「朝のイケメンパラダイス」として数々の人気男優を輩出してきた平成仮面ライダーシリーズ。しかし現在放映中の最新作『仮面ライダーフォーゼ』で最も輝いている出演者は、イケメン男優陣ではなくヒロインの城島ユウキを演じる清水富美加である、と断言したい。

清水富美加
1994年12月2日生まれ。東京都出身。2008年にモデルとしてデビュー。ファッション誌『ラブベリー』の専属モデルを務め、2010年に「ミス週刊少年マガジン」に選出。以降、ドラマ『熱いぞ!猫ヶ谷!!』(メ~テレほか)、『仮面ライダーフォーゼ』(テレビ朝日系)に出演するなど、女優としても活躍している。趣味は、服や靴のデザイン、日本庭園の写真集をみる。特技は、三点倒立、円周率を100桁言えること 拡大画像を見る

城島ユウキは、放課後にJAXA(宇宙航空研究開発機構)に入り浸るほどハードコアな宇宙オタクの女子高生。学園の女王を選ぶミスコンに出場した際も、小惑星探査機「はやぶさ」のコスプレをして、「やあ! 僕は、はやぶさ君だよ! 広い宇宙めがけて出発だ!!」と歌い踊る変わり者だ。

しかしとにかく天真爛漫で、日陰者としての屈折は微塵も感じさせず、コズミックエナジー(宇宙パワー)で変身する仮面ライダーフォーゼを嬉々としてサポートしている。第一話で、主人公が初めて仮面ライダーフォーゼに変身しようとしたとき、彼女が「変身!って言って、レバーを下げて!こう!」と笑顔で言って自分が考案した変身ポーズを真似させるシーンは、40年に渡る仮面ライダーの歴史をひっくり返すほどの屈指の名場面だった。この特撮ドラマを根っから明るいムードにしているユウキの役柄には、演じている清水富美加自身のはじけたキャラクターがかなり反映されているという。

清水富美加は、2010年にグラビアアイドルの登竜門「ミスマガジン」のメンバーに選出された、いわばアイドルエリートだ。しかし「グラビアアイドル氷河期」の煽りを受けて、雑誌のグラビアをほとんど飾ることが出来ずに2010年を終えている。目立った活躍と言えば、『熱いぞ!猫ヶ谷!!』(2010年)という、カルト過ぎるにも程があるお色気学園ドラマにゲスト出演したくらい。しかもこのドラマで彼女が演じたのは、苔を愛でる慎ましい大和撫子という役で、素の彼女とは正反対。だからなのか、水木しげるの漫画に出てくる魂を抜かれたサラリーマンのような覇気のない表情が印象的だった。

その点、今回の『仮面ライダーフォーゼ』は、まさに清水富美加にとっての当たり役といえるだろう。長い手足を大きく使い、豊富な顔芸を駆使して、コメディエンヌとしてのポテンシャルを存分に開花させている。ものすごくとってもひじょうにすばらしくキュート。今後の彼女の女優人生の中で、果たしてこの城島ユウキを超える役が得られるのかどうか心配になるくらいだ。たまにハイテンションな蒼井優に見えるときもある。

ところでこの『仮面ライダーフォーゼ』というドラマは、アメリカの学園ドラマを直輸入したキャラクター設定が大きな特徴となっている。ジョックス(体育会系のいじめっ子)、クイーン(学園女王のチアリーダー)、サイドキックス(女王の取り巻き)、ギーク(文化系の負け組)、ブレイン(ガリ勉)といった明確な役回りとヒエラルキーを与えられた学生たちが、グループごとに分断した学園生活を送っている、という前提で物語は始まる。

しかしながら、そんな閉塞した学園組織に日本土着のヤンキー(主人公)が殴り込み、熱いハートで皆を惹きつけ、味方に付けて突破していくという展開は、アメリカ学園ドラマよりもむしろ『サラリーマン金太郎』を彷彿させる。

『サラリーマン金太郎』がバブル崩壊後の不況に喘ぐ日本に現れたのが必然だったように、閉塞した学園を果敢にタフに切り開くヒーローと底抜けに天真爛漫なヒロインは、不景気と大震災で意気消沈した日本に現れるべくして現れた存在だといえるだろう。

真実一郎

サラリーマン、ブロガー。『SPA!』(扶桑社刊)、『モバイルブロス』(東京ニュース通信社)などで世相を分析するコラムを連載。アイドルに関しても造詣が深く、リア・ディゾンに「グラビア界の黒船」というキャッチコピーを与えたことでも知られる。著書に『サラリーマン漫画の戦後史』(洋泉社刊)がある。ブログ「インサイター