iDeCoを始めるということは、投資を始めるということとほぼ同じ意味になります。多くの人が「節税効果」に注目しがちですが、ぜひ一度、「投資の基礎」をマスターしてください。決して難しいことではありません。
30代の人にとっては30年程度も続けていくことになるため、投資の原則を把握しているかどうかで、大きな差につながるかもしれませんよ。
投資の3大原則
今回は以下3つの原則を紹介します。特にiDeCo加入者にとっては、必ず押さえておきたい大原則です。
・分散投資
・長期投資
・時間分散(ドルコスト平均法)
分散投資
皆さんは好きなスポーツは何ですか? 野球やサッカーなど、団体スポーツに目を向けてもらうと分かるのですが、1つのチームは様々な特徴の違う選手で構成されていますよね。 足の速い人、パワーのある人、右利き・左利きなど。1人がエラーした時は、違う選手がカバーすることもできます。これがチームワークで、上手に機能しているチームが勝利します。これと同じことが投資にもいえます。
円高の影響を受け、赤字に転落した会社もあれば、円高を追い風として絶好調の企業もあります。こういったタイプの違うものを組み合わせることでリスクを軽減することにつながります。
とはいえ、自分自身で分散投資をするのは難しいかもしれませんが、そこは心配ありません。iDeCo加入者は複数の投資信託(ファンド)から積み立て対象を選ぶことができます。この投資信託こそ、専門家が分散投資をしてくれている金融商品なのです。
日本株の投資信託、世界各国主要な株式が入った投資信託、アジアなど成長国の株式が入った投資信託などがそれに該当します。
またバランスファンドと呼ばれるものは株式や債券といった資産クラスごとに、そして国内外を投資対象として、バランスよく組成されています。バランスファンドの中でも積極的に収益を狙うものや安定的なパフォーマンスを狙うものなど様々です。
「このチームは強いかな?」とチームや選手を分析するように、1つひとつのファンドの特色を把握しながら、お気に入りの1本を選んでもいいですし、複数のファンドに投資することもできます。
長期投資
分散することでリスクを抑えながら投資をすることができますが、次に心掛けてもらいたいのが長期投資です。
短期的には景気後退や不況に直面するほか、ネガティブな情報などに相場が振り回されることもあります。最近では、一国の大統領の発言で株価が急落することも。 ただし、一般的には世界の経済成長からもたらされる恩恵や企業の継続的な活動から生じる利益などが投資の成果としてじわじわと期待できます。
また1回あたりの利息はわずかでも、その利息を再投資に回すことで、その利息にも利息が付きます。これを「複利効果」といいます。複利効果も1回ではなく2回、3回と時間の経過とともにさらに大きな効果へとつながっていきます。よって長期的な視点で投資を行うことはとっても大切です。
iDeCoに関しましては、いずれにしましても60歳まで引き出すことができないため、結果として「長期投資」と向き合うことになります。
時間分散(ドルコスト平均法)
投資対象を分散する「分散投資」も重要ですが、時間を分散することも大切です。今月、来月、再来月……と少しずつ購入することを指します。 以下の資料を見てください。
日々価格変動する株式など投資対象を毎月末に「1株(1口)」ずつ購入したとします。この場合、単純に4カ月の株価の平均が平均取得額となります。
一方、以下のように「毎月1万円積み立てる」と決めていると、価格が低い時にたくさんの株数(口数)を買うことができ、高い時は少ししか買いません。その結果、平均単価が下がりやすくなります。つまり平均単価が下がりやすいということは将来的に利益が出やすいということを意味します。これを「ドルコスト平均法」といいます。
一般的に、今手元にある100万円を一括で投資すべきか、時間を分けて投資すべきかという議論は専門家の中でも意見が分かれるところですし、相場次第という側面もあります。ただし、そもそもiDeCoは60歳まで毎月決まった額を積み立てていくことになるため、このドルコスト平均法をうまく活用したいところです。
元本確保型の商品を選ぶと、このような価格変動がないため機能しません。元本確保型は安全面では長けていますが、その分、リターンも期待できません。リスクを取るということは、このように価格が変動するものに投資をすることです。ドルコスト平均法の効果に期待して、むしろ下落した時はチャンスというぐらいの気持ちでのんびり向き合うのも1つです。
iDeCoは投資の王道
見てきましたように、投資で大切な要素は普通にiDeCoを始めるだけで、ある程度実現できているのです。これはiDeCOの優れた点といえるでしょう。
ただ、せっかくなら「好きなスポーツチームに優勝してもらいたい」と思うように、できるだけ優秀な投資信託を選びたいところです。また、毎年毎年同じチームが優勝するということはほとんどありません。「今積み立てているファンドの調子はどうだろうか?」と定期的に確認することも重要です。
iDeCoという枠組みで、投資の王道を進みながら、「ファンドを分析する目」など、ワンランク上の投資知識も身に付けていきたいですね。
著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)
内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。