30年近くコツコツ積み立てていく上でどのようなファンド(投資信託)を選ぶか、どのような見直しを行うかによって受け取る金額が大きく変わります。

例えば月2万円(年間24万円)iDeCoに加入したとして、30歳から60歳まで30年間積み立てた場合、年利回り1%と2%では前者がおよそ816万円、後者が約933万円と100万円以上運用成果が違います。できれば年利2%で運用したいものですが、期待リターンが高くなるほど、当然リスクも高くなるため注意が必要です。

  • ファンドを選ぶ際に注意したい専門用語は?

お勧めのファンドは?

では、どのファンドを選べば良いでしょうか?
これは大変良く聞かれる質問ですが、「その人によって異なります。」というのが答えになります。

例えば、年利1%の利回りで「大満足」という人もいれば、「不満」と感じる人もいるでしょう。どんな老後を過ごしたいか? 親からの財産が期待できるのか? などその人のライフプラン次第というところもあります。よって、「このファンドが良い」ということはありませんが、皆さんそれぞれに適したファンドを選べるように、最低限、iDeCoで良くみかける専門用語を確認しておきましょう。

運用一覧でよく使われる専門用語

以下はiDeCoをはじめる際に見かける運用商品のリストです。多くの場合、元本確保型として預金や保険タイプの商品もありますが、それらを除くと、残りは以下のように投資信託(ファンド)となります。

  • iDeCoをはじめる際に見かける運用商品のリスト

特に投資信託の購入経験のない人は少し難しく感じ、どれを選べば良いか分かりにくいと思います。まずは商品分類を見てください。今回は「世界債券」と「国内株」そして「世界REIT」の3本が記載されてありますが、通常、リスク&リターンは以下の順となります。

・債券⇒株式
・国内⇒国外

債券は国や企業がお金を借りるために発行されるもので、あらかじめ利率や満期が決まっているため比較的安全です。よって、株式の方がハイリスク、ハイリターンといえます。 一方、同じ債券や株式でも国内外の違いもあります。この場合は通常、国内よりも国外の方が外国為替変動の影響を受ける分、リスクが高いといえます。

なお、REITは不動産投資信託のことで株や債券ではなく、オフィスビルや商業施設などに投資をしている投資信託です。株式や債券とは少し違うタイプの資産クラスとして位置付けられますが、リスク&リターンは株式と同様、一般的には高めです。

リスクとは値段などが変動することを意味し、変動するからこそリターンも期待できます。「リスクが低くリターンが高い」ものは残念ながら、ありません。リスクとリターンの高さは連動することも踏まえておきましょう。

インデックスとアクティブの違い

投資信託を選ぶ上で重要なチェックポイントがインデックスとアクティブの違いです。上記では世界債券の投資信託がインデックスとなっていますが、インデックスは株価指数等(ベンチマーク)に連動することを目的としているのに対し、アクティブはそれらを超過するリターンを狙いにいきます。

つまり、インデックスは「平均点」を目標にしています。例えば、多くの人が知っている指数が「日経平均」だと思います。日本の上場会社を代表する225銘柄の平均株価が毎日公表されていますが、日経平均をベンチマークにしたインデックスファンドとなれば、おおよそ日経平均と同じ動きとなりますので、非常に分かりやすいです。

アクティブファンドは学校のテストを例え話にしますと、「平均点」ではなく「優秀な点数」を期待して特別クラスを組成するイメージです。よって、生徒の選抜などに手間暇をかけるため、平均点よりも高得点が期待できます。ただし、必ずしも平均点よりも優秀な点数が取れるわけではありません。よって、「日本株のアクティブファンド」が「日経平均インデックスファンド」に運用成果が負けているということも考えられます。

バリューとグロースの違い

上で見ましたアクティブファンドは、それぞれの投資対象の特長を探り、より高い運用成果を狙います。その運用方針の違いによって、バリューやグロースといった表現が使われます。

バリューは「価値」という意味で割安な銘柄を購入して投資収益を上げることをコンセプトにしたものです。例えば、自動販売機での缶コーヒーが130円でも、スーパーマーケットなどでは98円で販売している場合があります。こういった状況を、おそらく「お得」とか「割安」という表現を使っているのではないでしょうか?

株式も同様で、企業の業績、財務内容などを分析すると日々取り引きされている株価が「割安」と思われる局面があるため、「バリュー投資」という表現は、そういった銘柄に積極的に投資することを意味します。

一方、グロースは「成長」という意味です。これから高い成長が期待できる銘柄に投資をするというコンセプトです。よって、アクティブファンドを選ぶ場合は、どういった方針で運用しているのか? 皆さんの考え方と合っているか? 事前に確認しておきたいですね。

信託報酬と信託財産留保額

信託報酬は年間維持費です。投資信託はプロにお願いして、株式や債券などをパッケージにして運用してくれるため、それに対する手数料と考えてください。日々、投資信託の価額から差し引かれているため、信託報酬も運用成果に影響します。

上のサンプルでお分かりのように、一番上のインデックスファンドは0.3%と他より低めとなっています。一方、アクティブファンドの2本は1%を超えています。これからも分かるように通常、アクティブファンドは「一手間」加えている分、信託報酬が高くなりがちです。

「高い維持費を払って、それに見合う成果が上がっているのか?」同じ商品分類のインデックスファンドと比較すると分かりやすいです。こういったことがチェック項目となります。また、信託財産留保額は発生しないものが多いのですが、今回の事例では世界REITファンドのみ0.3%徴収されるようになっています。この信託財産留保額は信託報酬同様コストではありますが、やや位置付けが違います。

多くの投資家でお金を出し合い運用している投資信託は日々、さまざまな人が売り買いを繰り返しています。よって、ある人が「解約したい」と言った場合、その人の口数に応じて、株式などを売却する必要があり、その際にコストが発生します。このコストを負担してもらう役割を担っているのが「信託財産留保額」です。

まさに、「立つ鳥跡を濁さず」のごとく、「あなたが解約する際にかかるコストを自分で負担してください。」という仕組みであるため、決して運用会社などが収益にしているものではありません。信託財産留保額がない場合は、その分がファンドの価額に影響することとなるため、長期的に特定のファンドを持ち続ける人にとっては、むしろ信託財産留保額がかかる方が良いかもしれませんね。

車や電化製品を買う時のように

車や電化製品を購入する際、ワクワクしながら、いくつかパンフレットを並べ細かいスペックを比較した経験がある人も多いのでは?

iDeCoの投資商品も「難しそうだ」と眉間にしわを寄せることなく、「上手に選ぶことで豊かな老後が待っている!」とワクワクしながら、どれを選ぶか向き合ってください。積極的にファンド選びをしていますと、知らず知らずに専門知識にも慣れていきますよ。

著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)

内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。