公的年金にじぶん年金を上乗せできる仕組みとして、注目を集めている確定拠出年金。確定拠出年金には勤務先の企業で入る「企業型確定拠出年金」と、加入者自身が自分で入る「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の2種類があります。

「企業型確定拠出年金」は、導入している企業でのみ加入できますが、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は2017年1月から加入対象者が大幅に拡大し、「企業型」に加入している人も含めて、20歳から60歳未満であれば誰でも加入できる制度になりました。この特集では「個人型確定拠出年金(iDeCo)」について、ひとつずつ解説していきます。

デメリット1 60歳まで引き出せない

iDeCoには、大きく3つのデメリットがあります。まず1つは、積み立てたお金は60歳まで引き出せないことです。

これは、元々iDeCoが公的年金を補完する制度であるからこそのルールといえます。要するに、iDeCoで積み立てたお金は年金としてカウントされるので、年金支給開始年齢にならないと受け取れないのです。今は段階的に年金の支給開始年齢が65歳に引き上げられていますが、60歳といえば一般的に定年退職をする年齢。したがって、退職後に使うための老後資金なので60歳までは引き出せないというわけです。

逆にいうと、60歳になる前にお金が必要で引き出そうと思っても、原則、引き出しはできません。お得な制度だからと、手持ち金を全部積み立てに回してしまうと、いざという時に使えるお金がなくなってしまいます。iDeCoのお金を積み立てすぎて、手元に資金がなくなってしまった……という状況を作らないようにしましょう。掛金の額は年に1回だけ変更ができるので、上手に利用しましょう。

デメリット2 毎月一定額の手数料がかかる

2つ目は、iDeCoを利用するには毎月一定額の手数料がかかることです。

iDeCoに加入すると、まず加入時に、国民年金連合会への手数料として2,777円がかかります。一部の運営管理機関(加入する金融機関)ではプラスで加入手数料がかかることもあります。さらに、加入後は毎月、国民年金基金連合会へ月額103円、事務委託先金融機関へ月額64円で合計167円は必ず手数料として必要です。また、運営管理機関に口座管理手数料を払う必要がある場合もあります。これを理解した上で、iDeCoに加入するようにしましょう。

ちなみに、運営管理機関とはiDeCoに加入する窓口となる金融機関のことで、口座管理料は各金融機関によって違います。ゆえに、より手数料の安い金融機関を選ぶことでこのデメリットを抑えることができます。

デメリット3 元本割れのリスクあり

3つ目は、運用商品によっては元本割れのリスクがあることです。

iDeCoは、自分の積み立てた資金を、元本確保型(定期預金・保険)と元本変動型(投資信託)の商品ラインナップから自分で選ぶのも特徴です。つまり、元本変動型である投資信託を選択すると、運用の結果として損をすることもあります。また、逆に元本確保型に振り分けすぎると、運用の利益があまり得られず、運用期間中は手数料が毎月かかってくるので、手数料ばかりとられて結果的に利息より手数料の方が高くて損をすることもあります。

また、保険は満期まで持っていれば元本割れはしませんが、満期日前に途中で解約をすると解約控除額という手数料がとられます。このペナルティによって結果として元本割れしてしまうということもあります。

このように、iDeCoはあくまで「資金を積み立て運用する」という制度なので、運用の結果次第では損をする可能性が0ではありません。したがって、自分でしっかりと情報収集をして、途中の実績をチェックしながらバランスよく資金を配分することが必要です。

iDeCoの思わぬ落とし穴

そして、iDeCoには思わぬ落とし穴もあります。まず1つに、全員が60歳になったら受け取れるとは限らないということです。先ほど60歳まで引き出せないと説明しましたが、実は条件に当てはまらないと60歳になっても受け取れないことがあるのです。

その条件とは、通算の加入期間が10年以上であること。つまり、50歳以上で加入すると、10年には満たないのでiDeCoで積み立てたお金は60歳から受け取ることができないのです。具体的には、加入期間が8年以上10年未満なら61歳から、6年以上8年未満なら62歳から、4年以上6年未満なら63歳から、2年以上4年未満なら64歳から、1カ月以上2年未満なら65歳から受け取りということになっています。

もう1つの落とし穴が、条件に合わず加入できない人がいるということです。iDeCoは20歳から60歳の人が加入できる対象者なので60歳以上の人は加入ができません。そして、対象者は国内在住者に限られるので海外居住者も加入ができません。経済的自立が難しい人も加入が制限されてしまうので、国民年金保険の免除・納付猶予者は加入できないことにも注意しましょう。

また、住宅ローンを組んでいる人にも落とし穴があります。住宅ローンを組んでいる人は、住宅ローン減税によって所得税から一定割合を控除されますが、iDeCoを利用すると納税額が減り控除適用額も縮小するため、減税効果が減ってしまいます。

デメリットを差し引いても、iDeCoは利用すべき

以上のように、iDeCoには独自のルールがあり、メリットがある半面デメリットも生じてきます。しかし、きちんとルールを理解して上手にデメリットと付き合うことで、iDeCoの最大のメリットである税制優遇を最大限に受けることができます。

一度積み立てたお金は60歳まで引き出せず、一度加入すると毎月手数料がかかり、場合によっては元本を下回ることもあるという元本割れのリスクもありますが、このようなデメリットを差し引いても、長期積み立てと長期投資で自分の老後資金が作れるというiDeCoの制度は利用すべきといえるでしょう

まとめ

株式会社回遊舎


"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」「J-REIT金メダル投資術」、「NISA120%活用術」、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」、「子育てで破産しないためのお金の本」など。