「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第92回のテーマは「父と母…息子からの愛情の偏り」です。
この問題は「ほほえましい」を超えて、パートナーが「家族で仲間はずれにされている……」と被害者意識を深くして私に当たってきて、夫婦ケンカになったりわりと深刻な問題の一つだったりしています。
83回「『積極的ワンオペ』の効果」で、「問題を解決しなければ」と思う自責タイプの私が責任を負いすぎていたということを自覚して「父と子、2人で仲良くなれ」と突き放してから少しはよくなったような気はします。 少なくとも、パートナーが「息子との関係は自分次第」だと思うようになって、行動するように変わってきたかな…と思っています。
とはいえ……相変わらず息子はお母さん大好きで、お父さんを冷遇していますが……。
そもそも息子がお父さんにちょっかいを出すのは「かまってほしい」からだと私は思っていて、パートナーもある程度はそれを受けとめているのですが、ネガティブスイッチに入ると父子間も夫婦間にもネガティブをまき散らしちゃうことがあります……。この息子の「お父さんにかまってほしい」の気持ちと、お父さんの気持ちのバランスをどううまくとるべきか……と母親、妻としては悩みがちです。
最近、息子は「お母さんにはほっぺにチューをして、お父さんはパンチする」というわかりやすい差別アクションをやっていたのですが、試しに「お父さんに1パンチしたら、お父さんが息子に10回チュッチュする」という提案をしてみました。
これで本当にお父さんからチューをされたくなければ息子はパンチしなくなるし、パンチをしたらお父さんが息子にチュッチュする権利を得られるのでWin-Winなのでは?
と思い言ってみたのですが…息子からの攻撃は止まらない。そして息子はお父さんにチュッチュされてるとなんだかとっても楽しそう……。息子の差別的な態度って……やっぱりお父さんにかまって欲しいだけなんじゃん!!
と思いました。
というわけで、我が家では息子がお父さんにいじわるをすると、お父さんが息子にチュッチュしまくり、息子大爆笑するという流れになりました。ああ……よかった!
とはいえ、 パートナーが「息子はお父さんにいじわるがしたいだけなんじゃないの!?」と言うように息子から父親への愛情表現がいじわるであるのは変わりないのですが……。
こういう息子の態度に対して「しつけ」をすべき、という考えの人がいると思います。私の親世代はどちらかというと「しつけ」タイプの親でしたし、自分と近い世代の人でも「子どもが親をバカにするような態度を取ったら叱るべき」と思っている人もいます。しかし、私としては「子どもの態度には理由がある」と思っているし、「ちゃんと親を敬いなさい」と子どもに強要する前に「子どもから敬われる対象かどうか、振り返ってみたほうがいいのでは」という気持ちがあります。
私は子どもが親に対して「大好き」的な立ち振る舞いを、親が求めるのってなんだか子どもに「サービスを強要」しているみたいで、すごくイヤなんですね……。親と子であれば、絶対的に親のほうが立場的に強いので親が強要することは簡単です。でも子どもに対して「尊敬しろ、敬え、感謝しろ」というスタンスを自覚的であれ潜在的であれ持っていたら、子どもは見抜くと思っています。私はそういう「親が子どもに対して日々やっていること(養育)への見返りとして、子どもからの感謝や愛情表現を求める」ことは「子どもへの親からの甘え」ではないかと思ってしまいます。なので、そういう片鱗がパートナーから少しでも見えると結構厳しく指摘してしまう傾向があります。
もちろん、息子が明らかに悪いときは叱ります。たとえば何かを買ってもらったり、してもらったりして「当たり前」のような態度を取ったり、ごはんを作ってくれた人にちゃんと「ごちそうさまでした」を言わないとか。日常におけるマナーや感謝は当然必要です。その辺はしっかり伝えているし、普段の生活で問題もあまりありません。息子がいじわるするのは「お父さんだけ」なんですよね……。そういう時は、やっぱりある程度大人のほうが子どもに対して表層以外の部分も読み取ってあげるほうがいいと思っています。
我が家は「察してチャン禁止」というルール/があって、勝手に察してはいけないことになっているのですが、「子どものちょっとひねくれたコミュニケーション」については、能力のある大人がくみ取ってあげるのは大事だと思っています。話し合いを重ねていくうちに、パートナーもそういうことを受けとめてくれることが増えてきました。
とりあえず、成長に沿って父と子の関係もイイ感じになってきているような気がします。こんな感じで親も子も一緒に成長できる関係でいたいなと思います。
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