「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第69回のテーマは「言わなくてもわかってほしい気持ち」です。
今回は、第65回「『察してチャン』がダメなわけ」の続きのお話です。
息子の罠にかからないように、「察さないで、言わせる」を頑張っています。なのですが……。相変わらず、息子は「言わなくてもわかってほしい」らしく、罠をしかけてきます。
そして、それがついに「ジェスチャーゲーム」の域に達しています……! いや、そこまで「わかってほしい」ってなると、ついうっかり察しちゃって、お願いされてないのに先回りして行動することもなくて、良いのですが。
しかし……「言わなくてもわかってほしい気持ち」って、承認欲求なんでしょうか……? それとも、赤ちゃんのときはそれで成功していたのだから、成功体験としての「言わなくてもわかってほしい」なのか? または子どもは親の愛を試すためにやっているのかもしれない。……と色々考えてしまいます。子育てをしていて「察してほしい」のは男女関係なく、プリミティブな欲求なんだな……と思いました。
日本は「察する文化大好き」だと思っているのですが、その日本人が、なかなか「自分の思ったことを言えない」「人に純粋にお願いすることが下手」なのは学校教育のせいで、「日本の性質」でも「個人の性格」でもないんじゃないかと最近考えています。
聞いたところ、海外では国語の授業に「話す」授業があるそうです。でも、日本は「読み書き」だけ。そして、日本の学校は「個人を尊重してたら、まとまるなんて無理!」と最初から議論を放棄して強制ばかりです。文句を言わずに、主張もせず、決まりを守るのが良い子という成功体験を散々積ませてから、イザ社会に出て「さあ、自己主張しよう!」とか、無理ですよね。練習してないのに、できるわけないです。
なので、社会ではとにかく「黙って言うコトをきく」「察して行動する」訓練をする機会が多いので、家の中では「自分が今何をしたいのかの気持ちを大事にする」ことと「自分の意見を相手に伝える」ことを「トレーニング」するつもりでやっています。
そもそも「察する」ってなんでしょう。
(1)経験による予想。つまり経験則。長いこと一緒にいれば、経験則で「予想」がつくわけで「言わなくてもわかる」ことはあると思います。息子のことも、パートナーのことも「あ、だいたいいつものパターンだな」ってわかることは多いです。
(2)「共感」による予想。同性、同世代、みたいに「似たような立場」にいる人が、「気持ちはわかる」と察してくれる。これは友達がやってくれることが多い気がします。
(3)洞察力による推測。これは、いわゆるシャーロック・ホームズ的な推理力とかそういうもの。相手の情報がなくても、顔色や表情、外見からメンタルを推測するようなもの。
察すること自体は良いことだと思っていますが、この3つを全部「察する」って使ってるような気がします。
(3)について、パートナーと私だと、私のほうが能力的に高い気がします。それは男性より女性のほうが防衛本能が高いからじゃないかと思います。街中や日常で加害行為に遭う確率は、女性のほうが高いので「周囲を観察する」とか「人の様子をうかがう」ことが多く、機会が多いというのは訓練されるということなんじゃないかな……とパートナーといると思います。
(2)についても、女性間でのコミュニケーションのほうが機会が多いような気がします。なので「察する」能力が男性よりも女性のほうが高くなるのでは……? と感じています。少なくとも、我が家ではそうでした。
では、自分よりも(2)や(3)の能力が低い相手に「わかってもらいたい」場合は……(1)の経験を積むしかない。つまり、伝え合わないといけない。
老夫婦が「何も言わなくてもわかる」のって「経験則による予想」の蓄積ですよね。最初から「2人は愛し合っていて、心が通じてるから、何も言わなくてもわかる」わけではない。「察する」の行為に愛情があるのはもちろんですが、同じくらい「伝える」ことも愛情だと思います。ポジティブなことも、ネガティブなことも、親しい相手には言わなくてもわかるかもしれないけど、言ったほうがよりよいということは、たくさんあるのではないでしょうか。
おそらく子どもは「経験則による予想」を求めてきていて、私はつい「察して」しまいます。でも、それは子どもが「伝える」練習をする機会を奪っているともいえます。「言わなくてもわかってくれる=愛情」かもしれませんが、「伝える」練習はさせておかないといけない……と使命感を持ってやっています。
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