グラビアアイドルが歌手デビューする場合、過去のアイドル歌謡曲を3分でアレンジしたような激安即席トランスを歌うのが最近のトレンド。しかし杉本有美のデビュー曲『ハルコイ』は、本人が作詞、DEPAPEPEが作曲を手掛けた、久々に魂のこもった単体アイドルソングだった。
ミュージックビデオも丁寧に作られている。ハート形のクッション、熊のぬいぐるみ、ピンクのベッドカバー、シャボン玉、風船といった、これぞアイドルというアイコン群に囲まれて、パステル調の世界観の部屋の中、春の到来を感じさせる軽やかなポップスを歌う姿は、まさに王道。歌唱力も及第点は十分にクリアしていると思う。もちろんフトモモも見せてくれている。
もともと『ピチレモン』や『bis』といった少女向けファッション雑誌のジュニアモデルとして活動していた彼女は、『週刊プレイボーイ』や『週刊ヤングジャンプ』などを中心にグラビアアイドルとして注目を集め、2008年に『炎神戦隊ゴーオンジャー』のゴーオンシルバーとして大躍進を遂げた。ゴーオンジャーの番組内では、共演していた逢沢りな、及川奈央とともにアイドルユニット「G3プリンセス」を結成し、曲も振付も80年代を彷彿させるブリブリのアイドル歌謡を披露している。今回のデビュー曲も同様の企画感たっぷりなレトロ路線かと思っていたので、胃にやさしいウェルメイドなポップスだったのが少し意外だった。
『ハルコイ』は確かに佳曲だけれど、杉本有美の最大の魅力は他を寄せ付けない「健康美」なので、もう少し弾けた曲も聴いてみたいし、瑞々しいグラビアももっと見たいし、演技でもまたアクションを見せてほしい。というわけで、『片腕マシンガール』で知られる井口昇が総監督を務め、杉本有美がヒロインを演じるという謎のミュータント・ガールズ・アクション映画『戦闘少女 血の鉄仮面伝説』(5月公開予定)には秘かに期待している。本当は『チャーリーズ・エンジェル』みたいなコンテンツに出てほしいんだけど…。
真実一郎(しんじつ いちろう)
サラリーマン、ブロガー。ケータイサイト『モバイルブロス』、雑誌『Invitation』などで世相を分析するコラムを連載。アイドルに関しても造詣が深く、リア・ディゾンに「グラビア界の黒船」というキャッチコピーを与えたことでも知られる。ブログ「インサイター」