「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第99回のテーマは「きびしく? 『かわいげ教育』」です。

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以前、子どもの言葉使いが荒くなった話を書きました。最近は息子の「毒蝮三太夫化」は抑えられてきています。「親が気をつけたら子どものブームって一過性だったりするのかな」と安堵しています。ですが、相変わらず結構「怒ってコミュニケーション」はするんですよね。

子どもなんだからある程度はしょうがないのですが、我が家ではとにかく親も子どもも「怒ってコミュニケーションしない」ことを大事にしています。「怒るよりも『かわいくお願い』する」のが夫婦間でも親子間でも大事。親から子は、特に怒ってコントロールするのは簡単です。なので、頑張って楽しく、面白く、かわいく……ポジティブにお願いするように心がけています。

ただし、2カ月近くにわたる緊急事態宣言により、延々と仕事を中断させられた締め切り間際とかは、それをやっていこうと提案している私自身ができてなかったりするんですけども……。

とにかく、我が家は「コミュニケーションは練習」だと思っています。自然にまかせて勝手に穏やかに暮らせたりはしないタイプの人間が一緒に暮らしているので、ポジティブかつスムーズなコミュニケーションになるように、子どもにも言って聞かせています。

毎朝毎朝、息子は朝ごはんを食べきることができません。親としてはかなりめんどくさいのですが、いかんせん本人がモリモリごはんを食べるタイプじゃないので、励ましたりおだてたりと、食べさせるために努力しています。

「早くごはん食べなさい!!!」みたいに言ったところで、泣き出されて余計に時間がかかるので、あの手この手で食べさせるのですが、さすがに息子のほうが怒ったり、乱暴な言い方をしたりするのは見過ごせません。

こういうときは「怒って言わない!」とやってはいけないことを指摘するよりも、「別の言い方をしたらいいよ」と言うようにしています。それが、私の場合は「かわいく言ってくれたら違うのに」なのです。

お父さんは最初、この教育方針に結構な抵抗を示していました。なにぶん、「かわいく言う」という習慣が本人にないからです。男性の多くが、親しい相手に一番簡単にやりがちなのが「怒って言う」だと私は思っていて、これは性質というよりは社会的な刷り込みのほうが大きいと思っています。女性に比べて男性のほうが「これやって~」みたいに「素直に甘える」ようなことが選択肢として与えられてないと感じています。

なので、小さいころから「怒らずに、かわいくお願いしよう」と教育するのは、男児の場合は特に大事なことなんじゃないかなと思ってやっています。

そんなお父さんも、実際に子どもにかわいく言われてみると「じゃあいっか!」となる不思議。パートナーは、40歳を過ぎて私と付き合い始めましたが、私が考えてることを理解して納得したら実行してくれます。パートナーがそれを実行してくれることで幼児でも、「40歳過ぎても練習したら前よりうまくできるようになる」ということを信じられるのだと想います。

大人でも子どもでも「人格」とか「性格」とか、持って生まれたモノはどうしてもあって、そういう根本のところはなかなか変えられない。でも、コミュニケーションなら「練習してうまく」なれると思うんですよね。

パートナーに対してもそうですが、特に子どもには「ポジティブなコミュニケーションにはポジティブが返ってきて、ネガティブなコミュニケーションにはネガティブが返ってくる」ということを、経験として理解してほしい。 そして「こうするとうまくいく」という成功体験をたくさん積んでほしい。

というわけで、我が家では「かわいげ教育」を厳しく(?)やっています。

なのですが、最近息子と公園に行ったとき。たまたま一緒にいた他のお友達が木に登っていたのを見て「お母さん、ボクを木に登らせて」とお願いされました。「いやいや、○○ちゃんは自分で登れたよ。頑張って登ってみたら?」とチャレンジを促したのですが「お願い★」と、かなりかわいくお願いされてしまいました。

う~ん。かわいげ教育実践者としては、ここはかわいくお願いされたら「私の教えを守っている」というわけで、木登りを手伝うしかありません。でも、「頑張って木登りの練習もしてほしいんですけど……!」とかなりの葛藤がありました。

「マイルくんはお願い上手だねえ」とパパ友に言われてしまいましたが、頑張って木登り練習するお友達を見ると「ガッツがあって、いいなあ」とつい思ってしまうのも本音です。

とはいえ、やっぱり泣いたり怒ったりして「手伝ってよ~!!」とやらなかった点は素晴らしいなと思いました。いつまでもずっと親と一緒にいるわけじゃないので、いつかは自分でやらざるを得ないだろうな……と思うので、木登りの練習はまた別の機会にやろうと思います。

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