木口亜矢は最近になって一気に存在感を強めたグラビアアイドルの一人だ。彼女はタレントとしては2000年頃から活動しており、そのキャリアはPerfumeばりに長い。2007年には日テレジェニックに選出されたとはいえ、どちらかというと長らくライバルたちの影に隠れた地味な存在であり続けてきた。それがいまや、コンビニで売られる雑誌のグラビアで彼女を見かけない日はないほどの活躍ぶりだ。
木口亜矢(きぐち あや) |
そもそも彼女のような正統派の美人はグラビアアイドルとして大成しにくい、というジンクスがあった。優香、小池栄子、MEGUMI、ほしのあき、そして南明奈に至るまで、グラビアの頂点に立った者たちは皆、一目見たら忘れられない個性的な顔立ちと肉体の持ち主だ。そうした中にあって、木口亜矢は「普通に」美人で「普通に」グッドシェイプだったので、まるで「80点主義の無難な優等生」と揶揄されたかつてのトヨタ車がポルシェやフェラーリの中に埋没しているような、そんな印象を受けたものだった。
そんな流れが変わり始めたのが、2008年に漫画『鉄腕バーディー』のタイアップ企画として主人公のコスプレ姿を披露した時だ。青いビニールレザーがボディに張り付くSF戦闘少女のコスプレが思いのほか良く似合い、ネットを中心に話題となった。また、この頃に相当ジム通いに精進したようで、もともとくびれていたウエスト周りが更に絞り込まれ、巨乳とくびれのコントラストが他の追随を許さない域に達していく。
そして今年の10月、彼女はとうとう初の映画主演を果たす。しかもその映画は奇才・井口昇のB級おバカ映画『ロボゲイシャ』だ。肉体改造を重ねてわきの下や尻から刀を出し、かつらからマシンガンを撃ち、下半身を戦車にして悪の組織と戦う。そんな荒唐無稽な役を嬉々として熱演する彼女の姿は実に潔く爽やかだった。
普通ではないコスプレ、普通ではない肉体、そして普通ではないコンテンツ。こうした持続的イノベーションを重ねることで、彼女は普通の美人から唯一無二の存在へと進化していった。たぶんすごく真面目な人なんだと思う。
木口亜矢はこれからも過酷なグラビア界をサヴァイヴすべく、ロボゲイシャのように自分だけの武器を増やしながら明るく戦い続けていくことだろう。
真実一郎(しんじつ いちろう)
サラリーマン、ブロガー。ケータイサイト『モバイルブロス』、雑誌『Invitation』などで世相を分析するコラムを連載。アイドルに関しても造詣が深く、リア・ディゾンに「グラビア界の黒船」というキャッチコピーを与えたことでも知られる。ブログ「インサイター」