「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第84回のテーマは「境界線のひき方は難しい」です。
いろんな家庭の話をわりと聞きがちな私です。そこで思うのは、家族やパートナーとの関係性において、どう境界線をひくのかっていうのは、それぞれのパートナーによって違うよね~ということです。
第81回「『全部私のせい』は傲慢さと紙一重」でも書いたのですが、我が家はついつい私が相手の問題を「自分の問題」と思ってしまい、七転八倒したのちに「あっ! また間違えてしまった!」と反省する……というケースをやらかしがちです。
しかし、大体の家族の問題……夫婦に限らず親子関係や、家族になる前のカップルでさえも「うまくいかない」「揉めている」ときは、自他の境界線に問題が起こっているということが多いです。
モラハラは相手を思うとおりにコントロールしたい、関係を支配したいという気持ちから起こるだけでなく、本当に相手を思うあまりに境界線を踏み越えて、自分と相手の問題を混同してしまうこともあります。
小さな子どもの「困った」を親が代わりに解決してあげるのは必要だったりもしますが、ある程度成長している相手(親子であれパートナーであれ)の問題を代わりに解決してあげるのは、相手のためにならないこともあります。
そして、よくよく考えてみると「相手の問題を解決したい=自分が安心したい」だったりして……「相手のためを思って」が本当に相手のためだけなのか……みたいなことも起こりますよね。
私は初婚では「ロマンチックラブイデオロギー」に染まっていたなあと思っています。
ロマンチックラブイデオロギーとは、簡単にいえば「お姫様と王子様は末永く一緒に暮らしましたとさ」で終わる、愛を永遠に誓って家族になり添い遂げる、という価値観のことです。結婚式というのは、大体このロマンチックラブイデオロギーの筋書きで構成されていて、私は疑問を持たずに「そういうもんだよね」と初婚で突き進んでしまったのです。
私は元々「シングル単位」の思考の持ち主です。しかし結婚したのだからと徐々に「ゆで卵」が「白身が一緒の目玉焼き」になり、徐々に境界線が曖昧になり、少しずつ「カップル単位」の思考での結婚生活になっていきました。
今回マンガで引用した『シングル単位思考法でわかるデートDV予防学』(著・伊田広行 かもがわ出版)には、スクランブルエッグ状態になっているカップルは「ちがいも境目もないというのは、離れたりちがう意見を持つことが許されず、AB各人、特に弱いほうの自由がなくなるわけです」とあります。
初婚では確実に私のほうが「意見が強い」関係でした。なぜなら、私が「結婚したかった」から。結婚生活をすべて取り仕切らなければならなかった。
かといって、私は相手を支配するつもりもコントロールしたくもなかった。でも、家の中の決まりごとは何もかも私が「決めなければならない」状態になっていました。私は、相手の問題は自分の責任として背負い込み、問題解決を試みて、自分の問題は一切相手に頼らずに、自分で解決しなければならないという、不均衡でバランスの悪い結婚生活になってしまいました。
それでも「結婚したのだから」「この人しかいない」と考えて、頑張ってしまい……徐々に疲弊して、「一生このままなの?」と追い詰められていきました。
「人の問題を解決する」というのは、一見「頼りがいがあるいい人の立ち振る舞い」に見えるのですが、本人が解決するべきタスクを奪うことになります。そして「解決してもらう側」は意志決定することを他人に委ねる行為です。本人が望んでいる場合は、それでもうまくいっていることもありますが、「そっちのほうが揉めないから」「そっちのほうが解決が早いから」という消極的な理由で問題解決を他人に委ね続けることは、決して健全な関係とは言えなくなります。
「頼りがいがある」と「支配的」というのは常に表裏一体なんですね。私は「頼りがいのある人間」になりたかっただけであって、誰かを支配したくはなかったし、頼られると同時に頼りたいとも思っていました。そして、結果的に離婚に至りました。
バランスがよくない関係の原因も、結局は、相手と自分との境界線をうまくひけなかったことが原因だったと反省して、常に「相手と自分の境界線」の問題を考えています。……こんなに考えていても失敗しちゃうんですが!
家族や親しい人との関係で「うまくいかないな」と人に相談されたときは、「相手との境界線」について確認してみることをお勧めしています。
『シングル単位思考法でわかるデートDV予防学』は若い人向けの本で、いつか子どもに説明しようと思って買ったのですが(息子は5歳なので、かなり気が早いですが……)、大人にも非常にわかりやすいのでオススメです。
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