これまでiDeCoの特徴や、メリット・デメリットについて解説してきましたが、iDeCoにいざ加入したいと思っていても、すでに他の私的年金制度に加入してる場合には、iDeCoと併用ができるのかは気になるところです。そこで今回は、iDeCo対象者と他制度との関連について解説していきたいと思います。
iDeCo以外の私的年金
年金制度には、国民の加入が義務づけられている「公的年金」と、企業や個人で加入する「私的年金」があります。iDeCoを含めた私的年金は、公的年金の上乗せ分として運用していきますが、制度によって積立法や運用法、限度額は異なります。
・企業型確定拠出年金(企業型DC)
企業が毎月掛金を積み立てていき、加入者は商品を選んで自ら管理と運用を行っていきます。掛金は役職によって異なりますが、運用リスクは加入者が負い、運用実績で給付額が決まります。掛金額は下記の通りです。
企業型DCのみの場合……月額55,000円
企業型DC以外(確定給付企業年金、厚生年金基金)も併用する場合・・・月額27,500円
・確定給付企業年金(DB)
企業が給付する金額を定めてから、一括して管理・運用を行います。加入者の将来の給付額は保証され、運用リスクは企業が負うことになります。
・厚生年金基金
厚生年金の一部(報酬比例部分)を代行して、厚生年金に上乗せして(プラスα部分)支給される制度です。
・年金払い退職給付
公務員の方向けの民間の企業年金に似た制度です。将来の年金給付に必要な原資をあらかじめ保険料を支払うことで積み立てていきます。保険料は加入者と会社で折半(労使折半)します。
・国民年金基金
自営業者の方などの第一号被保険者のための公的な年金上乗せ制度です。給付は原則65歳からで、終身型または確定型(5年・10年・15年)を選択できます。
私的年金は個人が任意で加入するものですが、iDeCoを始めたいと思っていても、組み合わせによっては拠出限度額が異なる、または加入できないなどもありますので、事前に確認しておくことが必要です。
主婦(主夫)のケース
主婦(主夫)の方は、これまで公的年金に上乗せできる制度がありませんでした。そのためiDeCoの対象者として選択肢が広がったことは喜ばしいことではありますが、iDeCoの掛金分が所得控除できるというメリットは、所得の少ない主婦(主夫)の方にとって恩恵が少ないかもしれません。
しかし、運用益や給付時には税制メリットが使えますので、年金を少しでも増やして老後の生活に余裕が出るようにすることはできるかもしれません。拠出限度額は月額23,000円です。
会社員のケース
会社員が加入できる私的年金は「企業型確定拠出年金(企業型DC)」「確定給付企業年金(DB)」、そして「厚生年金基金」があります。
・企業型DC
企業型DCは原則としてiDeCoとの併用は不可です。しかし、企業型DCを導入している企業でも、会社の規定でiDeCoの併用が可能な場合にはiDeCoに加入できます。拠出限度額は下記の通りです。
企業型DCに加入している場合・・・月額20,000円
加入してない場合・・・月額23,000円
ただし、企業がマッチング拠出(企業DCの加入者が一定の範囲内で掛金の上乗せ拠出ができる制度)を導入している場合は併用が不可となります。
・確定給付型企業年金(DB)
iDeCoとの併用は可能で、拠出限度額は月額12,000円です。
・厚生年金基金
iDeCoとの併用は可能で、拠出限度額は月額12,000円です。
公務員のケース
年金払い退職給付との併用は可能で、拠出限度額は月額12,000円です。
自営業のケース
国民年金基金との併用が可能で、拠出限度額は合算して月額68,000円となります。
国民年金基金はiDeCoと同等の税制メリットがありますが、運用に関しては申し込んだ際の予定利率で運用されます。そのため、インフレで物価が上がる場合などは、給付額の実質価値は落ちてしまいます。しかし、終身型の給付が選択可能ですので、生涯給付を受け取ることができます。第一号被保険者の方はiDeCoと国民年金基金の併用、またはどちらか一方が良いのか悩むところです。
iDeCoは20~60歳の全員が対象
iDeCoは2017年の制度改正で、20~60歳のすべての方が対象になりましたが、上記でも述べたように、企業型DCだけは原則併用が不可ですので、会社員の方は加入したくてもできない環境にあります。しかし最近、厚生労働省で全会社員を対象に、iDeCoへの加入希望があれば併用可能になるよう規制を緩めることが検討されています。こちらが実現すると、多くの会社員の加入が期待できることでしょう。
次回は転職時や退職時の対応などを詳しく説明していきます。