「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第76回のテーマは「好意の受け取り方も練習しよう」です。
察してチャンはダメ、または察しちゃうのもダメ。ちゃんと話し合おうと言うと「察するのは思いやりでしょ?」と思う方もいるようです。
我が家では「察するのと同じくらい伝えるのも思いやり」ということになっていますが……それでもまあ、片付けしないままパートナーが寝てたら、「あら、疲れてるのかな」と思って後片付けをやったりします。もちろん、思いやりがほとんどですが、目の前に片付いてない食器があるまま、次のタスクに入りたくないという自分の希望もあります。
我が家では「気になることは自分でやる」ルール。やってほしいことは「お願いする」。「なんでやらないの」という文句から入るコミュニケーションは、信頼関係と愛情を目減りさせるだけ……という方針なのですが、なかなかうまくいかないこともあります。
人に自分のタスクをされると「ああ、それは私の担当なのに」という気持ちが出ちゃう。不思議です。パートナーは「早くやらなきゃと思ってるのに、先にやられると責められてる気がする」と言います。責めてないし、責めるくらいなら「やって」とお願いします。でも、明らかに疲れてそうなんだから、私がやればいいやと思ってやっている。
だから別に、代わりにやってあげていいことをしているのに、なんで文句言われるの……みたいな気持ちになります。パートナーは私の中の「目の前に片付いてない食器があるまま、次のタスクに入りたくない」という気持ちに着目しちゃうんですよね。
でも、これって、わりとあることなのかもしれない。マンガではパートナーのタスクを私が代わって、まず文句を言われる……というシーンを描いていますが、私にもあるのです。具合が悪くて寝てたりするときに、洗濯物を畳んでもらったりすると「あとでやろうと思ってたのに」と思ってしまう。でも、よくよく考えれば、やってもらうということを素直に喜べばいいんですよね。
自分のタスクは自分でやりたい気持ちはある。だけど、別にそこまで「やらなきゃ!」ということはない。疲れてたり、具合が悪かったりしたら、代わってもらえばいい。でも「できる」と「やらなきゃ」の境界線が曖昧なのです。
我が家は「かわいくお願いする」ルールがありますが、本当に気をつけないと、すぐネガティブなコミュニケーションを取ってしまう。どうしてこんなに好意を受け取るのが下手なんだろう? と思ってしまいます。
「義務を果たせ」「働け」「ちゃんとしろ」……という抑圧。ネガティブな評価ばかりの日本の子育て観や学校教育のせい? なんて、家事を代わってもらうことを素直に喜べないということだけで、そんなことまで考えてしまいます。タスクを代わってもらった瞬間にすぐ「ありがとう~」と言えるような人間になりたい……。そして、パートナーにもそうなってもらいたい……のですが、そう簡単に修正できないものです。
そこで「自分のタスクを代わられると、ついネガティブな気持ちになる」というやりとりを解消するのに、我が家では最近あえて「優しさ」アピールではなく、「タスクを奪う」とアピールをすることにしました。
「はっはっは、お前のタスクはもらった! ダラダラするがいい!!!」「疲れてるなら、甘えん坊になるがいい!」みたいな感じですね。すると「ああ……私の! 私のタスクが~~! やろうと思ってたのに~」と思いつつ、責められてる気はしない。なぜなら「タスクが奪われている」から。
こっちのほうが素直に「ありがとう」と思えるのも……不思議。たぶん「やりたかった」「やろうと思ってた」という気持ちが清算されやすいからかもしれません。なので、我が家は「好意の受け取り」を練習しつつも、思いやりから「人のタスクを奪う」形式を取っています。
そういえば、義実家で我々がお世話になるときには、この「タスクを奪う」コミュニケーション、やってます。
「おほほほ、嫁子さんには、このお仕事はさせなくってよ」「ああっ私にもお皿を洗わせてください!」とか、義妹さんや姪っ子とやってます(笑)。もちろん、逆にタスクを奪いに行ったりもします(お泊まりしてお世話になっているのだから、家事を手伝うのは当然なんですけども)。
そういった意味で、タスク奪い合いのコミュニケーションがうまく使えるシーンはあります。気疲れしない気の使い方、ポジティブな声の掛け合いを色々していきたいなあと思っています。
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