2011年という年は、「グラビアアイドルの時代」から「グループアイドルの時代」へと完全に移行した年だった。国民の誰でも三親等内にひとりは関連メンバーがいるのでは、と思えるほどに増殖したAKB勢が雑誌のグラビア紙面を占拠し、それを追う後続グループも後を絶たない。しかしそんな時代の流れに逆らうかのように、グループアイドルからグラビアアイドルに転身して輝きを増した突破者がいる。それが中村静香だ。

中村静香
1988年9月9日生まれ。京都府出身。O型。身長163cm、スリーサイズはB85・W60・H86。2003年、第9回全日本国民的美少女コンテスト出場で決勝に進出して話題を集め、美少女クラブ21の一員としてデビュー。グラビアアイドルとして活躍する。特技はアルトサックス、筋肉の名称を言えること。趣味は読書、スポーツ、筋トレ。 拡大画像を見る

13歳の頃から芸能活動を始めた彼女は、オスカープロモーションがモーニング娘。へのカウンターとして2002年に世に送り出したグループアイドル「美少女クラブ31」に参加し、中心メンバーとして活躍。その後、グループが活動休止になるとソロとなってグラビア活動を開始。まるで窮屈な制服を脱ぎ捨てたかのように、開放感あふれる水着でその魅力を開花させる。

グラビアアイドルとしては王道タイプの、どこか全盛期の乙葉にも似た童顔Fカップ巨乳でありながら、日本人離れした手足の長さはモデル並み。更に一見柔らかそうな肉体の下には筋トレで鍛えたしなやかな筋肉を隠し持つという、まさに"ベビーフェース・アサシン"。父親や兄の影響で高校生の頃からジム通いを続けていたほどの筋肉フェチらしい。その身体能力を生かして、女子プロレスをテーマとした深夜ドラマ『ここが噂のエル・パラシオ』(テレビ東京系)にも出演中で、逆エビ固めをキメられたり泥レスを披露したりと、まさに体当たりの好演技を披露している。

彼女がグラビアで飛躍することが出来たのは、やはり着用する水着面積を小さくしたためだろう。ビキニやパンツを眼帯ほどの僅かな繊維にしてしまう攻めの姿勢は、「グラビア女王」吉木りさに肉薄する。11月に発売された写真集『HUG』(学研パブリッシング刊)では、ピリオドの向こうを目指したかのような大胆衣装にチャレンジしていて素晴らしい。 しかしながら、官能的かつ完璧なポージングに天賦の才を発揮する吉木りさとは異なり、中村静香のグラビアは徹底的に「自然体」だ。大胆で攻撃的な衣装にも関わらず、そのたたずまいも表情も、癒し系と言っていいほどに気負いが無く、彼女にしかできない伸び伸びとしたグラビア表現を確立することが出来ている。グループアイドル時代に苦労した彼女ならではの、ある種の悟りがそうさせているのかもしれない。

アイドル界は今まさに戦国時代。グループアイドル達による、血で血を洗う緊張感あふれるサバイバル状況の真っ只中だ。そんな中で、組織から解放された自然体の笑顔で荒野を力強く進む中村静香のグラビアは、まるで『北斗の拳』の「雲のジュウザ」のように清々しい。童顔巨乳はここまで進化した。

真実一郎

サラリーマン、ブロガー。『SPA!』(扶桑社刊)、『モバイルブロス』(東京ニュース通信社)などで世相を分析するコラムを連載。アイドルに関しても造詣が深く、リア・ディゾンに「グラビア界の黒船」というキャッチコピーを与えたことでも知られる。著書に『サラリーマン漫画の戦後史』(洋泉社刊)がある。ブログ「インサイター