公的年金にじぶん年金を上乗せできる仕組みとして、注目を集めている確定拠出年金。確定拠出年金には勤務先の企業で入る「企業型確定拠出年金」と、加入者自身が自分で入る「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の2種類があります。

「企業型確定拠出年金」は、導入している企業でのみ加入できますが、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は2017年1月から加入対象者が大幅に拡大し、「企業型」に加入している人も含めて、20歳から60歳未満であれば誰でも加入できる制度になりました。この特集では「個人型確定拠出年金(iDeCo)」について、ひとつずつ解説していきます。

iDeCoの節税メリットを詳しく紹介

iDeCoの最大の特長は手厚い税制優遇にあります。拠出時・運用時・受取時のそれぞれのタイミングで税制上の優遇があるので、最初から最後までずっとおトクというわけです。ここではその3つの節税メリットについて解説しましょう。

掛金が全額所得控除される

特にメリットが大きいのが「拠出」(積立)のとき。iDeCoで積み立てる掛金は、まるっと全額が「所得控除」の対象となり、所得から差し引かれます。その結果、将来への積立をしながら、その年の所得税と翌年の住民税の負担を減らすことができます。

掛金を月1万円(年12万円)拠出した場合

例えば年収500万円の人が毎月1万円(年間12万円)を掛ける場合には、年間で約3万6,000円(所得税20%、住民税10%)の軽減メリットが生じるので、仮にこの条件で30年間積み立てたとすると、していない人に比べて108万円も多く控除されることになります。

また、課税所得が高いほど所得税率が高いため、節税効果も高まります。例えば年収1,000万円で毎月1万円(年間12万円)をかけた場合の軽減メリットは年間5万1,600円(所得税33%、住民税10%)となり、年収500万円の場合と比較して、年間1万5,600円分も多く軽減メリットを享受できるのです(共に配偶者控除などはなし)。

一方で、年収が同じ場合でも掛金は全額所得控除ができるので、掛金額が高いと所得からの控除額も大きくなり、節税効果が高まります。つまり収入が高く、掛金が多いほど税金が軽減される仕組みになっています。

運用益も非課税 & 再投資すれば雪だるま式に資産が増える!

また、「運用時」に得た利益もすべて非課税になります。一般的に金融商品などの運用益や分配金、預金の利息には約20%の課税が生じるのに対し、iDeCoの運用ではどれだけ利益が出ても課税されず全額非課税となるのです。

例えば元本100万円を投資信託で5年間運用した結果、50万円の運用益が出た場合、通常の運用では運用益に対して約20%の課税が生じます。一方iDeCoでの運用では一切非課税となるので、運用益の約20%に当たる約10万円分をまるごと自分のお金にすることができるのです。この運用中に得られた非課税の利益分10万円を再投資することで、雪だるま式に資産が増えていく複利効果も期待することができます。

受取時も税制優遇がある

最後に「受取時」の税制優遇について見ていきましょう。 「拠出時」と「運用時」と違い、「受取時」は非課税ではありません。受取時に一括して課税される仕組みになっています。しかし、ここでも手厚い税制優遇が適用されるのです。

iDeCoは受取時にも税制優遇がある!

iDeCoの受け取り方法には、運用してきた資産を一括で受け取る「一時金形式」と分割で受け取る「年金形式」の2通りの受け取り方があります(両方を選択することもできます)。それぞれによって適用される税制優遇は異なり、「一時金形式」の場合には「退職所得控除」が、「年金形式」の場合には「公的年金等控除」が適用されます。

受取方法と金額に応じて「退職所得控除額」か「公的年金等控除額」が決定され、受取金額からそれぞれを差し引いた額にのみ課税されます。特に「退職所得控除」は非常に手厚く、課税額が0円になり税金を支払うことなく受け取れるケースも多くあります。

まとめ

株式会社回遊舎


"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」「J-REIT金メダル投資術」、「NISA120%活用術」、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」、「子育てで破産しないためのお金の本」など。