「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第7回のテーマは「お金で解消できる不満もある」です。
前回、「不満は借金」という話をしましたが、それを逆に考えると「お金で解決できる不満もある」っていうことなんですよね!
うちはお財布が完全に別の「ワリカン夫婦」です。
お財布が一緒の夫婦の場合は、夫が仕事で家を空けるのは「家族のため」で家計にフィードバックされるわけですが、お財布別だとそれがありません(お金を稼いでこないと困るので、全くないわけじゃないですが)。
フィードバックがないのに、子どもが産まれてすぐの頃、なぜか夫は「家族は支え合うものでしょ」とか「お互いさまでしょ」みたいなことを言って、時間と労力を家事育児に割かない代償を用意しようとしなかったんですよね……。
「お互いさま」というのは、私も仕事で家を空けたり、子どもを夫に預けていなくなったりすることがあるならフェアです。でも私は在宅での仕事が多いため、そういうことがめったにありません。家庭内での夫の労力を肩代わりするのになんで無報酬なのか?
うちは私が妊娠出産の間もワリカンで、私は貯金を崩しつつ、セーブしながら仕事もしていました。なので「夫の仕事で稼いだお金は夫の財布」にしか入らないので、夫がいない間のサポートの経費は夫が出すべきもの、というのが私の主張でした。
ちなみに、「察してほしい」はうちでは絶対にやってはいけないルールなので「そもそも、こっちが言わなくてもお金くらい出しなさいよ!」というアプローチは厳禁です。なので、正攻法で「不公平感をお金で解消しましょう」っていう提案をしました。しかし、抵抗されました……。
夫が払いたくない理由は、「相手の労力に甘えている状態を許されたい」みたいな気持ちじゃないかなと思います。しかしこの手の甘えを、モヤモヤっと「愛情」的なもので許していると「私ばっかり損してる」となっていきます。その気持ちって、夫婦を続けていくのにはかなり危険な「可燃物質」になるんですよね。
前回のコラムでも書きましたが、とにかく「我慢」していると後からそれが不公平感を募らせ、後々「怒り」に変わってしまいます。離婚を経験している私たちはとにかくそういう「関係性の負債」を抱えるのが怖いのです……。
「負債は怖いでしょ」と夫を説得したら、過去の経験から「やっぱり払ったほうがいいね」と納得してくれました。
昨年一世風靡した人気ドラマ『逃げ恥』で、新垣結衣さん演じるヒロインのみくりがパートナー(その時点では候補)の平匡さん(星野源さん)に「結婚(法律婚)後の家事労働の無償化」を提案されたときに「それは愛情の搾取です!」と言ったセリフが話題になりました。あのシーンを見たとき、私は「やっぱそうだよね~、わかる~!」と思いました!!
愛情もあった上で、不公平感がなければより幸せ。だから不公平感をお金で埋めてもOK! お金に変えられる愛もある!
で、うちのルールでは「ワンオペ一回2000円」です。この金額の根拠ですが、子どもが新生児のとき「実家の母が手伝いに来てくれるときにかかる経費(交通費と食材費)」が2000円でした。
現在は、子どもが病気になって保育園に行けないときも2000円です。我が区には病児保育施設が少ないため、ベビーシッターさんの補助金が出ます。補助金も全額分は出ないので、フルタイム8時間預けると実費が4000円くらいかかります。その半分(ワリカンした場合)が2000円。
私が在宅仕事のため、病気で保育園に行けない日にシッターさんを頼んでも、絶対に子どもが仕事をさせてくれないのです……。なのでシッターさんは頼まず、私だけが時間をやりくりせざるを得ない。夫はその間もいつも通り仕事ができる。その不公平感をなくすために、「シッターさんを頼んだ想定の2000円を支払う」ということになっています。
この話をすると「2000円」に対して「高い!」っていう人と「安い!」っていう反応をする人がいます。
「高い!」っていう人は、家計が一緒などで「夫婦間でお金のやりとりする」ことに抵抗があるタイプの人。お財布が一緒だと「お金で解決」みたいなことに抵抗が強いのかなと思います。
「安い!」っていう人は、共働きなのにワンオペを任されがちで、なおかつそれに対する補償や対価をもらってなくて、不公平感がある人(おもに女性)という印象です。すでに不満が溜まっているので「実経費」よりも「慰謝料」を上乗せしたい感じになっている……! そうなる前に、さっさと実経費を払ったほうが家庭が円満になると思います。
不公平感をお金(数字)に具体的に換算してみると、自分や相手の考え、価値観が整理されるという利点もあります。お金を払うことで「モヤモヤ」や「もめごとの原因」がスッキリすることが多いので、モヤモヤが多い場合はやってみてはいかがでしょうか?
著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。