ドラマ『嬢王 Virgin』(テレビ東京系)を見ていると、まるで原幹恵の自伝ドラマを見ているような錯覚に襲われる。
彼女は新潟県岩船郡神林村(現村上市)という田舎で育ち、女優になるという夢を抱いて2003年に「全日本国民的美少女コンテスト」に応募し、スリーサイズが上から94・61・88という奇跡の肉体が評価されて見事にグラビア賞を受賞。オスカープロモーションに所属して芸能界入りする。そこで総勢30人を超える大所帯のアイドルグループ「美少女クラブ31」に参加して徐々に頭角を現し、グラビア界に確固たる地位を築いて今日に至る。
原幹恵といえば大胆なX字型水着。他のアイドルだったら着るのを躊躇してしまいそうな、帯状の布が胸の前でクロスしただけの、乳房を下から支えるものが無い水着的ななにかを果敢に着こなせるのが彼女の強みだ。熱湯コマーシャルを満面の笑みで1分間耐え続けることが彼女なら出来るだろう。困難に耐えるその芯の強さで芸能界を"サヴァイヴ"する姿は、『嬢王 Virgin』で彼女が演じるキャバクラ嬢、杏藤舞の姿にかなりの率でシンクロする。
舞は高校を卒業したばかりの初心者キャバクラ嬢で、賞金1億円の獲得を目指して「嬢王グランプリ」に参加。毎週売り上げの悪い者が1名づつ脱落していくという過酷なサヴァイヴァル・ゲームの中、グラビアアイドルやAV女優が演じるライバルのキャバクラ嬢たちと女の戦いを繰り広げる。
もうこの設定自体が、AV女優にテレビ仕事を奪われ始めた現在のグラビアアイドル界の縮図といっていい。その中で原幹恵はやっぱり大胆な下着姿を惜しみなく披露し、周囲のセクハラや足の引っ張り合いにも耐えて笑顔で接客するという、健気な頑張りを見せている。まるで彼女がグラビアの現場で体験してきたことを再現しているかのようでいて、妙にリアリティーがある。
前作『嬢王』の主演を務めた北川弘美は、その後見事に女優に転身することに成功した。原幹恵もこのドラマを通して先輩の後に続きたいところだろう。そうした意味で『嬢王 Virgin』というドラマは、グラビアアイドルから女優へとステップアップする原幹恵の成長過程をハラハラしながら見守る、ある種のリアリティー・ショーとして楽しむべきコンテンツなのかもしれない。
真実一郎(しんじつ いちろう)
サラリーマン、ブロガー。ケータイサイト『モバイルブロス』、雑誌『Invitation』などで世相を分析するコラムを連載。アイドルに関しても造詣が深く、リア・ディゾンに「グラビア界の黒船」というキャッチコピーを与えたことでも知られる。ブログ「インサイター」