「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第95回のテーマは「不機嫌のコントロールはとっても大事」です。

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いつもほがらかに暮らせていればいいのですが、そうはいかないのが常です…。機嫌をよくするのが難しくても「不機嫌」は避けたい……。ということで、ネガティブなことを言うときに踊ってみたりアゲアゲにしてみたりと工夫を重ねています。

我がパートナーは以前はすぐにキレちゃう「キレキレおじさん」だったんですが、離婚寸前の喧嘩を経て、今は自分の機嫌をコントロールできるようになってきました。

キレる以外に問題なのは「不機嫌」です。これはキレる以上にやっているほうが加害行為だと認識しづらいのが問題なのです。やっているほうは「いや、大きい声も出してない。怒りを抑え込んでいるんだから、むしろ自分は自制心のあるいい人間」くらいに思っているケースがあります(というか、以前のパートナーはそんな感じだった)。

連載90回「ネガティブな話をするときのコツ」でも書きましたが、家の中に170cmくらいのサイズの動物がうなってたら怖くないですか……? その生き物に「いや、まだ誰も噛んでませんけど?」とか言われても、明らかに不機嫌だったり警戒心むき出しだったりするのは伝わるのです。むっつりと黙り込み、返事をしなかったり、しても「あ?」とかだったりする人とはストレス無しに接することはできません。

これは特に子どもには伝わります。子どもは「お父さんが怖い」とか「お母さんが怖い」ということに敏感です。不機嫌によって、家の中にいる相手を怯えさせていたら……我が家ではそれはもう加害であるということを今は共有しています

「今は」ということは共有させるのには結構時間がかかりました。不機嫌に不機嫌で対抗したり、無視したりする……というのが私は苦手です。家の中がギスギスする時間が長くなるのが耐えられない。

かといって、穏やかに伝えても深刻さが伝わらない。感情に訴えようとこちらが「悲しい」と訴えると、パートナーは自分の加害性が引き立つことにさらに苛立ちを感じてしまうタイプ。なので、逆にキレられてしまいます。

結局、一番伝わるのが「ブチ切れ」です。向こうのキレを上回る怒りを表明すると「あ、こんなに怒るくらいダメなことだったんだ」と理解できるらしく、私は何度か本気で「不機嫌の加害性」について訴えました。

男性社会にいて他の男性と比べたら、別にパートナーはマッチョではないし乱暴なほうではないと思います。でも、家庭の中では最大の生物であり最も頑丈な生き物です。それが自己の感情をコントロールしないで生きてるとしたらどれだけ迷惑か……。

基本的に「感情をコントロールする」というと、多くの人は「我慢」をしてしまいます。うちのパートナーも最初はそうでした。でも、「我慢」は自制とは違います。大体の場合、我慢するから不機嫌になるのです。我が家で自制というのは「どうして不機嫌になるのか」の原因をつきとめて、その理由を排除すること、または折り合いをつけることを指します。

なので、不機嫌を避けるのに大事なのはその原因を自己認識して開示することです。これは夫婦間で練習をしているうちにできるようになりました。パートナーがイライラしていたら「今あなたは不機嫌に見えて怖いよ」と指摘して、その後その理由を話します。一緒にいる相手が解決できるような問題であれば話し合ってお互い納得できれば不機嫌は解消し、解決できない問題だったとしても話すことで客観視できて整理され、気分が落ち着くことがあります。

というわけで、我が家の不機嫌の解消法は「自己開示」です。

私は男性の不機嫌は加害性が高い……とは思うのですが、女性の不機嫌も充分加害性があると自覚しています。

確かに、男性よりはフィジカルの圧は少ないのですが、それでも動物としては充分大きいほうですよね。バツイチ独身時代に野良猫がベランダにエサをねだりに来ていたのですが、その中にものすごくしつこくて怖い猫がいました……。猫と人間なら人間のほうが大きくて殺されるような危険はないのですが、その猫がうなりながら窓をバンバン叩いてくると、かなり怖かったです。そして、ついついエサをだしてしまい、またその猫が翌日エサをたかりに来るという悪循環でした……。

そのときの経験から「サイズが小さいからって加害にならないわけじゃない」んだな……と思ったんですよね。なので、常に息子やパートナーに対して加害的な行動をとらないよう、自分のメンタルを「ほがらか」になるように意識をしています。

とはいえ、自分が疲弊しているときに他人を思いやるのは難しいです。自分がイライラしているな、余裕がないなと思ったら家族に理由を開示するようにしています。理由は「不安なことがある」「仕事が立て込んでいる」とか「おなか空いた」「生理前」とかさまざまです。ただ、理由を開示すると相手に対処してもらえることも多いんですよね。これって、相手に助けを求めることの第一歩だと思います

ちゃんとお互いが開示していれば、段々と「ああ、今はアレかな」と察することができるようになります。我が家は「察してチャン禁止」ですが、思いやって察してくれるから信頼が生まれるのではなくて、自己開示をするから信頼関係が生まれて、その結果察せるようになるんじゃないかなあと思っています。

最近余裕がないとき、息子に「お母さん今は『やさしさエネルギー』が無いから優しくできないの」と言うのですが、そう言うと、ワガママを言っていた息子が優しくしてくれます。優しくしてもらえると、元気が出てきて息子にも優しくできます。ポジティブなサイクルを家族で回していけたらなと思っています。

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