税制メリットが注目されがちのiDeCo。30代の加入者が60歳まで積み立てるとなると、毎年の節税分の積み重ねは相当大きな金額となります。一方で、意識しておきたいのがiDeCoにかかるコストです。

月額費用や各種手続きの際に手数料が生じます。60歳まで引き出すことができないため、各種コストとも長い付き合いとなりますので、しっかりと理解しておきたいところです。加入して受け取るまで、順を追ってどのようなコストが生じるのか、お伝えいたします。

  • iDeCoの手数料で損しない方法(写真:マイナビニュース)

    iDeCoの手数料で損しない方法

加入する際にかかる手数料

iDeCoは銀行や証券会社などで手続きをしてはじめることになりますが、その際に国民年金基金連合会に2,777円支払います。これは、どの金融機関でも共通です。公的年金の上乗せとして、国民年金基金連合会がiDeCoの運営において大きな役割を担っており、そのための費用です。企業型DCに加入していた人が転職などの機会にiDeCoへ資産を移す際も同様に2,777円が必要となります。

月額手数料

同じく金融機関に関わらず共通して、掛け金の納付に対して103円を国民年金基金連合会に、加えて事務管理委託先である金融機関に64円(※)を支払うことになります。よって、月々最低でも167円はコストがかかっているという認識が必要だと思います。年間にすると2,004円です。10年間で2万円以上払うことになります。
※事務委託手数料は一部金融機関では64円ではない場合があります

ただし、平成30年より月々の拠出ではなく、年1回以上で任意で拠出回数を決めることができるようになりました。103円は「拠出時にかかる費用」であるため、年1回まとめて拠出した場合は年間103円のみとなり、11回分(103円×11=1,133円)の節約となります。

拠出額が少ない人にとっては相対的に手数料が割高に感じられますので、このように年1回の拠出にするのも1つの方法です。

ただ、毎月コツコツ積み立てるからこそ、価格が安い時にたくさんの口数を購入し、高い時には少ししか購入しないため、平均単価が下がりやすく、利益が出やすいという「ドルコスト平均法」の効果が薄まることになります。このあたりも考慮して拠出回数を決めてください。

また、状況次第では追加で拠出しない時もあります。今ある残高のみを運用する場合も103円の拠出金はかかりません。

金融機関に支払う手数料

銀行や証券会社を通してiDeCoを始めることになりますが、その金融機関が独自に運営管理費用として徴収する手数料もあります。ネット銀行などを中心に一切管理費用がかからない金融機関もあれば、月額数百円必要となる金融機関も。

無料の金融機関を除くと、月額300円程度が平均的な金額です。年間3,600円程度となるため、この手数料も見逃せません。一定残高以上になると手数料を無料にするという金融機関もあります。

「時々相談に行くことができて、家からも近くて便利な金融機関がいい」ということであれば一定の手数料を払うことに意味はありそうです。「投資の知識もあるし、なるべくコストを抑えたい」という場合はインターネットの金融機関を中心に検討すると良さそうです。

投資商品ごとの手数料

iDeCoで投資信託などを積み立てていくことになりますが、この投資信託の手数料や維持費は通常の場合と同様です。販売手数料は無料(ノーロード)のものが多いのですが、通常どおり3%程度かかるものもあります。

年間維持費にあたる信託報酬はまちまちで、積極的に収益を狙うアクティブ型のファンドなどは比較的高めです。費用に見合ったパフォーマンスかどうか? これはiDeCoに限らず、投資信託を購入しているひとは確認してほしい点です。年に1、2度でもいいのでチェックをしてください。

信託報酬が運用の足かせになり、他の類似ファンドと比べ成績が思わしくない場合は、思い切ってスイッチングを行うのも1つです。

金融機関を変更する場合

金融機関ごとに取扱商品も異なるため、違う金融機関でiDeCoを行いたいという場合は、別の金融機関に移管することができます。

ただし、その際には移管手数料がかかる場合があります。インターネットの金融機関など運用管理費用が無料の金融機関は移管手数料が4,320円と高めで、月々の運用管理費用がかかる金融機関は移管手数料を無料とする傾向にあります。できれば移管しなくていいように、最初にお気に入りの金融機関をしっかり選別してください。

ルール違反に要注意! 還付時にかかる手数料

iDeCoは確定拠出年金法という法律の下、運営されています。様々なルールがあり、拠出限度額も決まっています。

その拠出限度額を上回って拠出した場合や、国民年金の保険料を納付していなかった月分などは「ルール違反」とみなされ、その拠出分は還付を受けることになり、その還付1回あたり、国民年金基金連合会に1,029円、事務管理委託先である金融機関に432円の手数料がかかります。還付という事態にならないよう注意してください。

なお、国民年金基金連合会への手数料は消費増税が行われる2019年10月以降、それぞれ2%程度値上げとなります。

受取時の手数料

60歳となり一括または分割で給付を受けることになりますが、その際も1回あたり432円の手数料がかかります。よって手数料を考慮すると一括で受け取る方が良さそうです。30代の皆さんにとりましてはまだまだ先の話ではありますが、給付時に手数料がかかることも覚えておいてください。

コストを意識することで

加入時にはじまり、選ぶ金融機関次第ではありますが、月々少しずつ手数料も生じます。もちろん多くの人にとって、これらコストよりも節税効果の方が大きくなるわけですが、節税分を考慮しなければ、当然「コストを上回る分、上手に運用しなければ」という考えに至るべきだと思います。

iDeCoを始めたものの、投資についてはよく分からないのでとりあえず元本確保型の商品にしているという人も少なくありません。できれば、コスト分は回収するという意気込みで投資について学び、ラインナップされている投資信託にどのようなタイプがあるのか? 今一度見直す機会にしてほしいです。

著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)

内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。