして、アイドルの話は私にとって「楽しい」雰囲気づくりに必要不可欠なものでした。好きなものについての話なら、楽しく話しやすいからです。面接官の中にジャニーズ好きな方がいればジャニーズの話を、ももクロ好きな方がいればももクロの話を。ふだん居酒屋でアイドルヲタクの友達と話してるような感覚で話すことができます。もしも面接官の方がアイドルにまるで興味のないタイプだったら、コンサート遠征のときに学んだ「夜行バスで快適に過ごす方法」とか、アイドルそのものとは関係のない話をすることもあります。もちろん、この辺もあくまで「スピーチ」ではなく「会話」の一環なので、面接官の方が楽しくなさそうだったら早々に切り上げることもありました。

また、アイドル話はあくまで雑談の範囲内にとどめておくというのも作戦のひとつでした。「アイドルの追っかけを通じて得たコミュニケーション能力」とか「スケジュール管理能力」とかを自己PRとして言うことも可能ではあったと思うのですが、私にとってアイドルを見ることは趣味でしかないので、そこまで偉そうなことは言いたくありませんでした。なので、自己PRや学生時代頑張ったことなどはサークル活動やアルバイトの話、趣味について聞かれたときはアイドルの話、とメリハリをつけることは心がけていました。

社会人になるにあたって

もう1つ、OB・内定者訪問を通じて分かったことは、会社が新卒に求めていることは「素直さ」と「やる気」だということです。どんなにその業界についての知識を持っていても、それは所詮大学生レベル。実際にその業界で働いている先輩たちにかなうわけがありません。それよりも大事なのは、わからないことを素直にわからないと言える勇気と、それをわかるように努力することなんだと思います。

私もあと数日でついに社会人の仲間入りです。ちゃんと働けるかなとか、何か大失敗をしでかさないかなとか、正直不安は絶えません。でも、2度の就活を通じて学んだ「楽しさ」「明るさ」「素直さ」「やる気」これだけは忘れずに、仕事ができたらいいなと思っています。

そして、休みの日には、疲れた心を大好きなアイドルたちに癒やしてもらいたいなと、そう思うのです。


<著者プロフィール>
ぽんず
都内の私立大学文学部に通い始めて5年目。一浪・一留・ジャニヲタという女として崖っぷちスペックの女子大生。中学生の時にデビューしたてのNEWSに一目惚れして以来、アイドルヲタ歴は約10年。現在は、ジャニーズ全般、また女子アイドルや若手俳優の現場にも年平均50~60回足を運ぶ。熱しやすく冷めやすく思い込みの激しい牡羊座のO型。

(イラスト:womi)