「確定拠出年金の相談をしたいのですが、実は……?」
iDeCo(個人型)に限らず企業型も含め確定拠出年金について相談したいという人も増えているのですが、「実は…」の後にどのような相談、悩みを言う人が多いと思いますか? 正解はこちらです。

「実は、スタートして以降、一度もログインもせず、見直しをしていないのですが。」と申し訳なさそうに相談希望される人が非常に多いのです。

「大丈夫ですよ。多くの人が同じような状況ですし、気長な運用なので、そんなに頻繁に見直しをしなくても」と回答した後に、様々な見直しに関する考え方や方法をアドバイスするようにしています。

  • iDeCoの見直しをしたことはありますか?(写真:マイナビニュース)

    iDeCoの見直しをしたことはありますか?

既にiDeCoを始めていて、「自分も同じような状況だ」という人もいるかもしれません。「必ずこうしてください」という見直し方法はありませんが、できれば定期的に見直しを行うという意識を持った上でiDecoと向き合ってください。

まずは現状分析から

では、具体的に見直しを行うにはどのような方法があるでしょうか。まずはこれまでの拠出額がどのような状況になっているか確認しましょう。例えば35歳の田中さんが月々2万円拠出しているとします。以下のように積極的な運用を行う世界株式ABCファンドを50%、定期預金を50%選んでいたとします。

  • 35歳の田中さんの運用

    35歳の田中さんの運用

ちょうど3年経過(田中さん38歳)した段階で今回見直しを行ってみると、以下のようになっていました。月額2万円で3年間拠出したため、拠出金は累計で72万円に達しています。(諸費用は考慮していません)

  • 3年経過した田中さんの運用結果

    3年経過した田中さんの運用結果

世界的に株式市場が不調だったのでしょうか、世界株式ABCファンドが大きく拠出額を下回っています。一方で、定期預金は超低金利のため、3年間でわずか50円しか利息が付いていませんが、当然元本は確保されています。

スタートして3年。田中さんはまだ38歳です。景気は変動するため悪い時もあります。よって、この3年は冴えない展開でしたが、今後は大きく株価が上昇すれば、このマイナスもすぐに取り返すことになるでしょう。マイナスになっているからといって悲観的になる必要はないと思います。こういう時は初心に立ち返ることも重要です。

なぜ世界株式と定期預金の半分半分にしたのか? おそらくは「半分は攻め、半分は守り」といった位置づけで選んでいる可能性があります。「何か見直しをしなければ。」という意識も大切ですが、見直しをすることで当初の計画を振り返る機会にもしてください。

同種のファンドと比較する

とはいえ、特にiDeCoを通して初めて投資をする人は多少のマイナスでも気になるところです。その際にぜひ行っていただきたい見直し方法は同種のファンドと比較するということです。

今回は「世界株式ABCファンド」を選んでいますので、同様に「世界株式」に投資しているファンドがiDeCoの商品ラインナップにもいくつかあるはずです。そういったファンドがこの3年間、どのような運用成果になっているのか、それぞれの運用成果を「月次レポート」といった報告書などで確認できますので、ぜひ比較してみてください。

それぞれのレポートの見た目は異なりますが、「過去の騰落率」などを見ることでこの数年のパフォーマンスを確認することができます。

相場全体が軟調で冴えない展開だったのであれば、同種ファンドも同程度のマイナスになっているでしょう。その場合はそれほど気にする必要は無さそうです。一方、同種のファンドと比較して「世界株式ABCファンド」の下落率が際立って大きい場合は、違うファンドに見直すことも検討したいところです。

見直し方法は配分変更とスイッチングの2つ

「世界株式ABCファンドは同種のファンドと比較してパフォーマンスが悪い。見直しをしたい」という場合はどのような見直しがあるでしょうか? 1つは「配分変更」もう1つは「スイッチング」です。

配分変更とは、今後の積み立てファンドを変更することです。今まで「世界株式ABCファンド」に1万円を積み立ててきましたが、この金額を減らす、またはゼロにして、他のファンドに切り替えることをいいます。

もう1つの方法の「スイッチング」は既に買い付けてきた「世界株式ABCファンド」を一部または全部売却して、その売却代金で他のファンドを購入することをいいます。もう一度整理しますと、今後の方針を変更することを「配分変更」、今まで積み立ててきた残高を見直すことを「スイッチング」です。

医療現場をたとえにしますと、「配分変更」や「スイッチング」はメスを入れる手術に該当します。手術することで病気が治ることも期待できますが、副作用が生じるかもしれません。何もせずに自然治癒を期待する方が良いかもしれませんよね。

よって、見直しをしたからといって必ず良い方向に進むとは限りません。

年齢に応じた見直しを

「手術をすべきかどうか。自然治癒も期待できるのでは?」
医療に例えましたが、判断に迷う時もあるでしょう。よって、最後に効果的な見直し方法をお伝えします。それは「年齢に応じてリスク許容度を考慮しながら見直しをする」ということです。

iDeCoを行うことは数十年かけてゆっくり種をまき、木がすくすくと育ち、そして果実を実らせるかのように、大きく資産を育てていくわけです。30代や40代はいわば種まき時期に該当するため、多少の変動は目をつぶり、大きく成長しそうなファンドに投資を続けていく。

50代にもなると、立派な樹木となり、果実を実らせているかもしれません。そんな状況で台風に遭遇してしまっては大変なことになってしまいます。

台風というのは世界的な大不況や金融危機などがそれに該当します。よって、50代以降は少しずつ安全資産に「配分変更」しながら、リスクの高いファンドからリスクの低いファンドに「スイッチング」をするという見直しが1つの方法だと思います。

相場はプロでも外すことがあるので、それを当てにいくのは難しいのですが、年齢に応じて、少しずつリスクを減らしていくというのは、iDeCo対象商品のラインナップそれぞれの特徴を把握しておくことで可能です。

私自身も30代からiDeCoを行っていますが、立派な樹木に育ってほしいという希望からアジアなど成長国を中心としたファンドに毎月コツコツ投資をしています。

55歳ぐらいから「配分変更」や「スイッチング」をして定期預金などの安全資産を増やしていくプランを立てています。60代以降、たくさんの果実に囲まれていることを夢見ています。

著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)

内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。