AKB48のブレークに端を発する空前のグループアイドル・ブームの到来によって袋小路に追い詰められ、壊滅寸前のグラビアアイドル界の中で、窮鼠(きゅうそ)が猫を噛むかのごとき際立った展開を見せる一群がいる。それがセクシー☆オールシスターズだ。

写真上はセクシー☆オールシスターズが
7月21日にリリースしたDVD付きCD『セクシー☆甲子園』(4,200円 販売元:ポニーキャニオン)。写真下は「爆乳ヤンキー」のメンバー(左からMAO、手島優、北條まみ)

セクシー☆オールシスターズとは、手島優や助川まりえを中心として結成された、歌って踊るグラビアアイドル企画ユニットの総称だ。「爆乳三国志」、「爆乳ヤンキー」、「胸の谷間にうもれ隊」、「爆乳甲子園」などなど、各ユニットの名前を見るだけでも、その「窮鼠感」を感じとってもらえるだろう。歌詞も乳にフォーカスしたものが多く、そのコンセプトは徹底されている。

キワモノに見える彼女たちだけれど、音楽自体のクオリティは決して低くない。おバカ歌謡を真摯に追求した結果、追い詰められた者たちにしか表現できない奇妙な迫力がある。特に「胸の谷間にうもれ隊」は、80年代のおニャン子クラブの良質なパロディになっていると思う。AKB48では絶対に歌えない歌詞だ。

グラドル黎明期に活躍した雛形あきこや優香、乙葉、青木裕子(アナウンサーでは無い方)たちは、巨乳を売りにしつつも、その魅力を巨乳だけにフォーカスされて語られることを拒むようなところがあった。しかしセクシー☆オールシスターズは違う。歌も踊りもトークも水着もOKなAKB48というモンスターと対峙した時、グラビアアイドルに残されたアイデンティティはもう「巨乳」だけだった、という厳しい現実に向き合わざるを得ない。

巨乳というコアヴァリューに特化して一点突破しようとする彼女たちのある種の覚悟は、銃が普及した幕末に剣力で武士の魂を貫いた新撰組を彷彿させる。セクシー☆オールシスターズは、滅びゆくグラビア界に現れた新撰組なのだ。勝ち目の低い闘いに挑む彼女たちの雄姿は、どこか感動的ですらある。

真実一郎

サラリーマン、ブロガー。『SPA!』(扶桑社刊)、『モバイルブロス』(東京ニュース通信社)などで世相を分析するコラムを連載。アイドルに関しても造詣が深く、リア・ディゾンに「グラビア界の黒船」というキャッチコピーを与えたことでも知られる。著書に『サラリーマン漫画の戦後史』(洋泉社刊)がある。ブログ「インサイター